様々な愛のカタチに触れられる珠玉の恋愛映画 5選

「恋」や「愛」に明確な形がないように、「恋愛映画」と一言で括っても、そのタイプは様々。清らかな純愛もあれば、背徳的な偏愛もあり、胸打たれる感動的な恋模様もあれば、胸締め付けられる落胆的な恋模様もある。人の数だけ、映画の数だけ、ドラマがある。

今回は動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信中の映画の中から、私、映画アドバイザーのミヤザキタケルが様々な愛のカタチに触れることができる作品をご紹介。多種多様な恋模様を描く5本の作品の中に、あなたの心に響く1本があることを祈っています。

◆『愛の渦』(2014年)

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非日常の中で見え隠れする人間の本性と欲望と淡い恋

乱交パーティのために集まった見ず知らずの男女が過ごす一夜を描くこの作品を、「愛」であったり「恋愛映画」と呼ぶのにはいささか疑問を感じるかもしれないが、愛を求め、愛に飢え、愛に確信を持てない者たちが辿り着いた一つの場所、一つの境地、一つの通過点と捉えることができれば、何一つ疑問を抱くことはないだろう。

「愛」を欲するが故に生じる渦、その渦から抜け出せずにいる者たちの歪で繊細な葛藤は、きっとあなたの心をも渦の中へと引きずり込んでしまうに違いない。題材的に嫌悪感を抱いてしまう人も中にはいると思うが、僅かでもそそられるものがあるのなら、「愛」に対して足踏みしている自覚があるのなら、勇気を出して作品世界へと飛び込んでみて頂きたい。知らない世界を知ることができる喜びを得られるのはもちろんのこと、登場人物たちのむきだしの心や身体から、何かしら得られるものがあるはずだ。

原作は、佐藤健主演の『何者』(2016年)や、松坂桃李主演の『娼年』(2018年)など、数々の話題作を手掛ける鬼才・三浦大輔監督が主宰する劇団「ポツドール」の同名舞台劇であり、第50回岸田國士戯曲賞受賞をはじめ、2度に渡る海外公演も行われた折り紙付きの名作舞台。本編123分の中で服を着ているシーンがたったの18分30秒という異色の世界観ながらも、池松壮亮など演技力に長けた俳優陣が集い、非日常的にも思える設定に圧倒的なリアリティと説得力をもたらしている。また、当時は無名に等しかった門脇麦をヒロインに起用しており、彼女にとって現在の地位を築くための礎になった作品であることは言うまでもないだろう。

生きていれば、恋をすれば、誰もが通ることになるであろう「性」のあれこれ。であるにも関わらず、「性」に関して声を大にするのはどこか気恥ずかしく後ろめたい。何かしらの偏見であったり、触れてはならないものといった誤った認識はいつの時代においても付き物だが、実際問題、街中や会社や学校など、公共の場では話しづらいのが現実。不用意に口にでも出そうものなら、変質者扱いされることだってあるだろう。

しかし、それらのことを考えない人などいやしない。常日頃考えているかどうかはさておき、人間である以上、どこまでいっても性欲は付き纏う。異性と関わる上で避けては通れないし、本能的に考えずにもいられない。そんなセンシティブな題材を扱っているため、色物扱いされがちな本作であるが、いざ目にしてしまえば何ら不思議なことはない。当たり前のことを描いているのだから。むしろ、この題材を人間ドラマとして「普通」に描けてしまっていることがとんでもない。

描かれていく本質はあくまでも"人"であり、"エロ"や"SEX"ではない。"エロ"や"SEX"は様々な状況を生み出していくためのキッカケでしかなく、次第に露わになっていく男女の本音、嫉妬、欲望、恋心などの類いが、人の滑稽さを、シンプルさを、物事を複雑にしてしまっているのは自分自身であるのだということを理解させてくれる。

本来SEXへと至る過程には、恋愛関係であったり、多くを曝け出し合えるだけの信頼関係が必要不可欠。その多くを金を用いることですっ飛ばして簡略化したものが風俗であり、登場人物たちはその場と機会を得て行為へと至るわけだが、見ず知らずの他人と秒で身体を重ね合わせられるはずもなく、そこには必然的に言葉を介した交流が発生する。ことが始まるまでの探り合い、駆け引き、絶妙な緊張感。ことが始まってからも続く探り合い、駆け引き、絶妙な高揚感。マンションの一室で繰り広げられていく人と人との関わりの中には、僕たちが日常的に行っている人間の営みが詰まっている。

だからこそ、乱交パーティに参加した経験のない人であろうとも、身に覚えのある感情の揺らぎ、人それぞれに抱えるコンプレックスの片鱗、どんな集まりの中でも生じてしまうヒエラルキーの格差などを通して、起きていく出来事の一つひとつを自分事として捉えることができてしまう。

ニート、大学生、サラリーマン、保育士、フリーター、OL、工員、常連客など、様々な年齢・職業・事情を抱えた登場人物たちがいるため、自らを重ね合わせることのできる人物だって一人くらいはいるかもしれない。現実において乱交パーティに参加することなどないと思うが、映し出される登場人物たちは、その心模様や葛藤は、僕たちが抱くものと何一つ変わらない。目にすることになるのは、隣り合わせにある人間の姿である。

性=特別なものという概念をも吹き飛ばすだけの濃密で本質的な人間ドラマを宿した本作は、自分自身を見つめ直し、愛とは何かを考え直す良きキッカケを与えてくれると思います。躊躇する必要はありません!安心してご覧ください。

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【Paravi映画祭り 特集ページ】https://www.paravi.jp/static/cp/eiga/

『愛の渦』(C)2014「映画 愛の渦」製作委員会
『青空エール』(C)2016 映画「青空エール」製作委員会 (C)河原和音/集英社
『オーバー・フェンス』(C)2016「オーバー・フェンス」製作委員会
『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会
『箱入り息子の恋』(C)2013「箱入り息子の恋」製作委員会

(文:映画アドバイザー・ミヤザキ タケル)

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1986年、山田洋次監督の映画『キネマの天地』のヒロインに抜てきされ、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ多くの映画賞を受賞し、一躍注目を集めた有森也実さん。 1991年には伝説のドラマ『東京ラブストーリー』(フジテレビ系

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