新型コロナウイルス。 自粛ムードが続くなか テレビができること。 影山貴彦のウエストサイドTV【12】

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新型コロナウイルス。 自粛ムードが続くなか テレビができること。 影山貴彦のウエストサイドTV【12】

安倍首相は26日昼、首相官邸での新型コロナウイルス感染症対策本部で、全国的なスポーツや文化イベントなどについて、今後2週間の中止や延期などを要請する方針を明らかにしました。「多数が集まる全国的なスポーツ、文化イベントは今後2週間は中止、延期、規模縮小などの対応を要請する」と、述べています。ニュース速報に触れて、すぐにキーを叩いています。

ついにここまで来たか、というのが正直な思いです。同じように感じておられる読者の方もいるでしょう。この原稿を書いている間にも、私自身が関わっている仕事や、プライベートの行事に関して、中止、延期の連絡が次々に入ってきます。

町に出れば、比較的皆さん冷静に対応されているように見受けられますが、人の数は通常よりも明らかに少ないですし、普段は混んでる店が、お客さんがまばらもいう光景を目にされている方も多いでしょう。

テレビは、新型コロナウイルスのニュースで占められています。私の専門はエンターテインメントなものですから、エンターテインメントのニュースに関してコメントを求められることが多いのですが、定期的な連載を除けば、1月に比べて2月はその機会が幾分少ないように感じます。エンターテインメント全般に関して、どことなく沈んだ印象を抱いているのは私だけではないでしょう。そんな中、中居正広さんのジャニーズ事務所退所のニュースは大きく取り上げられていました。さすが、中居クン!いうところでしょうか。「不倫問題」の扱いも明らかに減りましたね。

さて、真綿で首をしめるような、じわじわとした圧迫感、不安感、焦燥感、イライラ感が、私たちひとりひとりの心に蔓延してきました。経済に与えるダメージは深刻です。社会の不安は増幅するばかりに見えます。こんなとき、人はとかく、批判する先を見つけようとするものです。政府の動きは、ここまでのところお世辞にも褒められたものではありません。向き合うべき優先順位を誤り、対応は後手後手に回るばかり。安倍内閣の支持率が急降下するのも当然のことでしょう。

私たちの国の政府が頼りないようにしか映らない、これはかなり寂しいことです。もちろん、個々に頑張っておられる方は大勢いらっしゃるのでしょうが、残念ながら、その情報はあまり入ってはこないのです。

こうした時、メディアが果たすべき役割は、とても大きいと思うのです。ただここまでのところ、テレビ番組は、いたずらに私たちの不安を増幅させることはあっても、将来に向けて建設的に何かを提案している姿は、残念ながらほとんど見受けられませんでした。専門家の方が単発的に各局に出演して、解説をされているのですが、どうも腑に落ちない人選の方もいて、私たちの心の揺れはさらに大きくなることも少なくないというのが正直なところです。

今日(26日)の政府の発表を受けて私たちがなすべきことは何か。私たちひとりひとりの力で、この度の逆境を乗り越えることでしょう。過剰な自粛ムードに振れてしまうことは、決して得策ではないでしょうが、これ以上のウイルスの拡がりを食い止めるために、私たちの心持ちをしっかり守り切ること、「守るためのオンモード」にしておくことが必要でしょう。消極的でなく、積極的に予防するのです。「大丈夫大丈夫!」とノー天気に安心感を流布する時期ではもはやないのです。

テレビでは変わらず、「~が悪い」、「~が間違った」、など批判のための批判の洪水です。マスクがないない、と煽るのではなく、何が効果的なのか、何ができるのか、あるいは何をしてはいけないのかを是非時間をかけてメディアは伝えて欲しいのです。

自粛自粛が続くと、私たちは自粛疲れに陥ります。これからの2週間、それは顕著になるでしょう。しっかりと対応するなかで、現時点で楽しむことが可能なエンターテインメントと触れあうことは、私たちの心を安寧に保ってくれます。テレビは今こそ、その役割をしっかりと演じるべき時でもあるのです。

視聴者のために是非見ごたえのあるエンターテインメントを十二分に提供して欲しいと強く願っています。

執筆者プロフィール
影山貴彦
同志社女子大学メディア創造学科教授
(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」、
「おっさん力(ぢから)」など

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