ヒロシの自虐セリフが話題の赤城乳業『ガツン、とみかん』のCMを誕生させた同社の社風とは?

公開: 更新: 読みテレ
ヒロシの自虐セリフが話題の赤城乳業『ガツン、とみかん』のCMを誕生させた同社の社風とは?

冷たい食べ物が美味しいこの時季、アイスのCMを見る機会も多い。

中でも異彩を放つのが、赤城乳業『ガツン、とみかん』。オレンジのスーツに身を包んだ芸人のヒロシさんが、

「去年の夏、ガリガリ君より売れてませんって言ったら、なぜかちょっとだけ売れるようになりました」

と、例の口調で控えめに喜びを表す内容だ。

YouTube (3072)赤城乳業CM ガツン、とみかん「ヒロシ篇」(15秒)2019

赤城乳業のテレビCMで思い出すのは、やはり主力商品の『ガリガリ君』と、そのCMソングの「♪ガ~リガ~リ君」というサビだろう。

 (3078)

しかし、これら以外にも同社のテレビCMには『ソフ』や『ミルクレア』など、何だかヘンなものが多い。例えば『ミルクレア』の「思い出してください篇」は、スーパーなどに置いてある買い物カゴと商品のパッケージが交互に映し出され、

「♪こういうの(黄色の買い物カゴ)とか、こういうの(緑の買い物カゴ)を見かけたら、これ(ミルクレア)を思い出してください」

という歌が流れるシンプルなもの。しかし、この歌が、どこかで聞いたような演歌調で、何だかとても心にしみるのだ(笑)。

YouTube (3074)赤城乳業CM MILCREA「思い出して下さい」篇 (30秒)

そこで今回は赤城乳業のテレビCMに迫る。どんな意図でつくっているのか。答えてくれたのは同社・マーケティング部の中島一輝さん。

--放送中のCMでヒロシさんが言っていることは本当なんですか。

「はい。ヒロシさんには昨年からご出演をお願いしておりまして、その内容が『ガリガリ君より売れてないけど20周年』というものだったんです。おかげさまで販売実績が伸びましたので、今年はそれを反映して、ああいうCMになっています」

--どのぐらい伸びたんですか。

「ざっくり言うと20%ほどです。20周年ということもあり、SNSの公式アカウントをつくり、1年を通じて情報が途切れないように盛り上げましたので、テレビCMだけが理由とは一概には言えませんが、もちろん一定の効果はあったと思っています」

--今のCMに関してはどんな反響でしょう。

「SNSで『今年もヒロシさんでテレビCMをつくりました』と告知したら、『ヒロシさん、やったー!』みたいな声はいただきました。うちは2年連続で似たような感じのCMをつくることはあまりないので、ファンの方には喜んでいただけたと思います」

--そもそもどうしてヒロシさんで?

「昨年が20周年ということで、一昨年から『どういうキャンペーンで盛り上げていくか』という話をしていたんですね。その中で『ガリガリ君より売れていないという社内的な立ち位置を前面に出してみたらどうだろう』という案が出てきたんです。それで、じゃあ『ガツン、とみかん』を擬人化して言わせてみたらどうかと。やはり自虐ネタと言えばヒロシさんですから、それが出演をお願いした理由です」

--だからオレンジのスーツなんですね。

「はい。背景も青空にして、商品のパッケージと同じにしています」

--よく見ると確かに(笑)。やはりCMをつくる時は「ユニークなものを」という意識があるんですか。

「そうですね。うちぐらいの規模だと、1年を通じてテレビCMを流し続けるということが、なかなか難しいんですよ。ですから、“短期間でお客さんの印象に残るもの”ということは常に意識します。そうすると自然と“インパクトの強いもの”が多くなっていくんだと思います」

--他社さんに話を聞くと、おもしろいCMをつくろうとすると、けっこう社内から「やりすぎだ」とか「意味がわからない」という反対の声が挙がるみたいですが、赤城乳業さんは?

「うちは逆ですね。変わったCMがほとんどで、社員全員がそっち路線に慣れてますから、あんまりおもしろくないものをつくると『置きにいった』とか『無難だな』って言われます(笑)」

--16年に『ガリガリ君』を60円から70円に値上げした時に放送された社員総出のお詫びCMも話題になりましたよね。

「じつは91年に50円から60円に値上げした際も、ガリガリ君が頭を下げてお詫びする新聞広告を出しているんです。25年間、プライドとして60円を守ってきたことが限界に達したことについて、申し訳ありませんという気持ちと、値上げを発表した後、お客様からいただいた『今まで良く耐えてくれた』という声に対する感謝の気持ちを込めたんです。他にも『なんだか許せる』『どうか頭をお上げください』『ここまでする会社、他に見たことがない気がする』など温かいご意見をたくさんいただきまして。日本だけでなく、ニューヨークタイムズの1面に取り上げられたり、イタリア、ブラジルなど海外からの反響もあって、うれしかったですね」

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--へぇ! そういう社風だからユニークなCMがたくさん生まれるんですね。個人的には『ミルクレア』の「思い出してください篇」も大好きでした。

「ありがとうございます。でも、あれ、僕の担当じゃないんですよ(笑)。そう言っていただけるCMをつくれるように、これからもがんばりたいです」

【文:井出 尚志】

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