マイケル・サンデルVS竹中平蔵、正義はどっちだ?「世の中の正義について考えよう」

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マイケル・サンデルVS竹中平蔵、正義はどっちだ?「世の中の正義について考えよう」

正義SP!マイケル・サンデル竹中平蔵(全編公開)【そこまで言って委員会NP|2021年9月26日放送】

ハーバード大学の教授マイケル・サンデルの書籍が、次々にベストセラーになっている。彼が問うのは、これからの「正義」だ。一方、自民党政権の政策ブレーンを務めてきた竹中平蔵氏。こちらも何かと話題にされ、その発言がネットで賛否を巻き起こす。

9月26日の「そこまで言って委員会NP」では、このマイケル・サンデルの「正義」を題材に竹中平蔵氏を迎えて論客たちが激論。各議論の入り口でサンデルの論を紹介し、竹中氏の論を対比させた。須田慎一郎氏が「サンデルが正義、竹中さんが不正義みたいでしたね」とつっこむと、竹中氏は「今日の企画、全面的に私は反対です」と応戦し笑いをとる。ここでは様々なテーマの議論から竹中氏の発言をピックアップしてみよう。

まず最初は、自民党総裁選。そもそも総裁選に正義はあるのかを番組が問いかける。竹中氏は「総裁選には正当性がない」とキッパリ。
「日本は議院内閣制、これはイギリスから輸入した。イギリスでは選挙で国民に支持されなかったらトップが変わるので総裁選はない。日本はかつて中選挙区制で自民党一党独裁、選挙をやれば必ず勝つとわかっていたから総裁選をやらなければならなかった。いまは小選挙区制になって理屈の上では政権交代があるはずで、総裁選をやる正当性はない。」
なるほど、と説得力ある解説だ。
これに議長の黒木千晶アナが
「竹中さんは新首相のブレーンを狙ってるんですか?」意地悪くつっこむが、竹中氏は
「政治家とともにブレーンも世代交代しないといけない。いつまでも私たちの世代がやってちゃダメ。」とさらりとかわす。
そこへ山口真由氏が「竹中さん降りるの? 」とたたみかける。
「私は今何もやってないから。私がもしブレーンだったら菅内閣はもっと続いてますよ。」と切り返して一同爆笑となった。

次のテーマは、能力主義。サンデルは、能力主義がもたらす差別がエリートに対するポピュリストの反乱をもたらし、トランプ政権が誕生したと説いている。
番組からの「能力がなくてもハーバード大や東大に入れるようにすべきか」の問いかけに竹中氏は「○」と回答。日本は能力主義ではないと、こう論じた。
「ハーバード大学の入試では、医学部に入ろうと思ったら、医学に志があることを示すために、休みの日に病院でボランティアをしないと入れない。日本では一日か二日の試験で安上がりな選別しかしていない。」
さらに「日本は学歴社会じゃない。Ph.D.(博士号)を持ってる人が全然評価されない。面倒な入試をクリアしたかどうかだけが評価の対象だ。能力主義ではなく、入試歴やコネが物を言う。」と付け加えた。

次のテーマは、金持ちと貧しい人との不平等。サンデルは、「あらゆるものが商品となってしまったせいで、お金の重要性が増し、不平等の刺すような痛みがいっそうひどくなった。」と書いている。
先進国のブースター接種も、貧しい途上国から見ると不平等ではないか。そう番組が問うと、竹中氏はブースター接種に賛成と回答。
「ワクチン接種もリスクよりリターンが大きそうだからやってみた。先進国の方が移動しがちなので途上国にも影響が及ぶ。また先進国が高い値段で買えば製薬会社は設備投資ができて生産能力が上がる。」と述べた。
田嶋陽子氏も賛成だったが、番組の政策秘書・野村明大アナが「竹中さんと意見一致ですね。」とつっこむと
「しょうがないよ、いろんなところで一致するんだよ人間は。でも竹田さんと一緒になって嬉しいとは言わないけど。」と同じく賛成した竹田恒泰氏をディスってきた。

次にサンデルによる究極の「正義」についての問いかけを議論。「5人を救うために1人を犠牲にすべきか」の問いについて竹中氏はこう述べる。
「サンデルは究極の質問が好きだが、普遍的に広げて考えるべき。5人の死にかけた人、1人のお金持ちとした時、1人から税金をたくさん取って5人に配ったら1人を犠牲にしていることになる。そういうことはほとんどの国で行われている再分配だ。」
これを聞いた黒木アナが
「サンデルの本を読んでいるとわけわかんないことばかり言ってるので竹中さんの方がいい人に見えてくる」と竹中氏を褒めると
「今日は番組をこの辺で終えるといい」と竹中氏がほくそ笑む。

正義をテーマに議論してきた番組の最後、黒木アナが竹中氏にこう聞いた。
「竹中さんにとっての正義って何ですか?」
「自由が守られているかどうか。自分が自由であるために他人の自由の阻害は許されない。そのために社会の調和やシステムが必要になる。」ときれいに答えた竹中氏。
これに竹中氏を散々いじってきた須田慎一郎氏が「竹中さんの話はなるほどなあ、って思うんだけど、後味が胡散臭いのはなぜだろうねえ」とトドメのツッコミを入れると。
「胡散臭い人が聞くと、そう聞こえるんです。」と竹中氏はうまく切り返して番組が終わった。

何かと毀誉褒貶の激しい竹中平蔵氏。その論は正義か、それとも胡散臭いのか?あなたの判定はどっち?

【文:境 治】

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