小芝風花、不思議な力を持つ女の子『モコミ』を演じる上での願いは?「誰かの殻を破るきっかけになったら」

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小芝風花さんが主演を務める土曜ナイトドラマ『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』(テレビ朝日系、毎週土曜23:00~)が、1月23日よりスタートします。

小芝さんが演じる主人公・清水萌子美(モコミ)は、ぬいぐるみや植物など感情を持たないとされている“モノ”の気持ちがわかる女の子。不思議な能力を持っているがゆえに、他人とのコミュニケーションがうまくとれなかったものの、祖父の須田観 (橋爪功)の後押しもあって一歩踏み出すことを決意。そんな彼女の勇気をきっかけに、じつは “バラバラだった”父・伸寛(田辺誠一)、母・千華子(富田靖子)、兄・俊祐(工藤阿須加)ら家族も影響を受けていく……というヒューマンホームドラマです。

今回、小芝さんには、モコミを演じる上で大切にしていることや、共演者とのエピソードを語ってもらいました。

――まずは脚本を読んでの感想を教えてください。

日常の会話がすごくナチュラルで、各々のキャラクターがよく出ている作品だなって思いました。清水家の日常をみなさんが覗いているような感覚になるのは、(脚本を担当した)橋部(敦子)さんの素敵な部分だなと思います。モコミは、モノの気持ちやお花と会話ができるちょっと変わった役どころですが、それ以前に、実は見えていなかった家族の問題があって、それがどういうふうに今後出てきて、どう家族と繋がっていくのか楽しみです。

――モコミは不思議な力を持つ女の子ですが、非常にナチュラルに描かれていますよね。

そうですね。モコミ自身もモノの気持ちが分かるからこそ、人の気持ちも敏感に分かる優しい子なんだなって思います。モコミに見えているお花やぬいぐるみの感情には嫌なものがなくってすごく優しい世界なんですよ。ただ、小さい頃から能力のせいで周りから“変わっている!”“気持ち悪い”って思われてきたし、お母さんにも「ウソをつかないの!」って信じてもらえず、心配をかけたくないという思いから、人と向き合うのが怖くなって……。距離感が難しいなって思うんですけど、すごく優しい物語になっていると思います。

――彼女を演じる上で、小芝さんが大事にしていることはどんなことですか?

今まで演じてきた役と違って口数が多い方ではないので、表情を大切にするようにしています。“この時、この家族の会話を聞いて、どう思っているんだろう?”“この人との距離感はどんな感じだろう”とか、人以外に話せる対象があるので、その空間で、“今はどの子に視点があるんだろう、何を考えているんだろう”とすごく意識しています。少しでもモコミちゃんに寄り添えられるように、毎シーン探りながら演じていますね。

――現実世界でも、モコミのように言いたいことを言えないという方も多いと思います。小芝さんの中で、彼女に対して共感できる部分はありましたか?

モコミちゃんはモノと会話ができるからこそ、人とコミュニケーションをとる時に、“これを言ったら変に思われるかな?”って無意識に考えながら話しているような女の子なんです。私も人に“今これ言ったら嫌な雰囲気になっちゃうかな?”とか、笑って誤魔化しちゃうことも多かったんですけど、年齢的にも、“自分の意見をちゃんと言えるようにならなきゃ”って最近考えるようになってきていますね。

人っていうのは、“この子ってこういうところあるよね”って他人から言われて、自分自身でレッテルを作って、その小さい世界で生きているじゃないですか。そういう小さい世界から一歩踏み出すことだったり、その“レッテルの中で生きている”っていうことに気づくことだったりって、じつは結構難しいことだと思うんですよね。でも、モコミはおじいちゃんがきっかけで、その殻を破っていく……。そういう小さなきっかけになかなか日常で出会うことが難しいと思うので、この作品が誰かの殻を破るきっかけになったらいいなって思います。

――モコミはおじいちゃんがきっかけで殻を破るとおっしゃっていましたが、最近小芝さん自身にあった心境の変化を教えてください。

2020年はコロナの関係で家にいることが多くて、自分と向き合わなきゃいけない時間があったのがすごく大きかったです。今までは、知らないことも多くて、周りの大人の人に導いてもらうことがほとんどだったんですけど、私も作品や人と会う中で、いろんな知識が少しずつ増えてきていて……。自分の考えを言うのは、“おこがましいかな”とか“生意気なのかな?”っていう怖さがあったんですけど、相手はエスパーじゃないから言葉にしないと伝わらない。わがままに自分の気持ちを押し通すのではなく、この先より良くしていくために、周りの人に意見を伝えて“話し合う”っていうのは大切だなって考えましたね。

――そうすると、座長として共演者の方やスタッフさんとコミュニケーションをとることも多くありそうですね。

そうですね。今回の役に関しては、家族だけど、じつはバラバラで。モコミちゃん自身も、家族なんだけど言えないことが大きすぎますし、自分の当たり前と家族の当たり前は違っている。だから、いろいろアドバイスをいただきたいなって思っています。主演をやらせていただいているんですけど、(作品は)私だけで作るモノではないので、周りの方に教えていただきながら、助けていただきながら、作っていきたいなっていうのはありますね。

――そんな共演者と接する中で印象的だった出来事があれば教えてください。

橋爪さんが演じるおじいちゃんは、ウソをつかないし、自分と違う感覚を持っている人に対しても否定するんじゃなくて、受け入れてくれるっていう安心感を感じていて、役柄的にもハッとさせられる台詞が多いんですけど、橋爪さん自身も思われたことをスパッと言う方なので、すごく頼ってしまいますね(笑)。

例えば、昨日、お兄ちゃんと3人の芝居があったんですけど、梯子から落ちそうになるシーンで「大袈裟にすんなよ! こんなの視聴者の方はすぐに分かるからな!」って(笑)。ダメ出し的なことを直接おっしてくれることもあれば、いい時は「今のいいね!」って伝えてくださったり。今後もモコミがおじいちゃんを信頼しているように、私自身もすごく支えていただけるだろうなって思います。

モコミのように“気持ちが分かりたい”という対象は?
モコミのように“気持ちが分かりたい”という対象は?

――モコミには独特の力がありますが、小芝さん自身が感じる“これって私だけ?”という感覚はありますか?

この間「金縛りによくあう」って話になった時に“私もよくある!”って思いました。寝て起きてを繰り返していると、たまに耳がボーッとなって、夢と現実の狭間にいる時があって。そういう時って、家にいたら家族の話し声が聞こえるし、移動中に寝ていたら、マネージャーさんとかスタッフさんの声が聞こえてくるんです。でも、いざ起きたら、周りに誰もいないっていう……だから怖いんです(笑)。夢と現実どっち? みたいな。

――幼い頃、モコミのように人形とお話するのは好きな子供でしたか?

一人遊びが好きだったので、一人でぬいぐるみと遊んだり、学校の帰り道に“あの角からゾンビが出てきたらどうやって退治しよう”とか、妄想するのが好きでした。今も、こういうお芝居だったら、こう言う表情するのかなとか、寝る前に想像するのが好きです。(モコミのような)感覚があったら世界が広がるなとは思います。羨ましいですね。

――不思議な力を持つと、楽しいことも辛いこと両方ありそうですね。

周りとの距離感ですよね。(モコミには)相棒のトミーっていう蛇のぬいぐるみがいるんですけど、彼らはきっとウソもつかないし、すごく正直だとおもうんです。けど人って本音と建前が違っていたり、関係性だったり、いろいろあるじゃないですか。モノとの距離感じゃなくて、同僚とか家族とか人に対しての距離感の方が難しいなって思います。

――小芝さんが人との距離感を縮めるために気を付けていることってありますか?

こういうお仕事をしているので、人と出会うことが多いんですけど、作品が終わってもご縁が続くのかと言われると、そうではなかったりするんですよ。ただ撮影の3か月間っていうのはめちゃくちゃ濃くて、スタッフさんや共演者の方とギュッと距離が縮むので、すごく不思議な仕事だなって思います。

その期間だけでも、“みんなで素敵な作品を作ろう”っていう思いは一緒だから、少しでも共演者の方、監督さん、カメラマンさん、音声さん、照明部さんっていうプロのスタッフさんの意見を聞きたくて、よくお話はさせていただいています。

――サブタイトルに『~彼女ちょっと変だけど〜』とありますが、モコミ以外の登場人物にも、愛すべく“ちょっと変”と感じるところはありますか?

この家族って一見、平穏で素敵な家族に見えますけど、みんなそれぞれありますね。一番分かりやすいのはお母さん(千華子 役・富田靖子)かな? 物語を見ていると、お父さん(伸寛 役・田辺誠一)がどんどん元気を吸い取られているのが目に見えて分かりますし(笑)、お母さんが過干渉で支配的っていうのは会話の端々で感じると思います。もちろん、お母さんも“支配してやろう”と思ってやっているわけではなくて、家族を思いやっての行動だと思うんですよね。

――モコミとしては戸惑う部分ではありますが、小芝さんとしては“お母さん頑張って!”という気持ちなんですね。

そうですね。モコミもお母さんが心配してくれているのは分かっているんです。子供のことが好きで、大事にしてくれているからこそ、余計にお母さんに本音を言えない……っていうのはありますね。ただおじいちゃんはお母さんと真逆の人で、否定をしないというか、楽観的なのかな? 例えば、コミュニケーションを取るのが苦手なモコミが、接客を伴うお花屋さんで“働きたい”という気持ちになっても、お母さんは心配。おじいちゃんは「いいじゃん。どんどんやれ!」っていう人だから、その真逆の親子関係も面白いですよね。

――モコミのように“この気持ちが分かりたい!”というものはありますか?

動物と話したいです。祖父母の家にワンちゃんがいて、“今幸せなのかな?”とか“おやつ欲しいのかな?”とか、分かったらいいのになってすごく思いますね。撫でていて気持ち良さそうとか、ウルウルしているとか分かるんですけど、でもその表情って人間の表情と重ねて感じるものじゃないですか。本当はどう思っているかは分からないというか……。

小さい時からワンちゃんを飼ってきたんですけど、お別れをしなければいけない時に、“ちゃんと愛情が伝わっていたのかな”“もう少しこうしてあげた方がよかったな”って後悔することの方が多いので、(事前に)気持ちが分かっていたら、してあげられた事がもっとあったのかなって思います。

(取材・文:浜瀬将樹)

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