師匠・桂ざこばへの恩返しを胸に秘めるイケメン落語家・桂あおば 中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【29】

公開: 更新: 読みテレ
師匠・桂ざこばへの恩返しを胸に秘めるイケメン落語家・桂あおば 中西正男の「そら、この芸人さん、売れるにきまってる!」【29】

雑誌「an・an」などでも取り上げられ若手イケメン落語家として注目されている桂あおばさん(33)。「面白いオッチャンやなぁ」とテレビで見た桂ざこばさんにほれ込み2010年に入門しました。師事するまで「落語も見たことなかった」と言いますが、全てを包み込んでくれた師匠への思い。そして、胸に秘めた恩返しを吐露しました。

入門から11年。やっと落語のホンマの面白さが分かってきたかなと思います。漫才やコントとはまた違う面白さというか奥深さ。それを感じてきました。

落語には喜怒哀楽全部が詰まってますし、全部の感情を揺さぶれます。それが一番の魅力やと思いますね。

…と言ってますけど、僕は落語を全く知らずに師匠に入門したんです(笑)。「探偵!ナイトスクープ」とかを見てて、ただただ「この桂ざこばというオッチャンは面白いなぁ」という感覚だけで入門しました。

テレビの話を聞いてると、なにやら弟子の話もしてはる。ということは、弟子を取っているのか。弟子になったら、この人とずっと一緒に居られるんやろうし、楽しいやろうな。そう思ったのが最初の思いやったんです。子供の頃からそんな思いがありました。

ネットで調べたらこのオッチャンよりまだ上の人がいるみたいやと。カツラコメアサ?あ、ベイチョウって読むんかと。しかも、この人、人間国宝なん?終始、そんな感じやったんです。

大学の時に弟子入りを本格的に考えるようになり、師匠のところに行きました。こんな感じで落語が好きというよりも師匠が好きやったんで、師匠が漫才師やったら漫才師になってたと思いますし、別の仕事やったらそれを目指してたと思います。

ただ、入って感じたのは当然ですけど落語の世界の厳しさでした。入る前は本当に「桂ざこばと友達になる」と思ってましたから。ゴルフの練習をしたり、日本酒を飲む練習したりして。友だちにも「桂ざこばさんに弟子入りするから、そうなったら一緒にゴルフもせなアカンしな」と話してましたしね。

ただ、当然師匠と友達として遊びに行くことなんてないですし、師匠がテレビ局でスタッフさんたちから挨拶をされて「おいっす!」と手を挙げているのをマネして、僕も「おいっす!」とやったら「お前は頭下げぇ!」と至極真っ当な注意も受けました(笑)。

僕の考えが甘すぎたので、当然あるべき厳しさには直面したんですけど、実際に入って感じたのは桂ざこばがもっと好きになったという思いでした。

テレビで見たらいつも怒ってるのに、こんなに気を遣う人なんやと。周りを見て、常に空気を読んでらっしゃる。さらに、落語を初めて見て、こんなに面白いんやと。その中で毎日師匠のことが好きになっていったんですよね。

最初、弟子入り志願で師匠の仕事場に行った時から「兄ちゃん、どこから来たんや?これ、交通費や」と1万円くれたんです。こんな簡単に1万円くれる人いるんやと…。最初から心奪われてはいたんですけどね(笑)。

実際に中に入ってから、つくづく本当に良い人を好きになったなと思います。

修業中は毎日怒られてましたし、失敗も数えきれないほどしていた弟子でしたけど、それでもずっと受け止めてくれた。僕の失敗で、僕のために頭も下げてくれた。

ホンマにね、師匠のことが好きになり過ぎて「これは毎日迷惑をかけてるし、なんとかしてちょっとでも役立つようなことをせなアカンな」とさすがに思ってたんです。

そんな中、楽屋で師匠からいきなり言われたんです。

「お前、勘違いしてるやろ。オレの役に立とうとか、オレの用事をうまいことこなそうとか思ってるやろ。そんなんちゃうねん。お前がオモロイ落語をしてくれたり、売れてくれたら一番うれしいんやから、それを頑張れや」

その言葉が深く突き刺さったというか、心の底から頑張らなあかんと思いました。

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これはね、僕なんかが言うのは本当にアレですけど、落語家って落語会がコンスタントにあったりもするので、落語をしっかりとやっていればご飯は食べられるんです。

逆に言うと、そこで暮らしていけるので、わざわざテレビに出て何かを目指すということを求めなくてもやってはいける。落語だけに邁進するのももちろん尊いことですし、いろいろな要素があいまって、外に出ていきにくくなるのも現実としてあると思うんです。

でも、せっかく師匠に弟子にしてもらって、師匠からあの言葉ももらった。となると、なんとか苦しいことにもチャレンジして、結果を残したい。「R-1ぐらんぷり」に出場していたのもその一つですし、何とか落語プラスアルファを作らないといけないなと。

もし、師匠の弟子じゃなかったら、ただただ落語をして、飯食って、酒飲んで「楽しいなぁ」と暮らしていたと思います。重ねて言いますけど、それが悪いわけではない。でも、師匠の弟子になったからには、それ以外の何かをしないと。そう思っているんです。

落語で賞をとる。独演会にお客さんがたくさん来てくださる。それも本当に大切なことですし、何とか結果を残したい。そうなったら喜んでくれはると思いますし。

ただ、師匠もテレビがお好きで、この前も僕が出してもらっているNHKの番組があるんですけど、師匠と病院に行った時に待合室のテレビにその番組が流れてたんです。

僕が映る度に「お前、映っとるぞ!」とすごく喜んでくれて。こちらが恥ずかしいくらい大きな声で。落語を頑張るのは当たり前なので、そうやってメディアでも活躍できるように、そして、師匠に喜んでもらえるようにしたいと思っています。

よく師匠が言うのが(一番弟子の)桂塩鯛師匠の話でして。「昔、あいつが給料明細を持ってきて『これだけ稼げるようになりました』と言ってオレに100万円くれたことがあったんや」と。恐らく、師匠は純粋にうれしかった話としておっしゃってるとは思うんですけど、少なくとも、3回は聞いてるんですよね…。となったら、これは僕もせなアカンねんやろうなと(笑)。

もちろん、正味の話、お金云々なんて師匠は求めてらっしゃらないですけど、そこまでなりましたということはお見せしたいので、なんとかこれができることを第一目標として頑張りたいと思っています。

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■桂あおば(かつら・あおば)
1988年1月12日生まれ。兵庫県出身。本名・古本迅(ふるもと・しゅん)。大学を卒業し、2010年に桂ざこばに入門。11年に初舞台を踏む。15年まで米朝事務所に所属。その後、吉本興業に移籍する。イケメン若手噺家として雑誌「an・an」「AneCan」などで取り上げられる。新人お笑い尼崎大賞「落語の部」優秀賞。「R-1グランプリ2021」準々決勝進出。天満天神繁昌亭、COOL JAPAN PARK OSAKA、朝日生命ホールなど大阪の各地の会場で行われる落語会が一律1000円で見られる催し「第二回大阪落語祭」(11月28日~12月20日)にも出演する。


執筆者プロフィール
中西 正男(なかにし まさお)

1974年生まれ。大阪府枚方市出身。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚などを大阪を拠点に取材。桂米朝師匠に、スポーツ新聞の記者として異例のインタビューを行い、話題に。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、テレビ・ラジオなどにも活動の幅を広げる。現在、朝日放送テレビ「おはよう朝日です」、読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」などにレギュラー出演。また、Yahoo!、朝日新聞、AERA.dotなどで連載中。

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