牛尾刑事、原作登場30周年!プロデューサーが作品のウラ側を明かす

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片岡鶴太郎が、新宿西署のベテラン刑事“モーさん”こと牛尾正直を演じている、日曜プライム『森村誠一ミステリースペシャル 殺意を運ぶ鞄』(テレビ朝日系)が、4月22日(日)21時から放送。今年は、森村誠一の原作に牛尾刑事が登場して30周年(※初出は1987年1月刊行の『駅』)ということもあり、この放送を控え、第1作から「終着駅シリーズ」の歴史を知る佐藤凉一プロデューサーが、裏話や制作者としての思いを語った。

――今作の見どころを教えてください

この「終着駅シリーズ」は、事件に関わる人々の人生を掘り下げて描き、最後に牛尾が“救い”を渡す、というドラマ。本作もそれが非常に色濃く映し出された内容で、30周年の節目にふさわしい作品になっています。“鞄の取り違え”という、日常生活で起こりそうな出来事がきっかけとなって人生が大きく変貌していくストーリーで、鞄の中身が違えばまた違うドラマになったかもしれません。とにかく、市井に生きる登場人物たちをきちんと描いた面白いストーリーだと思います。 

――「終着駅シリーズ」が長く支持されてきた理由は?

やはり“人間を描く”という、一貫した視点が受け入れられているのだと思います。橋本綾さんをはじめ、脚本家の皆さんの人間を捉える目は鋭く、僕らには想像もつかないストーリーを毎回、構築してくださいます。あとは、牛尾刑事のキャラクターですね! 牛尾はとても実直な刑事で、ほかには何のとりえもない男なんですよね(笑)。超人的な能力があるわけでもなく、特にこだわりを持つような“変人”でもない。ただただ真面目に靴底をすり減らして真実を求める、オーソドックスな刑事なんです。視聴者の皆さんは、そんな普遍的な存在として牛尾を愛してくださっているのではないでしょうか。

――主演・片岡鶴太郎さんは牛尾刑事をどのようにとらえていらっしゃるのでしょうか?
脚本をお渡ししたときに「今回の“ホン”も面白いね! 深いね!」という会話はしますが、実は、撮影中に作品について語り合うことはあまりないんです。ご本人はあまりおっしゃいませんが、牛尾を演じることによってご自身の生き方などにも感じるところが多々あったのではないかと思いますね。

――牛尾刑事とともに捜査にあたる刑事たちも魅力的ですが、こだわりのキャラクターは?

シリーズの歴史が長いためメンバーも多少入れ替わっていますが、現在の坂本課長役・秋野太作さんはご本人が持っているやわらかさ、人のよさがにじみ出ていますね。大上刑事役の東根作寿英くんも、回を追うごとによって牛尾とのコンビネーションが練られてきたなと思っています。また、徳井優さんが演じる山路刑事については、制作側も面白がって作っていますね。“山さん”は定番のように牛尾に異論をはさむのですが、彼は彼で刑事としてやるべきことをやっているだけ。徳井さんはそんな山さんを、時に嫌味っぽく、時に面白く表現してくださっています。こういった脇の人物は濃いキャラを出すと世界が崩れてしまうので、邪魔しない、目立ちすぎないというのが、実は大事なこだわりなんです。捜査会議で誰にどんなふうに発言させようか、バランスには熟考を重ねていますね。

――第1作からメガホンを取ってきた池広一夫監督について

コンスタントに作品を撮っている現役の監督の中では、おそらく最高齢ではないかと思います。88歳にして、あれだけ本打ち(※シナリオの打ち合わせ)で意見を言い合えるのはスゴイですよ! 僕は30年ほど前からお仕事させていただいていますが、昔は、それはそれは怖かったですよ(笑)。今でも鋭さは変わらず、妥協は一切しない。毎回、ドラマの本質を突くような言葉をいただくので非常に勉強になります。片岡さんも同じ意思をお持ちですが、監督が撮る限り、このシリーズは続けていきたいと思っています。

――音楽も『太陽にほえろ』『傷だらけの天使』『名探偵コナン』などを手掛ける大野克夫さんが担当!

実は、音楽もずっと同じものを使っているんです。追加で曲を作っていただくこともありますが、第1弾からテーマは変えていません。このテーマもまた、作品の“華”ですね。終着駅シリーズは、スタッフ全員が“プロ”として認め合い、プライドを持って仕事をしているからこそ成立している作品です。

――今後の展望を!

先ほども言ったように、人間ドラマを描くのが原点の企画なので、プロデューサーとして関わっていて、この作品はすごく面白いんです。実は、僕は第1作、露口茂さんが牛尾刑事を演じていた時代からこのシリーズを担当していて、途中、異動で離れた4年間ほどを除いてはすべて携わってきました。池広監督も「終着駅シリーズはライフワーク」と常々おっしゃっていますので、その“熱い思い”には、これからもプロとしてきちんとお付き合いしていきたいなと思っています。

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