あいみょんに会いたい!! 影山貴彦のウエストサイドTV【2】

公開: 更新: 読みテレ
あいみょんに会いたい!! 影山貴彦のウエストサイドTV【2】

番組制作に携わる人間にとっての大きな魅力のひとつは、「会いたい人に会える確率が、他の仕事に従事している人よりも高いこと」でしょう。
 もちろん、公共の電波を使って、多くの視聴者に喜んでもらえる番組を提供することが、作り手の使命です。個人的な嗜好を最優先することは、決して褒められることではありません。自らが大ファンの芸能人と共に仕事をして、舞い上がっているようなヤツは、ディレクターの風上にも置けない、と「昭和テイスト」を引きずる私などはいまだに思っています。たとえば、出演者にサインをねだるタイプの作り手は、先輩や同僚たちから総スカンを食ったものです。ただ、そういう価値観も、新しい時代と共に変わっていっているのかもしれませんが。

 私は番組の作り手から、職場を大学に移して丸17年になります。ありがたいことに充実した日々を送っています。ですが時に、「今も自分が番組を作っていたら・・」と妄想することがあるのです。現在もメディアと繋がった仕事をさせてもらってはいますが、直接ディレクターやプロデューサーとして番組制作に携わることからは離れています。だからこそ、そんな妄想をするのでしょう。

 とても長いフリとなってしまいました。さぁここからが本題?です。

 私が、変わらず番組を作っていたとしたら。今、一番会いたい芸能人はあいみょんです。2015年にインディーズデビューした後、翌年メジャーデビューを果たし、昨年の紅白歌合戦に初出場したシンガーソングライターの名をもはや知らない人は少ないでしょう。今、最大級に注目されている歌手のひとりといっても過言ではありません。新曲「ハルノヒ」も絶好調の売り上げを記録しており、あいみょんの影響で、巷には「ギター女子」が増えているそうです。今後のミュージックシーンを彼女が牽引してくれると確信しています。
 私が一番好きなのは、彼女の詞です。たとえば「マリーゴールド」の一節。「麦わら帽子の君」ではなく「麦わらの帽子の君」と「の」を挟んだ表現に、一気にヤラれてしまいました。文学的といいますか、「絵」がスッと浮かぶのです。兵庫県出身というプロフィールにも、ウエストサイドの人間として、親近感が湧くところです。

 自分のこれまでの生き方がそうさせるのか、「あいみょんに会い、話をする」というだけでは、妄想の中の自分は決して満足しないのです。自らの手で番組を企画し、数多くのファン、視聴者のみなさんが満足してくれるような番組を作りたい、そこまでが全てセットの妄想となって、頭の中を占めているのです。ですが先ほど述べた通り、残念ながら、私は今その立場にはありません。それが正直とても悔しいです。
 今、関西のみならず、日本中で番組制作に汗を流しているみなさん。みなさんの仕事のやりがい、尊さ、そしてしんどさは、ある程度分かっているつもりです。
 自分のやりたい番組を企画してますか?それは形になっていますか?そして何よりも、「会いたい人に会える仕事をしていますか?」

 生意気なことを申しますが、それが魅力的な番組を作る原点だと思っています。その熱さは、きっと視聴者に届くはずと信じているのです。

執筆者プロフィール
影山貴彦 かげやま・たかひこ
同志社女子大学メディア創造学科教授(メディアエンターテインメント)
コラムニスト
元毎日放送(MBS)プロデューサー・名誉職員
ABCラジオ番組審議会委員長
上方漫才大賞審査委員
著書に「テレビのゆくえ」「おっさん力(ぢから)」など

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