楽駆、“坂元裕二作品”に影響「行き場のない人たちが生きる姿に心打たれる」【連載PERSON vol.7】

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON~人生を変えたテレビ番組」vol.7は、6月19日からRakuten TVやビデオマーケットで配信されている『Life 線上の僕ら』に出演する楽駆(らいく)さん。

楽駆さんは、2017年、現在所属している「オフィス作」主催ワークショップオーディションを見事勝ち抜き、俳優活動をスタート。初めての仕事として決まったのが、映画『最初の晩餐』。再婚同士の二つの家族が、食卓を囲み徐々に打ち解けながら、“一つの家族”になっていく様子が描かれる。永瀬正敏さん、斉藤由貴さんら豪華共演者と肩を並べ、その家族の一員を演じた楽駆さん。一作目から、その空間にあまりに自然に溶け込み、「家族とは何か?」という濃いテーマを掲げる作品の中で、確かな演技力をもって思春期の青年を見事に演じ、「第34回高崎映画祭」では、最優秀新人男優賞を受賞した。

その他にも、映画『地獄少女』『女の機嫌の直し方』、また今年1月期に放送されたドラマ『駐在刑事 Season2』(テレビ東京系)第1話では、意図せず人を殺めてしまう結婚を控えた好青年を演じたのが記憶に新しい。

そして、新作『Life 線上の僕ら』で、楽駆さんは普通の高校生・西夕希役で出演。白洲迅さん演じる高校生・伊東晃とあることをきっかけに出会い、やがて恋の対象として惹かれていく。先に掲載したインタビューでは、ドラマに対する思い、初日からキスシーンに挑んだ時のエピソードなどを語ってもらった。

「次にどんな作品に出演して、どんな役を演じるんだろう?」という気持ちにさせる楽駆さん。彼はどんな作品を好み、影響を受け、そしてどんな思いを抱きながら作品に臨んでいるのか伺いました。

――『Life 線上の僕ら』は、学生時代から描かれますが、楽駆さん自身はどんな学生時代を過ごされましたか?

サッカーばっかりしていました。もし戻れるならサッカー以外をやりたいですね。サッカーをしてなかったら、高校入学とともに上京して役者をやるか、もしくは、文化祭のときとか楽しそうなのでバンドとか、スポーツ以外のもので、学生のときにしかできないことをしたいです。

――きっと学生時代はモテましたよね?

いやいや、全然そんなことないですよ!(笑)。モテ期は、小学生時代がピークです(笑)。

――好きなタイプはどうでしょう?

「声」ですね。特徴がある声ということではなくて、僕の好きな声があって。それは自分でもどう表現していいか分からないんですが、僕にとって心地良い声があるんです。“良い声”が良いというわけではなくて、僕自身に合う声が好きですね。

――内面的には?

理想とタイプって結局違う気がするんですよね。理想はこういう人であってほしいけど、好きになった人ってそうかと言われると違う部分がありますし……。ですが、物事をちゃんと言ってくれる人が良いですね。嘘をつかない人がいいです。

――役者を志したきっかけは?

上京するまでは大分に住んでいたんですが、中学3年生のときに、父と知り合いの映画監督の塩屋俊さんが大分にいらっしゃって、1日だけワークショップを開催されたんです。それで、父親から「行ってみろ」と言われて、行ったのが最初のきっかけです。もともと家族で『金曜ロードSHOW!』をずっと見ていたこともあって、なんとなく「お芝居っていいな」と思っていたんです。でも、高校時代はサッカーを頑張ると決めていたので、そのときはサッカーを優先しました。もしそこで優先していなかったら、違う未来もあったのかもしれないですし、逆に今がなかったかもしれないです。

――では今、そのときに塩屋さんや演技に出会ってよかったと感じてらっしゃるんですね。

思います!! あと上京してすぐは、お芝居の学校に通っていたんですが、最初はまったく思う通りにできなかったので、それが悔しかったんです。これまで何をするにしても、こんなにできなかったことはないなと。それと、演技には正解がないとも言えるので、だから、悔しさもあるし、逆にお芝居に心惹かれるのかもしれません。

――それでは、これまでに影響を受けたというテレビ番組を教えてください。

ドラマだと、ここ最近のものだと坂元裕二さんが脚本を手掛けた『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』が好きで、いまだに全部録画しているのを見返したりしています。あとは『カルテット』も最高でしたし、『恋仲』も好きでした。バラエティもよく見ますよ!『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』とかよく見ていますね(笑)。ほかにも『ロンドンハーツ』『アメトーーク!』『テレビ千鳥』はめちゃくちゃ面白くて、最高です。

――坂元裕二さんの作品が好きな理由は?

自分が言葉にできなかった言葉や思いを、言葉にしてくれるところです。あのとき、こう思っていたのに、「何と言えばいいか分からない」「どういう思いか分からない」ということがあるんですが「あ、これだ!」というセリフが出てくるんです。坂元さんの作品は、別に悪い人というわけでもないし、良い人たちなんだけど、どうしようもない、行き場のない人たちを描いていて。どうにかこうにかもがいて生きているという人物が登場する作品が多くて、心打たれるんです。

――楽駆さんが良いなと思う作品を「見てみたい」と思うフックとなるものはなんでしょう?

尊敬する監督や役者さんが出ているというのもフックになりますが、予告を見て「面白そう」と決めていますね。『岬の兄弟』という映画は予告を観て気になって。そんなに多い上映館数でもなかったと思うんですが、予告をパッと見たときに、「観てみたい!」と思って観ました。

――好きだと思う作品の傾向としては、社会派な作品が多いんでしょうか?

そうかもしれないです。ファンタジーな作品も好きなんですが、どちらかというと社会派な作品が好き……、というか“観ちゃう”んです。現実を突きつけてくるような作品を多く観ていますね。

――この業界で、影響を受けた方はいらっしゃいますか?

『最初の晩餐』で共演した永瀬正敏さんです。多くは語らないんですが、背中で色々なことを教えてくださって、尊敬というか、初めて「こんな人になりたい」と思った方です。なので、永瀬さんとまた共演できるように、というのも1つの目標です。

――役者をするにあたって大切にしていることを教えてください。

私生活であまり嘘をつかないようにしています。人を幸せにする嘘は良いのかもしれませんが、基本的にはあまり嘘はつかないように生きようと思っています。役者をするにあたっても、ポジティブ・ネガティブな、色々な感情が演技に繋がりますし、私生活で嘘をついてしまうと、芝居でも嘘をついてしまうのかなと。あまり頑張って嘘はつかずに、素直に生きていこうと思っています。

――現時点で、役者という仕事を通して実現したい 、「誰かを喜ばせたい」といった与える側でなく、受け取る側としての“自分自身の夢”は?

役者のお仕事は、もちろん自分もやっていて楽しいというのもあるんですが、家族や周りの人が喜んでくれるからという“与える側の目標”でもあって。ですが、受け取る側としての夢…… “愛”とかでしょうか? 違うかな? 難しいですね(笑)。ですが、目標は、「『カンヌ国際映画祭』に行く!」です。頑張ります!

撮影:勝浦阿津希
スタイリスト:八木啓紀
ヘアメイク:中村兼也

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