3月4日(土)より、国民的アニメ『ドラえもん』の37作目となる長編劇場版『映画ドラえもんのび太の南極カチコチ大冒険』が全国公開。同映画の主題歌「僕の心をつくってよ」(3月1日発売)を歌う、シンガーソングライター・平井堅さんにインタビュー。

今回の劇場版では、南極を舞台にしたドラえもんやのび太たちの冒険が描かれる。真夏の暑さに耐えきれず、南太平洋に浮かぶ巨大な氷山にやってきたのび太たちは、ドラえもんの秘密道具「氷細工ごて」を使って遊園地を作っていたところ、氷の中から不思議なリングを見つける。詳しく調べると、そのリングが埋まっていた氷は、人が住んでいるはずもない10万年前の南極の氷だった。一行は、謎を解くため南極に向かうが、そこで氷に閉ざされた巨大な遺跡を発見する……。

この楽曲は、平井さんにとって初のアニメ主題歌で、通算41枚目のシングルとなる書きおろしソング。サウンドプロデュースには亀田誠治を迎え、ドラえもんの世界観にそっと寄り添う至極のバラードだ。4月には、東京・大阪にてSpecial Live『THE STILL LIFE』を控えている平井さんに、“ドラえもん”にまつわる思い出や作品の魅力、楽曲が出来るまでのお話など、たっぷり語っていただきました。

――映画の完成作品をご覧になられていかがでしたか?

小学生の頃に観た『のび太の恐竜』、『のび太の宇宙開拓史』以来となる劇場版でしたが、スペクタクルあり、仲間との信頼関係、胸を打つシーン……“ああ、この感じ”だなと、懐かしい気持ちになりました。主題歌「僕の心をつくってよ」は、自分自身は暗めの曲だと思っていたので「子どもさんたちが見ても大丈夫かな?」という不安がありましたが、エンドロールでピアノのイントロが流れた瞬間“ホロっとくる感じ”が作品とマッチしていたのでホッとしました。

――主題歌に抜擢された時、最初は「僕でいいの?」と驚かれたそうですね

はい。『ドラえもん』という存在が大きすぎて。『ドラえもん』が“燦燦と降り注ぐ太陽のイメージ”だとすると、僕の楽曲は、湿度の高い曲が多くて“日陰のイメージ”なので、そこには届かない感じがして……。ですから、最初は「朗らかな曲がいいのかな?」という気持ちもありましたが、一周まわって、良くも悪くも全然媚びずに、あえて作品に寄せずに作らせていただきました。こうして出来た主題歌は、相反する感情が共存している楽曲で、この曲自身を強めるためにも、そのあたりの“妥協をしなかったところ”と“妥協をしなくてよかったのかな?”という矛盾した感情が両方あるという感じです(笑)。

――楽曲制作はどのようなプランで?

映画に合えばいいな、というのは大前提ですが、曲を作る時にとにかく大切にしたのは、2人の関係性です。互いが互いの気持ちを作っていくということを書いていく時に、「この言葉の方が気にいられるかな、無難かな」というのは無しに、言葉として100%清らかではない言葉をいれたくて、“きれい事”は無しのラブバラードにしたいと思って作りました。

――楽曲を作る際、メロディーが先、歌詞が先というような決まりごとはありますか?

この曲は、歌詞も曲もほぼ同時に作った感じです。昔は、メロディー先行で歌詞はラララ~で作ることが多かったけど、最近はメロディーを作る時に言葉が自然と乗って来る感じが多いです。そうじゃないといけない、ということはありませんが、最近の傾向としては言葉が乗っている方が作りやすいですね。

――歌声とピアノというシンプルさで、一層歌の世界に引き込まれます

アレンジについては、昨年6月にリリースしたシングル「魔法って言っていいかな?」というバラードも、ギターとコーラスだけで音数がすごく少なかったのですが、今はそういうモードなのかな? サビの前で、音数を詰め込んで盛り上げるバラードではなく、音数がまったく増えずに編成としては変わらないけれど、歌そのものがエモーショナルになっていくアレンジメントを心がけて、思いっきりミニマムでやりました。

――映画の主題歌を担当するというのは、普通に曲を作るのとは違う感覚ですか?

映画という文化、コンテンツは好きなのですが、それがテレビドラマ、CM、だとしてもあまり差はないです。ただ、思いとして、映画は特別なものがありますね。僕は、映画館に行き、エンドロールまで必ず観るので、いい意味でアナログ的というか、体を使って記憶に刻まれている気がします。

――では、今回も劇場へ……

100%観に行きますね。エンドロールが流れているとき、何人席を立つか……数えます(笑)。でも、意外と皆さん立たたなくて。僕の歌った主題歌じゃないにしても、席を立つ人は少ないという印象ですね。

――「僕の心をつくってよ」と聞いて、不思議なタイトルだなと思ったのですが

ドラえもんとのび太という2人を思い浮かべた時に、なんとなくこの言葉がでてきて。のび太が言いそうな言葉じゃないですか? ちょっと投げやりにも聞こえるかもしれませんが、心というものは、不安定でうつろいやすく、見えないものだからこそ、というか。本来は自発的に湧き上がるものなのに、好きな人の存在によって、その人の心に染まってしまう……という経験をした時に、かけがえない相手が、自分を作るものだな、と気がつき。ともすれば一人称が強い独りよがりにも聞こえるけど、人が生きていく上で、意外と自分以外の人のことを大事に想っているなと思い、このタイトルにしました。

――僕と君という言葉も出てきますが、これについては?

そうですね。作っている段階でも、ここが指している「僕」は、のび太ですか? ドラえもんですか? という風によく聞かれたのですが、その辺はパラレルと言うか単一にしたくなかったんです。例えば、弱い描写のところはのび太の目線と思う人もいるかもしれないけど、映画を見てみると、のび太の方が強いのかも? と思う時もあったりして……。また、自分の好きな人を思い浮かべてこの曲を聞く人もいるかもしれないので、あまり“ドラえもんとのび太”というイメージから離れることを許さない曲にはしたくなかったので、曖昧にしたところもあります。“大好きな人と自分”ということですね。

――『ドラえもん』作品で好きなキャラクターは?

ベタですが、ドラえもんとのび太です。圧倒的に感情移入してしまいます。そして、しずかちゃんは気になります(笑)。しずかちゃんは、本当に「この子は何を考えているんだろう?」という、キャラクターが見えないところが気になります。

――秘密道具のワクワク感も魅力のひとつですが、ひとつプレゼントされるなら?

「どこでもドア」が欲しいです。海外旅行へ行くのが好きなんですが飛行機に乗っている時間が……。でも「どこでもドア」が家にあると、誰にも知られずにパっとブラジルへ行って帰ってくるなんてことが簡単に出来ますから(笑)。……そんな想像をしてしまいますね。

――特に今回の映画でグッときたところは?

幼い頃に観た時も感じたことですが、時空を超えて古代へ行き、また現代に戻るという壮大なスペクタクルがあり、かけがえのない経験をする彼ら。心は凄く経験しているんですが、晩御飯までには家に帰り日常に戻る……、という“夏休み感”が一番好きです。あのノスタルジー、“夏休み感”は、いくつになっても抜けない(笑)。10代の頃に経験したことって強烈だし、時の感じ方も長いですからね。今回も、最後にドラえもんとのび太が、「よかったね」と言っているシーンが好きですね。

――映画を楽しみにしている方へメッセージを

『ドラえもん』という作品は、伝えるメッセージ、くみ取るメッセージが、どの作品にも貫かれているものだと思います。今回、主題歌で携わることが出来てすごく嬉しかったのでエンドロールも席を立たずに、最後まで一緒に冒険してみてください。

9月15日に75歳で惜しまれながら亡くなった樹木希林さん。彼女の最後の主演作となった映画『あん』が、10月20日にBS朝日で放送されることがわかった。同作品は、ドリアン助川の同名小説『あん』を、世界を舞台に創作活動を続ける監督・河瀬直美が映画化したもの。

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