野際陽子の偉大な功績「着物姿のお母さん」ドラマに欠かせない女優に

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6月21日に放送されたドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系列、毎週月~金12:30~12:50)にて、故・野際陽子さんの最後の出演シーンが流れ、ネット上では「涙がぽろぽろとこぼれる」「その役者魂、生き様に身の引き締まる思い」など、様々な声が上がった。

野際陽子さんといえば、元NHKのアナウンサー。同局を退職後に女優業をスタートさせたという異色の経歴の持ち主である。1968年に放送された『キイハンター』(TBS系列)で人気を獲得後、様々なドラマ、映画に多数出演。

90年代に突入すると、いわゆる当たり役に出会う。1992年に出演した『ずっとあなたが好きだった』(TBS系列)では、佐野史郎扮する桂田冬彦の母親役として出演。ドラマのセンセーショナルな展開や佐野の怪演もあって、最終回の視聴率は34.1%を獲得した。

この役どころで“着物を着ているお母さん(姑)”というイメージがお茶の間に定着。1993年放送の『ダブル・キッチン』(TBS系列)、1994年放送の『スウィート・ホーム』(TBS系列)、料亭の女将役として1996年に出演した『味いちもんめ』第2シリーズ(テレビ朝日系列)、2000年に放送を開始した『TRICK』シリーズ(テレビ朝日系列)などで抜群の存在感を発揮した。たとえ狂気じみたトリッキーな役柄でも、内面からにじみ出る品の良さと相まって、深みのあるキャラクターが確立されていた。

2017年、倉本聰が脚本を手掛け、シニア向けエンターテインメインとして話題になった『やすらぎの郷』で、元女優という経歴を持つ井深凉子役を熱演した野際さん。テレビ業界人専用の老人ホームが舞台の同作には、浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、五月みどり、八千草薫らも元女優の役で出演しており、虚構と現実が入り混じった世界観が展開。残念ながら野際さんの遺作となってしまったが、半生を「演じる」ことに捧げた野際さんらしい最後の役どころだったとも言える。

『やすらぎの郷』は帯ドラマとして9月まで放送予定。物語は続いてゆく。そして、これまで様々な作品で野際さんが演じ作り上げてきた人物たちも、映像の中でずっと生き続けていくだろう。

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