川野太郎、結婚や仕事の裏に渡哲也さんの存在。節目節目での言葉に「天の声みたいな感じです」

公開: 更新: テレ朝POST

1985年、連続テレビ小説『澪つくし』(NHK)で沢口靖子さんが演じたヒロインの相手役に抜てきされ、俳優デビューを飾った川野太郎さん。

「銚子のロミオとジュリエット」として話題を集め、最高視聴率は55%を超えるヒット作となり、一躍人気俳優に。『武蔵坊弁慶』(NHK)、映画『二十四の瞳』(朝間義隆監督)、映画『恋はいつもアマンドピンク』(横山博人監督)など次々と出演作が続いていく。超多忙な日々だったが、じつは秘密の恋愛をしていたという。

◆大学3年生のときに運命の出会い

1991年に結婚し、2021年で結婚30周年を迎えた川野さん。奥さまとの出会いは大学3年生のときだったという。

「野球部の友だちと2人で横浜に行ったとき、飲み屋のキャッチの男の方に捕まって、コワモテの感じだったんですよ。坊主刈りの野球部が2人でみっともないんですけどね(笑)。

そのときにちょうど(彼女と友だちが)通りすがったらしいんです。それで、一緒に行っていた友だちがバーッと彼女たちのところに行って、『友だちのフリをしてくれ』と言ったみたいで連れて来たんです。

それで、『友だちが来たから』ってキャッチの人に言ったら『しょうがないなあ』ってあきらめてくれて。それが出会いのきっかけだったということと、そのあと軽井沢でたまたま同じ期間に僕は野球部の合宿で、彼女は友だちと来ていたということもあって」

-すごい偶然ですね。運命を感じました?-

「そこまでは思わないですけど(笑)。そういうことがちょっと重なったので、『この人とは相当縁(えにし)が深いんだなあ』というふうにだんだん思っていくんですよね」

-出会ったときには大学生だったのに、その後俳優として注目を集めることになるわけですが、その辺はどうでした?-

「本当に短い期間で変わりましたからね。1年くらい付き合ったときに話があって、トントントンという感じで2、3年の間にそうなっちゃいましたから、『この人、大丈夫なのかな?』って思ったでしょうね(笑)」

-自分の恋人が日本中の人気者になってしまったわけですから、不安もあったのでは?-

「逆の立場だったら耐えられないですね(笑)。僕はいろんなことというか、2つのことをいっぺんにできない感じなんですよ。不器用というか頭が悪いというか(笑)。ひとつのことにどっぷりという感じでやらないと実にならないということが自分でなんとなくわかっていたんですよね。

野球でもレギュラーになれなかったし、その後悔がある。俳優の世界に入ってもレギュラーになれなかったら後悔するだろうなあと思って、俳優の道に進むことを決めたときに『別れよう』と彼女に切り出したんです。

そうしたら『今決めなくても1週間後にもう一度会いましょう』と言われて。1週間後に会ったとき『あなたは私のことが好きですか?嫌いですか?』って聞かれたので、『嫌いじゃない、好きだよ』って言ったんです。

『だったら私もそうだし、ムリして今別れることはないんじゃない?』って言われて、『それもそうだな。いい意見を言ってくれたね』みたいな(笑)。『でも俺、集中したいから会えないよ。中途半端になりたくないから演劇の勉強をちゃんとしたいし』と言ったら『いいよ』と言ってくれたので続いたんでしょうね」

-お付き合いはどんな感じだったのですか?-

「最初は大学留年で5年生だから、そのときは演技の稽古に通って何か月かに1回くらい海に行ったりということはありましたけど、演技スクールの稽古期間中も極力会うのは控えていたんですよね。集中したかったので」

-それで『澪つくし』が決まったら撮影で会えなくなって、奥さまよく我慢しましたね-

「そうですね。『澪つくし』の撮影がはじまってからはたまに電話で話すくらいでした。そういう意味ではすごいですよね。よくこの人間を信じてくれたなあと(笑)」

『澪つくし』の撮影が終わってもドラマや映画の撮影で多忙な日々が続いていたが、数か月に一度は会う機会があったという。

渡哲也さんの一言で結婚することに

1990年、川野さんは舘ひろしさんの主演ドラマ『代表取締役刑事』(テレビ朝日系)にレギュラー出演することに。隅田川を臨む勝どき・月島周辺を管轄する辰巳警察署が舞台。

舘さん演じる辰巳署刑事防犯課係長・警部補の兵頭真の最大の理解者である警部役で渡哲也さんも出演していた。

-川野さんは妻子を溺愛し、遠距離通勤を苦にしないマイホームパパの松本正義巡査部長役でしたね-

「やっぱりさすがに男の世界を描くのは石原プロモーションの皆さん、うまいですよね。舘さんはすごくいい兄貴という感じで、とても面倒見がいいんですよ。下の者の隅々まで気を配ってらっしゃって、すごいですよね。自分が主役を張っているわけですからそれだけでも大変なのに、スタッフからキャストみんなに気を遣ってくださって。

『やっぱりこういう人が主役を張るんだ。スターなんだな』って思いました。もちろん渡さんも然りですけど、すごかったですね。あの1年間も本当にいろいろと勉強させていただきました」

-ご結婚を決められたのは『代表取締役刑事』のときだったそうですね-

「そうなんです。彼女はまったくこの世界と関係のない人なので、記事が出ちゃったりすると傷つくじゃないですか。だから、付き合っていることは誰にも言ってなかったんですよね。それがたまたま待ち時間に渡さんの専用バスでご一緒させていただいて、2人っきりで過ごす機会があったんです。

それでいろいろとお話を伺っているうちに、『川野君、付き合っている女の人はいるのかい?』って聞かれて、それまで誰にも言っていなかったんですけど、『はい』って言っちゃったんですよ。自分で驚きました。『はいって言っているよ、俺』って思って(笑)。それぐらい何か素直にさせる不思議な力を渡さんはもってらっしゃるんだなあと思いました。

それで、『付き合いは長いの?』と聞かれたので『9年くらいですかね』と言ったら、『それは(結婚まで)行くなあ』って言われて(笑)。迷っているのもあったんです。不安定な世界じゃないですか。この先食えるか食えなくなるかわからないですから。

僕は知らなかったんですけど、渡さんも9年か10年、長くお付き合いされてご結婚されたということなので、もうわかっていたのかなあって。背中をちょっと押していただいた感じでした」

◆『スーパーモーニング』出演の裏にも渡哲也さん

結婚した同じ時期に『スーパーモーニング』(テレビ朝日系)の司会のオファーがあったという川野さん。生放送の情報番組の経験はほとんどなかったため、かなり悩んだという。

「結婚式に渡さんが来てくださったので、後日お礼のごあいさつにご自宅に伺わせていただいたんです。そうしたら、いろいろお話をしてくださったりイタリアンをごちそうしてくださって。そのときに『スーパーモーニング』の司会のお話が来ていることを聞いていただいたんです。

そうしたら、『川野君みたいな人はね、われわれの映画の時代と違ってテレビの時代だから、どんどん出て行かなきゃ』と言ってくださったんですよね。どうしようかなと考えていたときだったので、ポンと背中を押してくださった気がしました。それでやってみようと思ったんです」

-ご結婚のときもそうですが、節目節目に渡さんがいらしてくださったという感じですね-

「そうなんですよ。同じ事務所でもないのに、俳優の後輩としてアドバイスをしてくださって。しょっちゅう話しているわけじゃないんですよ。たまにお話ができたらこっちはラッキーという感じなのに、何か大きな決断をしなきゃいけないというときに、神のお告げじゃないですけど、天の声みたいな感じですよね。

そういう感じのアドバイスをいただくところは不思議だったし、恵まれているのかなと思いますね」

-実際にやってみていかがでした?-

「毎朝ですし、最初はやっぱりとっちらかりましたよね。政治から事件や芸能すべてだし、生だし…。ちょろっと言ったことが大変な問題になっちゃうじゃないですか。生番組に慣れてないし苦手な分野ばかりなので、最初はしゃべれなくて苦労しました」

-知っている人のスキャンダルとかもやりにくかったでしょうね-

「それが一番困りましたよね。『うーん』って言って、隣の伊藤聡子ちゃんを見ていましたよ(笑)。言いようがないですからね。おめでたい話のときには『おめでとう、よかったね』ってしゃべれますけど、スキャンダルだったりするともうダメ。毎日クタクタでした。

時間はそんなに長くはないんですけど、放送が終わってからも翌日の資料を集めたり、阪神淡路大震災のときには決まっていたものが全部飛んで震災の話になりましたからね。高速道路は折れて倒れているし、見たことがない映像が次から次へと届いて。現場との距離感を何とか埋めないといけないと思いながらやっていました」

-『スーパーモーニング』はどのくらいの期間やってらしたのですか-

「2年半です。その間、ドラマの撮影や舞台もやっていました。もともといろんなことを同時にはできないタイプで、ひとつのことをドンとやりたいのでムリをしたのかもしれないですね。でも、『やっておかなきゃ、できることは』という思いもありました」

俳優としてだけでなく、『スーパーモーニング』の司会や『料理バンザイ!』(テレビ朝日系)の「たまに行くならこんな店」のリポーターなど幅広い分野で活躍してきた川野さん。1995年には長男、1998年には長女も誕生し、順風満帆な日々が続くと思われたが、2009年、奥さまが子宮頸がんでステージ4と宣告されてしまう。

次回後編ではステージ4からの奇跡の生還、ドラマ『キッズ・ウォー』シリーズ(TBS系)の撮影裏話なども紹介。(津島令子)

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