漫才コンビ・千鳥の人気は今や全国区!ほんまに売れて良かったのお~~!

公開: 読みテレ
漫才コンビ・千鳥の人気は今や全国区!ほんまに売れて良かったのお~~!

読売テレビ恒例の大型お笑い特番「漫才Lovers」の今年度第1回目が7月15日に放送された(関西地区のみ)。超お笑いオタクの私にとっては、毎回、豪華且つ旬なラインナップで胸躍らせるのだが、今回からもうひとつ楽しみなネタが加わった。それは、当番組の新しいメイン司会に“千鳥”が抜擢されたことだ。

…千鳥よ、よくぞここまで来たなあ~、と感涙にむせぶのは私だけではなかろう。しかし、私が特に感動せざるを得ないのは、私がその昔、プロデューサーとして大阪ローカル局で携わっていた漫才番組で、千鳥はコソっとデビューしたからだ。

ロケ芸人・千鳥!

「ぼくら千鳥言いましてね、岡山の北木島いう島出身の田舎もんなんですよ。大阪へ来たときゃー、人がおゆーて(多くて)そりゃあビックリしまして…」と岡山弁丸出し漫才でスタート。実は私も同郷の岡山、ということで注目はしていたが、世間的にも全く話題にも上らず、上昇気流の兆しも皆無であった。

二人ともお世辞にもイケメンとは言えず、当時、方言漫才もちょこちょこ出てきてはいたが、“岡山”というところが何とも中途半端で、博多弁の「華丸大吉」、栃木弁の「Ù字工事」ほどのインパクトはなかった。

それでも、持ち前のコンビ仲の良さも手伝って徐々にファンも就き、漫才賞レースにちょこちょこ顔を出し始めたところへ、「町ブラ」…いわゆるロケ仕事が舞い込むようになった。ロケは昔から暇な芸人に最適で、急な発注に応えられる千鳥は重宝された。しかし、これが大当たりで、それまで、漫才芸としてしか二人の言葉は世間に晒されてなかったが、素人相手の生々しい岡山弁の丁々発止がまさに「千鳥ワールド」を生み出した(岡山弁は、元来、少し乱暴で、他県民からは非常にキツく聞こえるらしい)。素人に対し岡山弁で"歯に衣着せぬ"大悟。それを岡山弁で"優しくフォローする"ノブ。各局に出まくって受けに受けた彼らは、「関西のロケ名人」の称号を得るまでに至った。

そもそも、関西人は「探偵ナイトスクープ」「今ちゃんの実は…」(ともに朝日放送)など、「ロケ番組」を非常に好む傾向にある。というのも、関西自体がロケネタの巣窟で、登場してくる一般人も自ら“ボケ”と“ツッコミ”の技を心得ており、そこに絶妙の間で千鳥が絡んでくるロケは、面白くならないはずがなかった。

ロケで互いの呼吸が鍛えられた二人は、本職の漫才芸もどんどん世間に認められていく。それまで「千鳥の漫才は特殊過ぎて、よくわからない」とそっぽを向いていた漫才ファンが、「あの漫才は千鳥にしかできない!」と全く逆の反応を示し始めた。こうなると、その魅力は全国に伝わり、「THE MANZAI」「ENGEIグランドスラム」(ともにフジテレビ)、「ドリーム東西ネタ合戦」(TBS)など、各キー局のお笑いネット番組の常連組にまで昇り詰めたのである。

いざ、東京へ!

少し売れると関西芸人はすぐに上京したがる。千鳥も例外では無かった。勿論、会社(所属のよしもとクリエイティブ・エージェンシー)としても、更に稼いでくれそうな千鳥を東京に呼ばないはずがない。彼らも会社の要請にすぐに飛びついた。しかし、蓋を開けてみたら、なにしろ、東京には、千鳥に頼らずともロケの達人タレントは星の数ほど溢れている状況。ネット番組のロケにわざわざ千鳥を起用する理由もなく、どんどん埋没していく一方だった。また、唯一のレギュラー「ピカルの定理」(フジテレビ)も終了したうえ、東京には、漫才番組が関西ほど豊富にあるわけではなく、芸人としての千鳥が活躍できる場は揃っていなかった。

ただ、私生活においては、その人間性とコンビ仲の良さで芸人仲間も増えに増え、特に大悟はその人懐っこさから、志村けんら大御所に大いに可愛がられた。その甲斐あってか、「アメトーーク!」(テレビ朝日)にて、芸人仲間からの愛情が注がれた「(もう大阪に)帰ろか…千鳥」なる企画も放送されたが、文字通りギリギリの戦いを強いられる日々が続いた。

そんな中、彼らの起死回生を呼び起こす番組が登場する!それが、テレビ埼玉のロケ番組「いろはに千鳥」だ。関東にも地方があった、と超居直り宜しく、「もうこれでダメなら往生際良く帰阪しよう」と原点回帰、得意の超ベタベタロケに思い切り自分らの技をぶつけたのだ。千鳥が、埼玉の各地(当然二人とも未知の土地)に現れ、人々と自由に触れ合い“いろはカルタ”を作っていく。その面白さはたちまち関東中から全国(この番組は各地方でも放送されていた)に広まり、「関西のロケ名人」は遂に「全国のロケ名人」へと変貌を遂げた。

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人気は全国区に拡大!

その話題に目を付けた東京キー局が、千鳥を起用しまくるのは直ぐだった。こうなると勢いは止まらない。スタジオひな壇からコメンテーター席へ。さらに、メインMCへ。丁度、MCタレント交替の端境期であったことも手伝って、千鳥の冠番組もいくつか登場、また、多くの有名企業CMにも抜擢されていくようになる。

まさに自分自身を信じて、ひたむきに走ってきた彼らならではの大成である。彼らと同時期に上京した多くの漫才コンビが涙を飲んで帰阪している。理由はひとつ、「コンビ仲が千鳥ほど良くなかった」点である。千鳥はお互いを尊敬しあい、信じていた。だからこそ、自分らの将来を見誤らなかったのであろう。彼らは、売れた今でも嫌味なオーラがまるで無い。むしろ、大悟は未だ自らの恥を切り売りし、ノブはそんな大悟に鋭くも優しいツッコミを入れる。失敗もスベりも、全てが笑いに転じる彼らに怖いものはない。老若男女のファンが就き、芸人仲間の下からも上からも慕われ、超大御所からのお墨付きも貰った彼らは、もはや無敵である。

そんな彼らが新たにメイン司会を務める「漫才Lovers」。この読売テレビ恒例お笑い特番での大抜擢をきっかけに、多くのお笑いファンの期待を背負った二人の今後の新たな活躍に注目せずにはいられない。

【文:妹尾 和己】

執筆者プロフィール
妹尾 和己(せのお・かずみ)読売テレビ 編成局東京宣伝部長。
制作部所属期に主にお笑い番組を担当。「上方お笑い大賞」「ZAIMAN」「上沼高田のクギズケ」
などを手掛ける。漫才・プロレス・特撮が三度のメシより好き。

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