ダークヒロイン・武井咲がカネと欲望渦巻く夜の街でのし上がる!『黒革の手帖』

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松本清張の同名小説を原作とし、2017年に武井咲が主演を務めたドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)が、在京民放5社(日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)が運営する民放公式テレビポータル「TVer」にて期間限定で無料配信されている。

母親が残した借金を返済するため、昼間は銀行の派遣行員、夜は銀座のクラブ「燭台」でホステスとして働く主人公・原口元子(武井)。銀行では正行員と派遣行員との立場の差を痛感する日々だった。

そんななか、コネで入行してきた大口取引先の娘の正行員が客とのトラブルをSNSに写真付きでアップし、炎上騒ぎになる。銀行がとったのは、元子とその同僚・山田波子(仲里依紗)に罪をかぶせ、派遣契約を打ち切るという理不尽すぎる仕打ち。

元子は、銀行に開設されていた「借名口座」と呼ばれる脱税用の他人名義口座の存在に目をつけ、社内のシステムを操作して自らの口座へ大量の現金を振り込ませる。

事態はすぐに明るみに出るが、元子は借名口座の情報を書き込んだ「黒革の手帖」を見せ、情報を口外しない代わりに盗み出した現金を不問とする念書にサインをさせる。

手にした1億8000万円と、「燭台」でママ・岩村叡子(真矢ミキ)から教え込まれた経営のイロハを元に、元子は銀座にフランス語で“手帖”を意味するクラブ「CARNET(カルネ)」をオープン。銀座のママとして辣腕をふるいながら、手帖に書かれた脱税者たちを一人ひとり罠にはめ、巨額の現金をせしめていく──。

カネに泣かされた主人公・元子が一転してカネを味方に付け、夜の街でのしあがっていく様子は圧巻の一言。これまでの武井のイメージとは打って変わった、ドシンと堂に入ったダークヒロインぶりは見応え充分だ。

元子たちを取り巻く、クセの強すぎる面々にも注目。複数の借名口座に裏金を貯め続けるクリニック経営者、楢林謙治(奥田瑛二)や、裏口入学のあっせんで得た利益を借名口座に溜め込み、さらに元子を狙う意地汚い予備校経営者・橋田常雄(高嶋政伸)に加え、威圧感たっぷりな出で立ちで謎のオーラを放つ総会屋・長谷川庄治(伊東四朗)。腹に一物を抱えた「目が笑っていない」演技が印象的だ。

とくに高嶋演じる橋田の粘着さと不気味さは、回を進めるたびに「うーん最高!」と手を叩きたくなる。ひとクセもふたクセもある悪役演技で定評のある高嶋だが、今回もその演技が光っている。

さらに今回は、「えっ、こんな人が?」という人物がゲストとしてドラマ中に登場してくる点も見逃せない。

第1話、銀行の窓口で揉め事を起こす客を演じているのは、お笑いコンビ・トレンディエンジェル斎藤司。一貫してシリアスな雰囲気が漂うドラマにおいて、おなじみの「斎藤さんだぞ」のギャグを披露するのだが、どこで披露されるかは見てのお楽しみ。

客とのトラブルをSNSにアップし、元子と波子が汚名を着せられるきっかけを作ったコネ入行の行員を演じているのは、バンド「ゲスの極み乙女。」のドラマー「ほな・いこか」こと、さとうほなみ。本当に「こういうヤツ、いそう!」というようなリアルな演技が見どころだ。

そして、この物語に一段とスパイスを添えるのが、元子とともに辛酸をなめあった仲間である、仲演じる波子。波子は、派遣行員時代は久しぶりの回転寿司に幸せを見出すようなピュアな乙女だったが、元子の手引によって夜の世界へと進出して以降、同一人物とは思えない豹変ぶりを見せる。やがて元子と波子は思わぬ形で対峙することとなる。

クセの強すぎるキャスト陣が繰り広げる、究極の駆け引きサスペンスをどうぞ堪能あれ。

1月7日(木)20時からはドラマスペシャル『黒革の手帖~拐帯行~』が放送される。刑期を終えた元子が新たなスタートの地に選んだのは古都・金沢。3年ぶりの元子役、そして今作がドラマ復帰作となる武井の演技に注目したい。

(文・天谷窓大)

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