ムトウユージ監督、KiNGONS・Kj monmon

1992年にスタートし、お茶の間に大反響を巻き起こしてきた国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系、毎週土曜16:30~)。6歳の時に初回放送を見て「なんだこの子供は!」としんちゃんのハチャメチャっぷりに衝撃を受けて以来、『クレヨンしんちゃん』が大好きになったというロックバンドKiNGONS(キンゴンズ)のギタリストKj monmonが、ムトウユージ監督を直撃。作品に対する思いや、製作の裏側などについて伺いました。

――初めてアニメ『クレヨンしんちゃん』を見たとき、野原しんのすけという幼稚園児の破天荒ぶりに驚かされました(笑)。長年監督を務めていらっしゃいますが、今の時代だからこその新しい見せ方などはありますか?

今は、“2020年の時代にいるフツウの家庭の35歳の父と29歳の母と5歳の息子と0歳の赤ちゃん”の家族を描いている感じで、劇中にスマートフォンが登場するなど、時代に沿った見せ方をやっています。しんちゃんの友達の風間くんがみんなで集まる時にスマホを持ってくるのですが、5歳児ならではな情報の得方という形で物語に登場させています。

2011年7月に地上デジタルテレビ放送へ移行するタイミング(地デジ化)の時には、野原家は地デジ化が間に合わなかったというストーリーもありました。風間くんの声優をやっている真柴摩利さんが、地デジのCMのナレーションをされていたのですが、『クレヨンしんちゃん』でパロディ化した時、真柴さんは苦笑いしてましたね。

――『クレヨンしんちゃん』といえばパロディの文化も人気。僕も含めて、楽しみにしている方も多いですよね。

テレビスペシャルの時に、『名探偵コナン』のパロディで、しんのすけが「名探偵コシン」のコスプレをしたのですが、その時に、コナンくんの声優でもある高山みなみさんが声を担当している本田ケイ子(しんちゃんの母の友達のおケイ)も登場し、コナンくんの雰囲気で「見た目は5歳、頭も5歳!(お尻はくさーい!)名探偵コシン!」というナレーションを入れていただいて(笑)。その時、ひろしは『探偵物語』の松田優作さん、みさえは金田一耕助のコスプレをしていました。コシンの目のハイライトや、BGMもコナンっぽい曲をわざわざ作ってもらい、かなり凝っていましたね(笑)。

ほかにも、しんちゃんが「シンデレラ」でネズミ役のときに「しっぽを立てろー!」っていう『ガンバの冒険』のセリフを言わせたり、人知れずパロディは入れてますね(笑)。

――監督が仕掛けたパロディなどに視聴者が気付いたかTwitterなどでチェックすることはありますか?

Twitterはずっと見ているわけではありませんが、たまにチェックすることもありますよ。「あ! よく気が付いたな」とか思ったり。視聴者の皆さんが、元ネタがどこまで分かっているかなとか気になる時もありましたので(笑)。

――アニメ25周年の時はアニメ『クレヨンしんちゃん』に登場するデパート「サトーココノカドー」が実際に埼玉県の春日部市に登場しましたね!

実際見にいきましたが、あれは凄かった! イトーヨーカドー春日部店が、期間限定で「サトーココノカドー春日部店」に変身したのですが、看板まで付け直してくれていたんですよ。イトーヨーカドーさんの本気の心意気を感じました。

――時代とともにコンプライスが厳しくなっていると思いますが『クレヨンしんちゃん』という作品ならではの「攻め方」については、いかがですか?

最近のコンプライアンスでアニメでの表現はどこまで許されるのか、ということもありますよね。1月11日に放送された「おパンツストーリーだゾ」では、しんのすけの“ぞうさん”がマサオくんの手で隠れて上手に見えないようにするなど、逆手にとってギャグとして見せるギリギリなところを狙って描きました。『クレヨンしんちゃん』の美学として、どこまで出来るのか、どこからが自粛なのかは、一度絵コンテを描いてみて決めるというのが昔からのやり方です。どうやって表現しようかな、ということばっかり考えていますね(笑)。

――2019年10月から放送枠が土曜日の16時30分に変更になりましたが、放送時間が変わることで意識したことなどはありますか?

基本的には枠が変わるからどうしましょう、ということは考えていません。放送時間が変わったことによって別方向で攻められる部分は広がるかな、という気持ちになりました。ただ、『クレヨンしんちゃん』の登場人物が急にスーパーマンになるわけにはいかないですから、先ほど話した「おパンツストーリーだゾ」の回では、しんのすけが、お尻を使って鉄棒で大回転をやっていて(笑)。現実的にはこんなことはできないだろうけど、演出のイキオイでちょっとだけパワーアップさせたところはありましたね。あと、しんのすけが、オナラをしたらその勢いでアクション仮面のイラストがついているお気に入りのパンツが破れちゃうとか……見たことありそうな画ですが、今まではなかったんじゃないかな? バーンっておならが出た瞬間、風間くんとマサオくんがバタっと倒れちゃって(笑)。そんな遊び心も入れました。

――そういう小ネタからも、しんちゃん本来の面白さを伝えたいという監督の思いを感じます。

この回は、シナリオの段階でも面白かったし、コンテを書いてても面白くて。アクション仮面の登場やセリフはかっこいいけど、実はパンツの話をしている……というばかばかしさのギャップが『クレヨンしんちゃん』っぽいのかな? そこを突き詰めていくことは、昔から考え方はかわらないですね。

――『クレヨンしんちゃん』が愛される理由はどういうところだと思いますか?

下ネタだけやるんじゃなくて、そのあとに怒られている仕草がかわいらしかったりするので、許されるんだと思います。オナラでパンツが破れたしんのすけを、風間くんやマサオくんが家まで送ってくれて、一緒にパンツを買いに行く……そういう友情や、みさえがほほえましくおパンツを買ってくれるところがかわいいと思うんですよ。キャラクターが生き生きしているというところが、少々ダメなことをしても許してもらえているのかな。

――魅力的なキャラクターがたくさんいて、僕はひろしが好きなんですが、監督のお気に入りは?

僕、まつざか先生(ふたば幼稚園ばら組の担任の先生)が大好きなんですよ。いつも合コンでフラれてヤケ酒のんじゃうんだけど。あの子は可愛いですよ。

――(笑)。まつざか先生は、ちょっと性格がぶっ飛んでいませんか!?

そういうところが可愛いんですよー!「しょうがねえな~まつざか!」って思いながら見ています。あと、ホラーっぽい話の時には風間くんを中心的に描くことがありますね。

――日常のお話も面白いですが、シュールなストーリーも人気ですね。

ネネちゃんの殴られウサギ(キレると、ウサギのぬいぐるみを殴ってうさを晴らす)のお話は、衝撃でしたね。「殴られウサギの逆襲だゾ」(2003年6月7日放送)は、原恵一監督の時のお話で、当初「夢落ち」になっていたんですけど、僕としてはどうしても「夢落ち」にしたくなくて……思い切って描き換えて提出したところ、原監督がこの案を通してくれた、という思い出の回です。「ネネちゃんのウサギがしゃべったゾ」(2003年12月6日放送)では、さらにホラーなオチもやらせていただきました。

――これまで主題歌も色々な方が歌われていますが、監督が一番好きな曲は?

「ユルユルでDE-O!」は、自分で作詞もさせていただいたので愛着があります。監督をやることが決まったときに、当時のプロデューサーからオープニングの曲はどうしますか、と聞かれた時にペロッと「作詞もやるよ!」って言っちゃって(笑)。先に曲ありきの方がやりやすいだろう、ということで、候補曲の中から、あの楽曲に決めて歌詞をつけました。

――そんな経緯で!「ユルユルでDE-O!」はこれまでの楽曲と雰囲気も違っていますよね。歌詞が後から作られたんですね。

僕としてはどちらでもいいんだけど、普通は歌詞が先の方が楽なのかな? この時は、あまり時間もなかったから、先に曲を決めたのかな。自分が監督をした映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』(2007年)でも使っていて、この時はしんのすけと(クレヨンフレンズ from AKB48として)AKB48が歌うバージョンになっているんですよ。

――『クレヨンしんちゃん』の監督をやっていてよかったな、と思うのはどんな時ですか?

『ドクターX』『科捜研の女』『シン・ゴジラ』『仮面ライダー』といった色々な作品とコラボレーションをやらせていただけるというのは、ほかの仕事ではなかなか出来ないことなので嬉しいですね。ゆず北川悠仁岩沢厚治)とコラボをした時は、すでに録音された音源を使うのかな、と思っていたら、実際にこのスタジオで生演奏をしてくださり、作画にあわせて歌ってくれて。自分の人生で『クレヨンしんちゃん』の監督をやっていなかったら、こういうことは無いだろうなと思います。こんなに面白いことに立ち会わせてもらえるのは、とても幸せです。

――この先の目標やチャレンジしたいことは?

「ギャグでどこまで面白いことができるのか」というのはテーマとしてずっと考えなくてはいけないことですね。登場人物にしても、今の時代の人たちに寄り添ったものの作り方や考え方を踏まえ、そこは守っていこうと思っています。常に「今の『クレヨンしんちゃん』だったらどういう風に言葉を返しますか?」「おしりを出しますか?」という問答を繰り返しながら作るやり方なんですよね。今ならこういうものの考え方、という風に、時代に沿った作り方を続けていきたいと思います。

――来年はアニメ30周年イヤーということで、気合も一入ですね!

まだまだしんちゃんチーム一同、いろいろ企んでいきます(笑)。今からとても楽しみです!

<2月29日放送のあらすじ>
「お風呂はイヤイヤ!だゾ」
みさえが忙しいため、しんのすけとひまわりをお風呂に入れることになるひろし。だがお風呂嫌いのひまわりは、家の中をあちこち逃げ回り……。

「紅さそり隊、肉まんで勝負だゾ」
紅さそり隊と戦うため、はるばるカスカベにやって来た横浜中華隊。だがお腹が空いてしまったため、手持ちの中華まんを食べ始める。それを見たしんのすけは……。

「缶ケリウォーズだゾ」
今日は合コンの日。気合いを入れるまつざか先生だったが、子供達の缶蹴りにつき合わされることになる。そして合コンの時間が迫ってきて……!

秋元康プロデュースによる、『ラストアイドル』(テレビ朝日系、2017年8月に放送開始)で活動を開始した、ラストアイドル2期生アンダーの白石真菜(しらいし・まな)。 ライブでも出番の少ないアンダーメンバーとして活動してきた

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