マイナビニュースでテレビ部門を担当する中島優氏。後編では令和を迎えたテレビのあり方、方向性について聞いた。多い時は1日十数本のテレビ関連の記事を書く中島氏ならではの、テレビに毎日接するライターの感覚で語ってくれた。気負いもてらいもない、ただテレビを愛するひとりの男としての言葉が、奥行きがあり興味深い。途中に出てくるネットとの関係の話は、テレビ制作者にも大いに参考にしてもらえると思う。

【聞き手/文:境 治】

令和のテレビは多様に楽しめるものに

聞き手・境治(以下、S):乱暴な質問ですが「平成テレビ対談」(テレビ界のレジェンドたちに平成を振り返ってもらう対談シリーズ、前編参照)を編集してみて、平成のテレビの課題は何でしょう?

中島優氏(以下、N):うーん、難しいですねえ・・・。面白くなってるけど受像器がない人も増えてきてそこに届いてないだけ、ということですかね。radiko(ラジオ放送をスマホで聴けるアプリ)はいつでもどこでも聴けますよね。タイムフリー機能もあって。あれがテレビでも実現できたら既存のインターネットテレビは存亡の危機になるのではないでしょうか。よく練ってつくってあるし、予算のかけ方も違いますしね。

S:おおー、それは至言ですね!平成を通じて全体の視聴率は減って来たけど、radikoみたいになればまた勢いがつく、ということですね。さらに答えるの難しいと思いますけど令和のテレビはどうなるでしょう?

N:うわー、もっと難しいなあ、うーん・・・。『探偵!ナイトスクープ』を立ち上げた朝日放送の松本修さんが、うちのインタビューで「平成で昭和を凌ぐお笑いタレントが生まれなかった」とおっしゃったんです。ダウンタウンさん以来、カリスマ的な人が平成では出なかったんじゃないか、と。(ビート)たけしさんがおっしゃるのはイチローはじめ新しい選手は、技術はすごいけれども王・長嶋ほどの人気にならないのは才能のある人の数が増えてきちゃったからだと。カリスマ性を持つ人が出にくい時代になってるのだと思います。令和はもっとそうなっちゃうのかな、と言ったら暗い話ですかね(笑)。
だから、前向きに捉えると面白い人がいっぱいいる、ということでもあります。平成初期は、芸人さんの数はこんなにいなかったわけですからね。趣味嗜好が多様化してそれに応じたテレビの多様性が進んで自分に合った芸人が選べる。令和はそういう時代になるのかもしれない。
もちろん、みんなで熱狂できる番組はあった方がいいですよね。次の日にクラスで話題にする、そんな役割をテレビは諦めないでほしい。いまはYouTuberがそうなっているようですが。

S:子どもたちはテレビもYouTuberも両方話題にするみたいですけどね。

N:スポーツ中継だとみんなで熱狂しますよね。ああいうのは令和の時代もなくならないでほしい。今より多様になりながらも今の延長戦で面白くやっていける。テレビには力があるからこそ、違法アップロードでも見られている。だからさっきも言いましたけど、テレビがradikoみたいになったら動画配信サービス以上にネットで見られるんじゃないか。コンテンツの力はあるので、それを送り届ける手段があればいいのだと思います。

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テレビとネットにボーダーはない

S:ということは、放送だけじゃなくてネットでも積極的にやったほうがいい?

N:いろいろ事情もあるのでしょうけど、そう思います。今ネット活用というと、Twitterのコメントを画面の下に出したりAbemaTVと連動したりしていますけど、そういう小手先じゃなくて、番組をそのままスマホで見られればいいのにな。単純に視聴者はそう思ってるんじゃないでしょうか。

S:いいですねー。それどんどん言ってください!(笑)Amazonプライム・ビデオとかNetflixとか、あとHuluとかFODとかも加入していますか?

N:仕事の一環として(笑)。でも楽しんで見てます。アマゾンでも「ドキュメンタル」とか「カリギュラ」とか日本のコンテンツを見ることが多いですね。

S:地上波の番組とはやっぱり違いますか?

N:この人出しちゃいけないだろうとか、こんなとこ映しちゃいけないとか、地上波と違う面白みになってるのは確かだと思います。でも出てる方はあまり区別してないみたいですね。東野幸治さんが鹿を解体して食べる番組があって刺激的な場面もありましたが、グロいところがなくても成立するし、そこは番組のポイントじゃない。演者さんも意識してないそうで、実はそんなに変わらないと思います。

S:地上波で見ているテレビの面白さの違う姿を楽しむのですかね?

N:一回考え方をリセットしようよ、みたいなことだと受けとめてます。実は配信だってコンプライアンスから逸脱することをしたら怒られる、けどここまでやっている。地上波だってやろうと思えばできるんだよ、と言っているような気がしますね。結局作っている人は地上波を作ってる人なので、これぐらい地上波でもできるんだよというメッセージを感じます。だからこれからは、配信でやったことが地上波に返ってくることも…なんて期待をしてしまいます。

S:中島さんはテレビをちゃんと信じていますよね。だからこそ、地上波はネットを取り込むこともできるいうことですかね?

N:テレビとネットで、もう分け隔てなくなっているのではないかと。カンニング竹山さんにインタビューした時に言ってたんですけど、AbemaTVも地上波じゃできない放送だとか言ってたけど、それはもうダサくて言わない方がいい。やばいことやったら怒られるし、見てる方もボーダーはないわけですから。

テレビと世の中を楽しく盛り上げたい

S:令和の時代はそのボーダーがなくなっていけばいいですね

N:コンプライアンスが厳しいと言われすぎてて、もう一周してる(笑)。ヤフコメ見てても例えば「水曜日のダウンタウン」で過激なことやったら前は「またテレビであんなことやって」と書かれてたのが、今は「これくらい、いいだろう」というコメントが増えてる気がします。一周していい方向に行けばいい。

S:確かにネットでは、テレビのアラを見つけては叩いてましたが最近はそうでもないような気がします。

N:そうですね。ただいまだにニュースサイトはテレビを叩く記事が好きですけど。匿名の“テレビ局関係者”なる人物のコメントで構成された「フジテレビ女子アナ人材不足」というニュースが話題になったとき、自分はちょうどフジのアナウンス室長に取材して新しい取り組みを積極的に行っているという記事を書いたんですが、箸にも棒にもかからなかった(笑)。

S:わかります!ネガティブな記事はすぐニュースサイトに載るけど、そういうのはスルーされますよね。

N:そこは使命感持っていて、地道にやっていきたいです。「実はテレビは面白い」とみなさんがおっしゃってるのを伝えるのが我々の仕事かと。

S:それいつも思うんですよ、番組をクサすような記事、視聴率が悪いと書かれた記事がすぐニュースサイトに載りますよね。みんなで盛り上げようという気はないのかなと言いたい。

N:そうですよね、楽しく盛り上がりたいですよね。元号が変わるって昭和だったら悲しいことだったのに、平成から令和になったとき、こんなにみんなで楽しく盛り上がれることにみんな気づいたじゃないですか。前向きになることをやりたいですよね。

S:マイナビニュースの記事には「テレビを盛り上げたい」という気持ちを感じますよ。そういう理念なんですかね?

N:うちの編集方針として「日陰にも光を」というのがあるんですよ。制作者のインタビューをやってるのも、その一環です。

S:マイナビニュースにそういう方針があるんですね!そこにテレビ好きの中島さんがいるからいい空気ができてる。

N:テレビを盛り上げる記事を自分たちも出していきたいし、いい方向付けができるキュレーターがいる媒体が増えて、揚げ足取るような記事を排除する世の中になればいいと思ってます。最近制作者でツイッターやってる人が増えて、テレビについてのおかしな記事に「これデマです」ってツイートしている。「テレビ番組の制作費大公開」という怪しい記事に「うちはこんなに安くない」ってその局の人が次々にツッコミを入れてたのとか、いい傾向だと思います。

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前編でも書いたが中島氏は、おそらく日本でいちばんテレビについて書いているライターだ。だが決して、テレビ論をとうとうと語る人物ではない。質問すると「うーん」と考えこんで悩みながら思ったことを喋る。ただ、その中身はテレビの情報に毎日接しているテレビ大好きな人間として、核心を突く答えになっている。熱心な視聴者たちの声が、中島優というフィルターを通して聞こえてくるのだ。テレビマン諸氏は、中島氏の記事に注目してほしいと思う。令和のテレビ視聴者の感覚が、きっと伝わってくるはずだから。

プロフィール
中島 優(なかじま・ゆう)
1983年生まれ、東京都出身。日本大学芸術学部卒業後、制作会社、放送業界紙、ラジオ局を経て、15年にマイナビ入社。マイナビニュースでテレビ・ネット配信番組関連などの記事を担当。

読みテレ

現在配信中のFODオリジナルドラマ『ヤヌスの鏡』に主演する桜井日奈子とお笑い芸人・和牛の川西賢志郎が、8月23日放送の『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ系、毎週金曜23:00~)にゲスト出演する。

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