松岡茉優、倉本聰作品で固定観念を払拭

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松岡茉優が、本日4月3日からスタートするドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系列、4月3日スタート 毎週月~金 12:30~12:50)に出演。主演の石坂浩二をはじめ、浅丘ルリ子、有馬稲子加賀まりこ、草刈民代、五月みどり常盤貴子名高達男野際陽子藤竜也風吹ジュンミッキー・カーチス、八千草薫、山本圭といった大先輩たちに混り、“ハッピーちゃん”というあだ名の明るいバーテンダー・財前ゆかり役で登場する。

この作品は、テレビ朝日と脚本家・倉本聰がタッグを組み、新しい挑戦として新設する帯ドラマ枠の第1弾。テレビの全盛期を支えた俳優、作家、ミュージシャン、アーティストなど“テレビ人”だけが入居できる老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada(ラ・ストラーダ。イタリア語で“道”の意)」を舞台に、石坂が演じる、かつて一世を風靡したシナリオライター・菊村栄を中心に、このホームに入居した往年の大スターたちが直面するさまざまな問題がユーモラスに描かれていく。

松岡が演じるのは、その施設内にあるバー“カサブランカ”で働くバーテンダーのゆかり。劇中では、いつも笑顔で周囲を和ませ、入居者から“ハッピーちゃん”というあだ名で呼ばれている役だ。

この放送を前に、松岡さんを直撃。今回のバーテンダー・財前ゆかり・こと“ハッピーちゃん”役についてはもちろん、台本を読んでみて思ったことや、大先輩だらけの撮影現場での様子などについて、たっぷりと語っていただいた。

――シニア世代のお話となりますが、台本を読んでみての感想は?

倉本先生は、本をお書きになるのが早くて、クランクインする時には全部の台本ができている状態でした。2クールありますが、長尺のドラマで先が見えない中でやっていくのではなく、終わりが見えている状態で始まりまして、すごく緊張はしていましたが、安心感のある中で作品と向き合うことができました。この作品について、先生は“シルバー革命”とおっしゃっていましたが、本当にシニア世代が元気になるドラマになっていると思います。その中で、自分の世代の話をさせていただくと、今回の作品は、今のテレビの風習であったり、登場するキャラクターが「昔はこうだったんだ」という昔話として話してくださるシーンがあります。設定は現代なので、私と同世代の方が見ても「確かに今のテレビってそうかも」「昔はそうだったんだ」とか、新しい発見があるのかなと。一方、シニア世代の方々が見ると“あるある”だったり、そんなこともあったなと懐かしむこともできると思いますので、全世代の方に見ていただけるドラマになっているのではないでしょうか。

――松岡さんが感じる倉本作品の凄さとは?

登場人物について、倉本先生は、演じる皆さんを当て書きされていて、大先輩方がこれまで歩まれてきた、とても私たちには想像できないような歴史がそのまま役に入っているという、とても厚みのある役になっていると思います。私は自分と同年代の役を演じていますが、自分の祖父母や自分より上の方の話を聞いて「へぇ~(そうなんだ)」って答えることってあるじゃないですか、まさにそんな感じですね(笑)。

また、ハッピーちゃんはとても素直な子なので、「へぇ~」と答える時もあれば、最悪無視するときもあり(笑)、そんな自由なところが、現代の若者っぽい部分かもしれません。ハッピーちゃんのリアクションがそんな感じで書かれているので、台本を読んでいると「倉本先生、なんでこの感覚がわかるんだろう?」って思います。また、私がよくするであろうようなリアクションが台本に書いてあると、「なぜっ?」て思ったりすることも。私が言うのもおこがましいのですが、本当に偉大な先生だということを1ページ1ページ感じています。

――松岡さんも当て書きをもとに演じられているのでしょうか?

私は当て書きではなくて、ハッピーちゃんのモデルは先生の中でいるようです(笑)。何度か先生とお話をさせていただきましたが、「(ハッピーちゃんは)こんな感じなんだよー」「こんな感じでやってー」て。先生のお友達やどなたかのマネージャーさんをイメージされているようで、「見た目がハッピーとか、言っていることがハッピーなんじゃなくて、“なんかこの人ハッピー”なんだよね」と仰っていたのが印象的でした。私はそれだけですとちょっと不安もありましたので、ヘアスタイルを二つ結びにして、たくさんカラフルなヘアピンを付けて見た目からハッピーにして、いつもニコニコしています。いますよね? 周りにこの人いつもハッピーだなって感じる人。ですので、カサブランカは、施設の中でもハッピーちゃんがいることによって、ちょっと気が揺るむ場というか……。お酒も飲める場所ってこともあると思いますが、ハッピーちゃんがいることでより一層話しやすい空間になればと思っています。実はカサブランカのシーンは、まとめて撮影することもありまして、時々プロデューサーさんから「カサブランカ、埃がかぶっているよ」って言われると、「私が行ってないからですよねw」って(笑)。カサブランカの主ではないですが、ハッピーがいてカサブランカがある、そんな居場所になると嬉しいです。

――撮影の合間、大先輩方とはどんな会話を?

皆さまお話してくださって(笑)。例えば、浅丘さんはすごくキラキラしたものがお好きで、ご自身でもアクセサリーを作ったりもするそうですが、真っピンクのブレスレットを「これがハッピーちゃんに」とくださったりとても嬉しかったです。でも、恐れ多くて大切に宝箱に入れてあります(笑)。

また、石坂さんが演じる栄ちゃん(菊村栄)が悩んだ時に物思いにふけたり見つめ直したりする場所がカサブランカなので、石坂さんとご一緒させていただく機会も多く、その時に昔のテレビの話をしてくださったり……。石坂さんが裏方のお仕事をされていた時代の話とかも。中でも印象的だったのが、昔のテレビ収録の話。副調整室(各種スタジオに設けられる機器類を操作するための操作室)から有線でヘッドホンをして指示出しをしていたらしく、フロアーにいるディレクターさんも有線でその指示を聞いていていたので、あまりその場から動けなかった、と。コードが絡まるし(笑)。今、考えてみればそうなんでしょうが、絵面を想像したら衝撃的過ぎて……。みんながコードで繋がっていたんだと想像して笑っていると、石坂さんは「なんでそんなに笑うの?」ときょとんとされていました。あとはバーテンダーの役なのでお酒の話とか詳しく教えてくださったり、カサブランカに絵が飾られているんですが、それを複製品なのか本物なのか“鑑定”してくださいました(笑)。

――松岡さんご自身、現場ではどんな役割りだと思われますか?

そうですね、リアクション係? それはハッピーちゃんと同じかもしれません(笑)。みなさんにとっては思い出話だったりしますが、私からすると新鮮な話だったりしますので、別にリアクション係だからって大袈裟にはしませんが、俯瞰でみたときに、もしかしたらそうなのかなと(笑)。

でも皆さまの昔話にはどうしても聞き耳を立ててしまうんです(笑)。絶対私に向かって話してはいないけれどつい聞いてしまう。中には聞いていいのかわからないような話もたくさんありますが、聞いていないふりをして聞いています(笑)。

――聞くことに対して抵抗は?

誰でも、ゴシップ情報は気になりますよね(笑)。でもゴシップだけじゃなくても、昔の業界の話とか、ドラマはこういうふうに作っていたよねとか。祖父母の話を聞いたことはあっても、祖父母の友達同士の話を聞いたことがあるわけじゃないので、こういうお話をなさっているんだな~というのはすごく思いますね。

――大先輩たちだらけの現場、最初は緊張を?

はい。最初は緊張していっぱいいっぱいになるのではないかと思ってました。でも、皆さん、本当に優しくて、私がバーテンダーで立ちっぱなしだったりすると、「今映ってないからスリッパはきなよ」とか、「寒くない?」などずっと気にかけてくださって、本当にありがたいです。

――今回バーテンダーの役ですが、そのためにどんな勉強を?

倉本先生のお知り合いのバーテンダーさんのお店で勉強させていただきました。そこで冊子をいただいて、あとマドラーをいただいて練習しましたね。そのため、お酒の種類は詳しくなりました。友人と食事に行った時も、友人がわからないお酒があれば、鼻高々に教えてあげたりしちゃっています!

――意識しているところは?

もしこれが、同世代が集まるようなお店でのバーテンダーだったら違うのかもしれませんが、もともとのスタンスとして私自身が給士係の気持ちなので、「おタバコ吸われますか?」「お水の減りはどうかな?」とか、絶えず気になってしまうような感じです。多分楽屋にいても同じだと思うので、特に監督から指示がなくても、灰皿を変えたりとか自然に演じられていると思います。

―― “シェイク”難しそうですが…

“筋はいい”って言われました! でもハッピーちゃんとしてのファーストカットが、シェイクのシーンでしたので、一生懸命本腰入れて振っていたら監督から「全然ハッピーじゃないよ!」と言われてしまったので、それから超笑顔で振りました(笑)。

――この作品に携わったことで“学び”になったことは?

私の感覚では脚本家さんは、ある程度のところまで書いて、あとは演じる役者次第だと思っていましたが、倉本先生は役一人ひとりのことをすごく詰めてくださっていて、ものすごく細かく設定されている点に驚きました。例えば、この人はこの時に生まれて、こういう人生を歩んできてというストーリー設定があって……。ハッピーちゃんも、実は兄弟がいて、どこのバーで修行したのか、なぜ今カサブランカにいるのかなど全部考えてくださっていました。私は台本が半分もできていない段階で先生にお会いしたんですが、そこでハッピーちゃんについての大事な情報はすべていただいたので、後は膨らんだ風船を紐で結ぶだけの状態。普通なら、膨らませるまでが私(演者)の仕事だと思っていたんですが、その点にすごくびっくりしました。脚本家さんからこんなに深くまで説明を受けたのは初めてだったので。でもその時、メモを取れる状況ではなかったので、お店を出た瞬間に書き落としましたね(笑)。

――大先輩でさえ“セリフの量”など苦労されているようですが、この現場で松岡さん自身、新しく“学び”になったことは?

皆さんが、色々な道を自分で選択されて、それぞれの頂にいる方たちで、お芝居の仕方、アプローチの仕方、現場での立ち振る舞い、それぞれがそれぞれの場所で培ったものを常に体現されている……。だからお芝居の仕方もバラバラですし、「そのやり方もあるんだ」とか、常に学びになっています。

裏でモニターを見ているだけでも勉強になりますね。正解は1つじゃないんだということを、皆さんに体現していただいているような……。こうあるべきなんじゃないか、俳優はこうしていなきゃとか、役に対するアプローチであったり、固定観念があったのでそれが逆に楽になりました。

例えば、ミッキーさんは歌手出身でアイドル、そして俳優もやっていらっしゃったし、山本さんなんかは子役出身で、もう芸歴何年ですか? みたいな……。私が正解というのはおこがましいんですが、みなさんのそれぞれのお芝居のスタイル、生き方のスタイルというのを、バーカウンター越しに見させていただけるというのは、この上ない幸せですね。

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