渡部秀『科捜研の女』橋口呂太が担う“ミスリード”の妙を語る「非常に重要な役」

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1999年の放送から長らく愛されている沢口靖子さん主演のテレビ朝日系ドラマ『科捜研の女』が、劇場版として9月3日より公開されます。

最先端の技術を取り入れ、事件を解決する京都府警科学捜査研究所(通称・科捜研)。法医研究員・榊マリコ(沢口)を中心に、ひと癖もふた癖もある研究員たちが、法医、物理、化学、文書鑑定などの専門技術を武器に、事件の真相解明に挑みます。

本作でマリコたちが挑むのは、シリーズ最大の敵・天才科学者の加賀野亘(佐々木蔵之介)。事件性の高い転落事故を捜査することになった京都府警捜査一課刑事・土門薫(内藤剛志)は、ある疑いを持って彼のもとを訪れますが、加賀野には絶対的なアリバイがあって……という内容。マリコたちも挑戦的な態度をとる彼に振り回されていきます。

転落状況の不自然さを指摘し、捜査を進展させるのが、渡部秀さん演じる橋口呂太です。2017年から同ドラマに登場すると、すぐさま存在感を発揮した呂太。天真爛漫で人あたりもよく、今では科捜研に欠かせないメンバーとなっています。

“彼に注目すれば、劇場版をさらに楽しめるに違いない!”ということで、渡部さんにお話を伺いました。出演者でありながらも『科捜研の女』のファンだという彼の、熱のこもった語りは必見です。

劇場版ならではの魅力がたっぷり
劇場版ならではの魅力がたっぷり

――待望の映画化です。科捜研チームが難解な事件に挑むことになりますが、脚本を読んでどんなことを思われましたか?

歴代のキャストが集結し、科捜研史上最大の謎に挑むところは、今回の見どころのひとつですよね。最初は“この2時間の中で描きれるのかな?”と思ったんですけど、いざ脚本を読んでみると、事件はもちろん、キャラクターの個性もしっかり表現されている内容だったので、撮影前はワクワクしていました。

アニメなどもそうですが、歴代のメンバーが揃うって嬉しいじゃないですか。みんなに歴史があって、それが和洋折衷のようになる……。いいところづくしで食べ放題の感じというか(笑)。最初の放送から見てくださっている方々は、胸いっぱいお腹いっぱいになるんじゃないでしょうか。

――映画を拝見しましたが、ドラマの良さもしっかり残されていましたよね。

そうですね。普段、テレビでは見ることのできないフルスクリーンで、しかも映像の質もグレードアップした状態で、2時間まるまる楽しめるのは、『科捜研』のいちファンとしても非常に嬉しかったです。完成作を見て、“これだったらお客様も満足してくださるな”と思いました。

――そんな完成作を見て、気づいた点があれば教えてください。

ドラマ版と違うところとしては、カメラワークなど、ドラマではなかなかできなかったトリッキーなことにチャレンジしている点。そもそも、劇場版に進出していることが大きな挑戦なんですけど、フルスクリーンで2時間弱という規模だからこその“挑み”をしているなと思いました。僕が出演していない部分もじっくり見ましたが、監督自身も細かいトライをしていらっしゃっていて、“映画ならではだな”と感じました。

橋口呂太を演じるにあたって大事にしていることは?
橋口呂太を演じるにあたって大事にしていることは?

――渡部さん演じる橋口呂太は天真爛漫で天才肌。2017年から参加されて4年間、同じ役を演じてきましたが、彼にどんな印象を持っていますか?

最初は非常に子供っぽくて、無邪気な青年というイメージだったんですけど、僕の中での心境の変化や、4年間同じ役に向き合っていく中で、“ただそれだけじゃないな”と思うようになりました。呂太は、意外に空気が読めたり、不意に天才的な発言をしたりするキャラなんですよ。もしかしたら、科捜研という異質なキャラクターが集まる空間で揉まれることによって、割と真っ当な人間になってきたんじゃないかなと思います。

――呂太とともに、現実世界の渡部さんも年齢を重ねたことで、役に対する考え方も変わったんですね。

科捜研はキャラクターの化け物揃いなので、呂太のような突飛なキャラクターが入っても意外と馴染んじゃうというか。キャラクター性だけを見て、腫れ物っぽいと感じた部分も、徐々に馴染んできましたし、彼も大人になったのかなって。ただ、(演じる中で)呂太の根幹の良さは残してきたいと思っていました。

――劇場版でも彼の一言で、緊張感のある科捜研が和む瞬間もあります。演じている際に気をつけていることを教えてください。

呂太は、お客さんと同じ目線に立てる唯一のキャラクターだと思うんですよ。例えば、知らない単語が出てきた時、「それって何?」って聞けちゃう。誰もが知っている体(てい)で物事が進んでしまうと、お客さんには伝わらないじゃないですか。誰か説明する人がいて、それを聞く人がいる。その聞く役が僕だなって。その部分は、すごく意識しています。

あと、こうした事件モノのドラマでよくあるのがミスリード。ドラマの中でも呂太は、ミスリードを買って出ることもあって、僕がミスリードしていくことで、お客さんもそちらに興味が引っ張られる。でも、本当の真実は別なところにあって……っていう。僕がいることで、物語の振り幅を出すことができるので、非常に重要な役だと思っています。やっぱり、みんな頭のいい人ばかりだと面白味がないじゃないですか。“視聴者目線”は意識していましたね。

――ドラマではお馴染みですが、映画のロケ地も京都でしたね。

今回、全編にわたって京都の魅力が詰まっているんですよ。『科捜研』といえば、京都ですが、今まで描ききれなかった部分がしっかり描かれていて……。紅葉の時期も重なって本当に素敵。京都のいいところがふんだんに盛り込まれているので、「そうだ、京都へ行こう」って本当に思いますね。

――(笑)。天才科学者・加賀野亘を演じる佐々木さんについての印象をお聞かせください。

ご一緒する機会はなかったんですけど、序盤で加賀野が登場したとき、“マリコたちは彼を倒せるのか?”と不安になるくらい圧倒的な存在感を感じました。佐々木さんは、シリーズ最大の敵を見事に演じられていて、すごく尊敬の気持ちがわきました。

――沢口さんや内藤さんとは長らく現場をご一緒にされています。どんな印象をお持ちですか?

沢口さんは本当にプロフェッショナル。同じ役に20年以上にわたって携わっていらっしゃるので、マリコという役が完成しているのはもちろん、日々の鍛錬、積み上げ方が役者として素敵だと思いますし、見習いたい部分も多いです。

内藤さんは気さくで、僕のラジオ(AuDee『渡部秀 Shoot The Moon』)にも「出るよ!」とおっしゃってくれて、本当に出てくださったんです。もちろん大先輩で遠い存在ではあるんですけど、どこか心に寄り添ってくれる熱い方ですね。人として尊敬します。

――最後に『科捜研の女 -劇場版-』の見どころを教えてください。

フルスクリーンで見られることを、すごく楽しみにしていらっしゃる方も多いと思いますが、豪華キャスト、スタッフの方々の力で、今までの『科捜研の女』史上、一番の作品になっていると思います。ドラマ版では見ることのできない、それぞれの表情、お芝居を十分堪能できるので、最初から最後まで目を離さないでいただきたいです。ぜひ劇場に足をお運びください!

(撮影・取材・文:浜瀬将樹)

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