玉木宏、出世のために手を汚す警察官“漣”の印象は「寂しい人間だなと感じる部分がある」

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玉木宏さんが主演を務める木曜ドラマ『桜の塔』(テレビ朝日系、毎週木曜21:00~)が4月15日にスタートします。

これまで数々の名作を生み出した武藤将吾さん脚本のオリジナルドラマ。警視総監を目指して巻き起こる警視庁内のパワーゲームと、組織の野望と正義が入り乱れる人間ドラマを描きます。玉木さんが演じるのは、警視庁捜査共助課の理事官・上條漣。ときには汚く、ときには冷酷に目的を遂行していきます。

今回、この出世バトルに足を踏み入れる玉木さんにインタビューを実施。“悪魔に魂を売った男”というインパクト抜群のキャラクター・漣のことを中心にお伺いしました。

――漣を演じる上で、どのように演じていきたいと思ったのか、実際に撮影に入ってどんなことを感じたのか教えてください。

武藤さんの脚本をいただいたときに、本としてすごく面白いと思ったので、その面白さを僕らがどう具現化していくのか模索しながらやっています。上司の刑事部長・千堂大善(椎名桔平)の台詞で(漣に向かって)「クールだねえ」という言葉がよく出てくるんですけど、やはりそういう人の台詞に(役づくりの)ヒントが隠れていると思っているので、クールでなければならないなと。

漣はプロファイリングができる人間なんです。人のクセを読み取っている以上、自分にクセがあってはいけない。ただ、(役づくりとして)無駄なものを削ぎ落とすと窮屈なので、あまりのっぺりとしたものにならないように工夫しています。でも、たまには感情的にならないと人間らしくはならないので、そのさじ加減にも注意しています。

――ドラマ制作が発表された中で「玉木宏史上、最もダーティーな男」という紹介がありました。“ダーティー”ということに関して、何か意識していることはございますか?

最初から見え見えになってしまうのが嫌なのでそれは避けています。視聴者の方を裏切らなければいけないので、ドラマを最後まで見たあとに“(漣が)そこまでやったのか”という発見に繋がればいいと思います。

――玉木さんは公式コメントで「誰といるかによって、漣の中にある温度差も表れてくるような気がします」とおっしゃっていました。対峙する登場人物によって、どのように演じ分けていらっしゃいますか?

(漣が)フラットにいるだけだと抑揚がなくてつまらない。その中で温度の変化を少しずつ見せなければいけないなと思っています。広末(涼子)さん演じる漣の幼馴染で警視庁捜査一課の水樹爽と一緒にいる時は、もちろん冷たいんだけど、昔から知っているから、2人だけの空気感が現れるように。千堂といるときは、ほかの派閥の上司とは違う直属の上司なので、忠誠心や、お互いに信頼関係があるように見えればと。そうやって“心がけるだけ”で、見え方が少し変わってくると信じています。

――役に共感できる・できない部分など、漣に対するイメージを教えてください。

漣という男を演じながら、“寂しい人間だな”と感じる部分があります。理解はできるけど、“僕自身とは違う”と切り離しているというか。読んだ印象をそのまま皆さんに届けたいと思うので、そうするためには、どうすればいいのか想像しながら演じています。

――個性的なキャスト陣ですが、現場ではどんなやりとりをされていますか?

パートごとに撮影をしているので、(インタビュー時点で)まだ吉田鋼太郎さん(警備部長・権藤秀夫役)とはお会いしていないですし、光石研さん(警務部長・吉永晴樹役)とも1日だけで。多いのは、広末さん、桔平さん、岡田健史くん(捜査一課刑事・富樫遊馬役)。桔平さんは、大人の立ち振る舞いをされる方だと思います。明るい方でプライベートな話をすることが多いですね。広末さんは、過去に同じ映画に出演した事がありますが、今回が初共演のようなもので。年齢も近くて、女性なんですけど心は少年のような方で、すごく元気ですね。

――上司にあたる警視監が3人(千堂、権藤、吉永)いますが、特にどのキャラクターに惹かれましたか?

みなさん三者三様と言いますか、全然違うなと思います。何かの取材の時にどなたかがおっしゃっていましたけど、今回警察ものではあるのですが、ヤクザものでも成立するような人たちなので(笑)。すごく表裏一体ですし、それくらい濃い印象があります。でも、同時にそれぞれ色気があって、“僕くらいではまだ出せない”と思うし、これまで培ってきたもので、今があるのだと思います。

――お三方はかわいいイメージもあります。

そうなんです。もちろん悪いことをしているし、ひどいのですが、愛嬌もあるのはあのお三方の魅力かなと思います。

玉木宏さんが思う“トップに必要なもの”とは?
玉木宏さんが思う“トップに必要なもの”とは?

――玉木さんご自身は上り詰めたい・出世したいという気持ちはありますか?

上京した18歳の頃は(出世欲が)強かったと思います。その当時は、有名になっていっぱいテレビに出ることで、みなさんに知ってもらうのがひとつの大きな目標でした。いまは、作品を通してみなさんに何かを届けたいし、作品がヒットするといいなという欲はあります。

――プロファイリングするのが武器の漣。玉木さんは人を見抜く目はある方だと思いますか?

今まで騙されたことがないので(笑)、ある程度人の目を見て話せば分かるのではないかと信じています。

――お話を聞いていると、冷静さも役との共通点と感じたのですが、周りからクールだと言われることはありますか?

無感情とは言われていました(笑)。サプライズをしてもサプライズにならないというか。驚けないんですよ。驚いた芝居はできるけど、(リアルは)「あぁ……」みたいな感じなので、僕自身が抑揚のない人間なのかもしれません。

――心の中ではすごく喜んでいるんですよね?

喜んでいるんですけど、「わー。嬉しいな!」と言うと恥ずかしくなります。

――玉木さんは、漣のように自分自身をコントロールするタイプですか?

“コントロールできないといけない”と思っていた時期はありました。ただ、それに無理が出てくるのであれば、そこまでする必要もないと思っています。

いまだに、自分らしさが何なのか分からないのですが、僕ら俳優は自身が商品なので、“自分はどう見えるか・どう見せるか”と考えています。そういった意味では、コントロールしている気がします。

――玉木さんが思う“トップに必要なもの”とは、どんなものだと思いますか?

今回の作品で身をもって演じてみると、自分に厳しくないとダメなのかなと思います。もちろん人の前に立つ人間なので、人に対しても厳しくなくてはいけないと思うのですが、上に立つ人は、人に厳しくする分、自分にも厳しくあってほしいなと思います。

(取材・文・撮影:浜瀬将樹)

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