倉本聰『やすらぎの郷』に続き『帯ドラマ劇場(シアター)』を執筆

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テレビ朝日が、脚本家・倉本聰の「シニア・高齢層を対象にしたシルバータイムを設置し、帯ドラマを放送すべき」という提案で、2017年4月に昼の帯ドラマ枠『帯ドラマ劇場』を創設。同年9月まで『やすらぎの郷』が制作・放送されたが、この度、テレビ朝日開局60周年記念番組として、倉本執筆よる『やすらぎの刻(とき)~道』が、2019年4月より放送されることがわかった。

倉本オリジナル脚本による『やすらぎの郷』は、シニア世代だけでなく幅広い年齢層から絶大な支持を集め、「東京ドラマアウォード2017脚本賞」や「ギャラクシー賞9月度月間賞」を受賞。今日の放送業界に一石を投じると共に、テレビ朝日のブランディングにも貢献する成果をもたらした。

その流れは、『帯ドラマ劇場』第2弾の『トットちゃん!』、現在放送中の『越路吹雪物語』につながり、両番組とも視聴者から高い評価を得ている。こうしたことから、この『帯ドラマ劇場』は2018年度も継続が望ましいと考えたが、2019年度に倉本のオリジナル大作が実現する見通しとなったことから、2018年4月以降の『帯ドラマ劇場』は1年間休止。その準備に充てることになった。そして、倉本の次回作は、『やすらぎの刻(とき)~道』という作品で、2019年度1年間を通して放送される。秋からの撮影、収録に備えて倉本は昨年から執筆に取り掛かっているという。この作品はテレビ朝日開局60周年記念番組に位置づける予定だ。

ドラマは、『やすらぎの郷』からはじまる。『やすらぎの郷』の主人公、作家・菊村栄(石坂浩二)は、以前“ボツ”になったシナリオを思い起こします……。白川冴子(浅丘ルリ子)、水谷マヤ(加賀まりこ)らお馴染みのメンバーが見守る中、菊村はそのドラマをモチーフに、今は亡き“姫”こと九条摂子(八千草薫)をモデルに据え、どこにも発表する当てのないシナリオを書きはじめる……。

その作品は昭和、平成を生き抜いた無名の夫婦の生涯を描くもので、テーマは、“ふるさと”。『やすらぎの郷』からはじまったドラマは次第に菊村の新たなシナリオ世界に変わり、夫婦の生涯をその時代と共に描くものとなっていく。昭和初期からはじまり、戦中、戦後、平成を描くこの作品の前半の主演は、清野菜名。戦後の高度成長期を経て現代にいたるまでの後半、いわば主人公の晩年を八千草薫が演じる。

この作品について、倉本は「東京ファーストと人は言います。この言葉に私は疑問を持ちます。東京は地方人の集合体です。たとえ、都会のコンクリートの上で生まれ育った人間が圧倒的に今増えているといっても、人々はどこかで、そのルーツである“ふるさと”の土の匂いに頼っており、そこに郷愁を感じています。中高年層においては、特にそうです。都会といういわばガラス細工の、砂上の楼閣に暮らしていても人はふるさとの原風景を心の中に秘かに刻んでいます。子供のころ親しんだ、田舎の、未舗装の一本の小道。今は便利になり、アスファルトで覆われ、高速道路が縦横に走る豪華な世の中になったとはいえ、人々が最後に心に描くのは己の貧しい原風景の中にある“ふるさと”の細い小道ではないか。このドラマはそうした小道の変遷を通して、昭和・戦中・戦後・平成、日本の豊饒への歴史を辿りながら、それに翻弄される一組の夫婦の“倖せ”への郷愁を探り、描くものである」とコメントを寄せている。

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