松竹芸能の若手ナンバーワンに名乗り!「たらちね」2020年は飛躍の年に! 中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【7】

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松竹芸能の若手ナンバーワンに名乗り!「たらちね」2020年は飛躍の年に! 中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【7】

 昨年12月28日に大阪・DAIHATSU心斎橋角座で開催された松竹芸能の若手芸人ナンバーワン決定戦「カドキング いっちゃんおもろい松竹若手は誰だ!?」で優勝したのが「たらちね」です。互いに他のコンビを経て、京都大学出身の草山公汰さん(29)と野趣あふれるSAITA(本名・才田龍一郎)さん(28)が2年前に結成しました。昨年の「M-1グランプリ」「キングオブコント」では準々決勝敗退と辛酸をなめましたが、松竹芸能が社を挙げて開催した大会だけに、大きな期待を背に、今年を飛躍の年にすべく思いを語りました。

(取材/文:中西 正男)


―コンビ結成までのいきさつは?

草山:おのおの、松竹芸能の養成所には一人で入りまして。僕が2013年に入りました。

SAITA:僕が2011年に入りました。なので、芸歴で言うと、僕が2年先輩ということにはなるんです。

―少し表情が硬いようにも見えるのですが…(笑)。

SAITA:インタビューというか、こういう取材を受けるのも初めてでして…。

―なんと、なんと。気楽に思ったことを話してください(笑)。互いに別のコンビを経て、今のコンビを結成したんですけど、どちらが「組もう」と?

SAITA:いや、これがですね、どちらかが言ったわけではなく、何となく、僕は僕で「草山が組みたがってる」という話を聞き、草山は「SAITAが組みたがっている」という話を聞き…。いまだにそこはハッキリしないのですが、誰か、キューピッド的に動いてくれていた人がいた?みたいで(笑)。ただ、今に至るまでその人が誰かも分からず、あしながおじさん的にカッコいいのか、なんなのか、分からないんですけど…。

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―そもそも、お二人がお笑いの世界に入ろうと思ったのは?

SAITA:僕は福岡県出身なんですけど、小学校5年の時でしたかね、テレビ番組の企画で学校に芸人さんたちが来たんです。みんなで大縄跳びをするというもので「博多華丸・大吉」さんやおたこぷーさんらが来られまして、初めて芸人という仕事をしている人たちを間近で見て、もともとお笑いは好きだったんですけど「こんな職業があるんだ」と改めて思ったといいますか。ただ、そこから普通に進学して、高校卒業後は大学に行くための予備校に通って山口大学を目指して勉強していたんです。
でも、なかなか受験勉強がうまくいかない。そこで、ずっと胸の内にあったお笑いへの思いが出てきたといいますか。大学に行ってからでもお笑いはやろうと思っていたんですけど、だったら、もう先に好きなことをやろうと。そのまま大阪に向かいました。
そこで、吉本興業の養成所・NSCも考えたんですけど、めぐりあわせというか、NSCはちょうど入学が終わったところで入ろうと思うと、丸1年待たないといけない。松竹芸能の養成所は半年に一度募集していたので、スッと松竹の方に入りました。

草山:僕は大学(京都大学)に行って、その時点ではお笑いという思いはなかったんです。学部は農学部だったので、周りの進路としては種苗メーカーに行ってタネの研究をするとか、食品メーカーで新商品を開発する職に就くとか、農林水産省の官僚になるとか。
そんな同級生がほとんどだったんですけど、在学中に「将来、どうしようかな…」というのを考えて、そこで出てきたのが“書く仕事”だったんです。
というのも、中学生くらいから趣味程度ですけど、小説とかを短いものを書いていて、ブログなどで発表して、ある程度、反響をいただいたりもしていたんです。
なので、何かそんな仕事ができないか。小説家、脚本家的な。そして、お笑いも好きだったので、そこに笑いの要素が加わったようなものを書きたい。そう考えていたら、プレーヤーというか、松竹芸能の養成所に入ることになりまして。
ま、芸人になったらなったで、そこから書く仕事もやろうと思えばできると思い、そこを選んだ感じです。
「もし、お笑いが向いてなくてダメだと思ったら、大学に戻れる」ということで、3回生で休学して養成所に入ったんですけど、やってみたら楽しくて。結局、休学を延長して最終的には退学になりました(笑)。
親もびっくりはしてましたけど、反対もされなかったですし、入ってから芸人とか関係者の人にもったいないと言われるんですけど、そんなこともなく…。

―実際にお笑いの世界に入ってみて「思っていたのと違う…」と思ったことは?

草山:もちろん難しいことだらけではあります。やっぱり、人を笑わすって難しい。短編小説ではそれなりに反響があったけど、目の前のお客さんがお腹を抱えて笑う。それがどれだけ難しいか。それは知りました。
ただ、それでも、楽しいんですよね。だから、大学も辞めましたしね(笑)。

SAITA:本当に難しいなとは思います。ただ、今のコンビになってライブが楽しくなりました。単純にウケるようになったなと。ここで笑ってほしいというか、ウケてほしいところでウケるというか。
それこそ、アタマがいいからか、相方が作ったネタは話の流れがキレイなんですよね。構成がしっかりしているというか。

草山:それで言うと、相方はネタをとばしたり、間違えたことがないんです。それは本当にすごいなと思いまして。それで、なんで大学受からへんかったんやろと(笑)。

SAITA:それはまた別やから!別やから言うのも、悔しいというか、ナニな感じやけど(笑)。

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―先輩とか、周りから受けた刺激で印象に残っているものはありますか?

草山:この世界に入った当時、まだピン芸人をやっていた時に「よゐこ」の有野さんに時々お話をうかがってたんです。一般的には穏やかというか、物静かなイメージがあるかもしれませんけど、実は貪欲というか。「面白くなるんやったら何でもアリ」という考えを教えていただいたといいますか。
例えば、舞台でも何でもなく、普通に楽屋とかで話をしていても「一つ一つの“返し”でも、絶対にそこで会話が止まるような返しはするな」とおっしゃったり。普段からそういう細かいところまで考えて自分に圧をかけてらっしゃるというか。テレビで見ているイメージと全然違う貪欲さを持ってらっしゃるし、気が引き締まるというか、自分がいかにまだまだかということを思い知らされました。だからこそ、売れてらっしゃるんだし、世間から注目されている人には理由がある。翻って「自分は全然アカン」とケツを叩かれるという思いにもなりました。
ビフォーアフターじゃないですけど、有野さんのその姿を教えてもらってからは、意識が変わりました。僕は元々、前へ前へと出るタイプではなかったんですけど、舞台に出ていたりする時は、少なくとも一回はグイっと前に出る。それは絶対にやろうとなりました。
なんか、それを考えてなかった時間があったことが恥ずかしいというか。その感覚をいただいたというのは本当にありがたいことだと思っています。

SAITA:僕は同期からの刺激というか。松竹芸能って、そもそも養成所に入ってくる人数が吉本興業に比べたら何分の一というくらい少ない。また、その中で芸人を続ける人はさらに少ない。僕の同期で続けているのは3人だけなんです。
その中の一人、森本サイダーというのが2018年に「とんねるず」さんの「細かすぎて伝わらないモノマネ」で準優勝したんです。3人しかいない中だからこそ、そういうことがあると「自分も何とかしないといけない」と強く思いますし、そういう部分の馬力みたいなものはもらっている気はしますね。

―2020年、どんな年に?

SAITA:僕らは何か実績がないと注目されるようなコンビではないと思うので、要は賞レースで勝ち上がらないとスタートラインに立てない。まずは結果を出す。それが何よりの目標ですよね。

草山:あとは、僕は経歴を生かしたクイズ番組などは考えてます。これまでもオーディション的なところは何回か行かせてもらったんですけど、やっぱり、もしクイズで好成績を残したとしても、そもそものところで「お前、誰やねん」になってしまう。
なので、まずは知ってもらう。そして、経歴を生かして、実はクイズもできる。そんな流れが正解なんだろうなと。
だから、まずは何にしても結果を残して知ってもらう。それが全ての始まりになるんですよね。ネタがなくてもタレント性で行けるというキャラクターではないことだけは、しっかりと分かってますので。ま、これは大学関係なく、誰でもすぐに見た瞬間、分かることだとは思いますけど(笑)。


■取材後記
「カドキング―」の司会は「よゐこ」の濱口優さんと「TKO」の木本武宏さんが務めていました。松竹芸能が誇る売れっ子が、いちイベントの司会をする。そこにこそ、この催しに対する松竹芸能の期待の大きさがうかがえました。
そこで勝ち上がったのが「たらちね」。否応なしに注目が集まります。僕も審査員としてイベントに関わらせてもらったのですが、終了後は、松竹芸能の社長さんや幹部社員の皆さん。そして、関西のメディア関係者らが揃って、打ち上げの場で二人を囲みました。
ビールも、ハイボールも、ワインも進み、僕を含めみんなが二人に、ああだこうだと提案をしていました。中には「マイク・タイソンばりに、顔面にタトゥーを入れた方がいい」というアグレッシブ極まりない助言もありましたが、全ては「何とか松竹芸能から新たなスターが出てきてほしい」という“愛あるおせっかい”でした。
全部を静かに、素直に聞いていた二人ですが、適宜取捨選択をして、みんなの熱い思いだけをろ過して吸収する。そして、大きな期待を具現化してもらえたら嬉しい限りです。

執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)
1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。

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