WRC(世界ラリー選手権)2021年シーズンの第7戦「ラリー・エストニア」が開催された。

昨年2020年から世界中を襲っている新型コロナウイルスの猛威。その影響はWRCにも当然及び、昨年3月にはシーズン休止に。さまざまなイベントが中止になったなか、9月に最初のWRC復活イベントとして新たに登場したのがこのラリー・エストニアだ。

ラリー・エストニアの特徴は、グラベル(未舗装路)でジャンプが多く、森林コースや、高速かつ全開区間の長いコース設定など、ラリー・フィンランドを思わせるもの。

そんなラリー・エストニアが今年2021年シーズンでは第7戦に組み込まれた。

エストニアを母国とするのは、一昨年、トヨタで王者を獲得したオット・タナック(ヒュンダイ)。昨年のラリー・エストニア勝者でもあり、今年も祖国のヒーロー凱旋を観戦しようと多くのファンが訪れ、国を挙げての歓待ぶりが世界中に伝わった。

そんなラリー・エストニア、上位の最終結果は以下の通り。

1位:カッレ・ロバンペラ(トヨタ)
2位:クレイグ・ブリーン(ヒュンダイ)/1位から59秒9遅れ
3位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/同1分12秒4遅れ
4位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)/同1分24秒0遅れ
5位:エルフィン・エバンス(トヨタ)/同2分7秒1遅れ
6位:ティーム・スンニネン(Mスポーツ)/同7分7秒3遅れ
7位:ピエール=ルイ・ルーベ(ヒュンダイ)/同8分48秒3遅れ
(8位以下はWRC3、WRC2クラスのドライバーが入賞)

優勝は、トヨタのカッレ・ロバンペラ。20歳と291日でのWRC初優勝であり、WRCにおける史上最年少優勝記録となった。この記録は、トヨタのチーム代表であるヤリ‐マティ・ラトバラが保持していた記録(22歳313日)の更新となる。

最後のパワーステージを中継していたWRC公式TV解説者は、「このままゴールすれば史上最年少優勝ドライバーの誕生です。そしてフィンランド人ドライバーの勝利は26戦ぶり。ヤリ‐マティ・ラトバラの2018年ラリー・オーストラリア以来の勝利。フィンランド人ドライバーにとって今回の勝利はWRC通算180勝目です」とコメント。トヨタにとってもWRC初の5連勝という、いろいろと記録ずくめのラリーとなった。

この勝利を大いに喜んだラトバラ代表は、チームがリリースしたコメントの中でもロバンペラの勝利の意味を語っている。

「優勝はどれも特別で喜ばしいものですが、今日カッレの初勝利を目にすることができたのは、私にとって大きな意味があります。彼が史上最年少でWRCウイナーとなり、私の記録を塗り替えたことを本当に嬉しく思います。

私がヘンリ・トイボネン氏の記録を更新し、それを今回カッレが更新したことで、フィンランド人の伝統が受け継がれました。今週末カッレは本当に素晴らしかったですし、トヨタにとって新記録となるWRC5連勝を達成できたことも信じられないくらい嬉しいです」

◆ラリー・エストニア、“WRC史上最年少優勝”までの振り返り

そんなラリー・エストニアを振り返ってみたい。

木曜日から日曜日まで全24ステージ。初日の木曜日でいきなりロバンペラがトップに立つ。この週末の活躍を予感させるものであった。

2日目の金曜日は、SS2からSS9までが行われた。この日、何人かのドライバーを不運が襲う。

最初の不運は、昨年の優勝者であり、この国のヒーローであるヒュンダイのタナック。SS3で右前輪がパンクしホイールだけになってゴール。続くSS4でもパンクが発生。この2度のパンクでタイヤのスペアがなく、コースを離れてデイリタイアを選択した。

そして、SS4終了時点でトップから20秒5遅れで総合3位という絶好の位置にいたトヨタの勝田貴元だったが、SS5のスタートリストに名前が出ない。その後、WRCの速報でコ・ドライバーのダニエル・バリットが背中の痛みを訴え、ここでリタイアを選択したと報じられた。

その後ダニエルは首に痛みを感じたこと、病院の検査で首や背中にケガはないと診断されたが、デイリタイアではなくリタイアを選択したことなどが遅れて伝わってきた。

Mスポーツのガス・グリーンスミスもエンジントラブルでデイリタイアを選択するなど、この日は各マニュファクチュアラーからリタイア組の出る結果となった。

3日目の土曜日はSS10からSS18までが行われた。この日、強さを見せたのはトヨタのロバンペラだった。

ステージトップはSS10だけだったが、ヒュンダイのタナックに続くステージ2位を4つのSSで獲得。金曜日終了時点で2位のクレイグ・ブリーン(ヒュンダイ)に対して8秒5だったリードは、SS18終了時には50秒7にまで拡大させてみせた。

最終日の日曜日は、SS19からSS24まで。この日の注目は、史上最年少WRC優勝がかかるトヨタのロバンペラに集まった。

朝からかなりのプレッシャーを感じていたはずだが、WRCのインタビューにも「いつもどおりに務めるよ」と答え、とにかくミスなく走り切ることが最大の目標となった。その目標どおり、ロバンペラは安全マージンを保ち、日曜日すべてのステージを3~5位で走りきり、見事WRC史上最年少優勝を獲得した。

◆豊田章男氏、“母国”での勝利に「本当に頼もしいチームです」

この史上最年少優勝を、チームオーナーの豊田章男氏も大いに喜んでいる。

「カッレ、ヨンネ、ラリー・エストニア優勝おめでとう!

やっと2人に気持ちよく走ってもらえたこと、本当にホッとしています。そう思っているのは僕だけではないはず。2人の苦しい走りを見ていたチームのみんながホッとしていたに違いありません。ただ、1人だけ複雑な気持ちになっていたメンバーが、もしかしたらいたかもしれません…。

ヤリ‐マティが持っていた22歳というWRC最年少勝利記録を、20歳のカッレが破りました。ヤリ‐マティはどんな気持ちでカッレを見守っていたのか? チームに聞いてみたら、同じフィンランド出身の若者が自分のチームで記録を塗り替えてくれたことを素直に喜んでいたそうです。そんなチーム代表がいることをチームオーナーとして嬉しく、誇らしく思いました。

今回、勝利したヤリスはエストニアにある我々のチームの工場で組みあげたクルマです。エストニアも我々のホームコースです。シーズン折り返しの戦いが我々の母国での勝利となり、そのことも本当に嬉しく思っています。前半戦、我々のチームの誰かが必ずポディウムに立っていました。本当に頼もしいチームです」

優勝したカッレ・ロバンペラは、表彰台で「ここは母国フィンランド同様にファンが多いのですごく嬉しいです」と語った。

そして表彰台にはロバンペラの両親も来ており、ふたりとも泣いて喜んでいた様子が印象的だった。ロバンペラはラリー後のチームリリースで以下のコメントを出している。

「優勝することができて本当にいい気分です。優勝を目標に戦ってきたので、チームには本当に感謝しています。今年は私にとって難しい年でしたが、彼らは手厚くサポートしてくれましたし、クルマのフィーリングもチームもとても良かったです。

また、最年少優勝という記録を残せたことも、とても嬉しいです。ヤリ‐マティは、自分が持つ記録を私に更新してほしいと言ってくれていたので、とても意味のある勝利です。今日は思いのほかフィーリングが良く、プレッシャーを感じることなく普通に走れましたし、ペースも良かったです。一度勝つことによって重圧から解放され、気持ちも楽になるので、今回の優勝は私にとって大きな助けになるはずです」

この勝利は、チャンピオンシップをリードするオジェとトヨタにとっても大きかった。

オジェは金曜日午前中に掃除役となる第一走者を担当したこともあって、この週末は決して楽なものではなかった。それは彼のラリー後のコメントからも感じられる。

「この週末は、チャンピオンシップを考えるとポジティブな一歩となりました。出走順トップでステージに臨むことは、大変だと分かっていました。金曜日は非常に好調でしたが、それをいい結果に繋げることはできませんでした。それでも、ポイントを獲得できたことが何よりも重要です。カッレとヨンネの初優勝はとても嬉しいですし、彼らとチームにおめでとうと言いたいです」

◆次回は“初の開催地”ベルギー

ラリー・エストニアを終えて、ドライバーズチャンピオンシップは以下の通りとなった。

1位:セバスチャン・オジェ/148ポイント
2位:エルフィン・エバンス/111ポイント
3位:ティエリー・ヌービル/96ポイント
4位:カッレ・ロバンペラ/82ポイント
5位:オット・タナック/74ポイント
6位:勝田貴元/66ポイント
7位:クレイグ・ブリーン/42ポイント
8位:ガス・グリーンスミス/34ポイント

そしてマニュファクチュアラーズ争いは、トヨタが315ポイント、ヒュンダイ256ポイント、Mスポーツ125ポイントとなった。

今シーズン、これでトヨタは5連勝。非常に力強いシーズンとなっている。この調子をシーズン後半も継続していきたい。

そして、今回はリタイアという選択をした勝田貴元だが、その走りは間違いなく表彰台を争うレベルにまで成長している。

次戦は得意とするターマック(舗装路)が舞台の「ラリー・ベルギー」(8月13日~15日開催)。このラリーは、昨年「ラリー・ジャパン」の代替地として選ばれたものの、新型コロナウイルス再拡大によりギリギリに中止となってしまった。

つまり、すべてのドライバーにとって初の開催地であり、同条件での戦いとなる。勝田にとっては大きなチャンスがあるかもしれない。

また、7月9日に「ラリー・ジャパン」から競技者に向けたラリー・ガイド1が発表され、木曜日のセレモニアルスタートが名古屋市内であることや、サービスパークが豊田スタジアムになること、全部で20のSSが用意されることなど、細かい概要が明らかになった。

いよいよ「ラリー・ジャパン」が近づいて来ている。その勢いを増すためにも、次戦もトヨタや勝田の活躍を期待したい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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