竹財輝之助、演じた“クズ”翔太は分身!?「尊敬している部分もあるし、誰よりも理解している」『東京男子図鑑』インタビュー

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竹財輝之助さんが主演を務め、日中共同プロジェクトとして制作されたドラマ『東京男子図鑑』(カンテレ、毎週木曜24:25~)が、4月30日からスタートします(放送翌日の10時より、カンテレドーガ、TVerほかにて配信)。

本作は、主人公・佐東翔太が東京を舞台に、金と仕事と女に奮闘しながらサバイブしていく“東京男子”の成長と心理を描いた物語。2018年に主演したFODオリジナル連続ドラマ『ポルノグラファー』を機にアジアで大ブレイク中の竹財さんが、大学生から40代までの翔太を1人で演じていることも話題になっています。

テレビドガッチでは、Twitterで募集したファンの方からの質問を携え、竹財さんにインタビュー。ドラマの裏話はもちろん、熊本から上京したころのお話や、40歳という節目を迎えた今考える将来の展望まで、たっぷりと語っていただきました。

――作品の印象と、演じた感想を聞かせてください。

主人公の20年間を1人で演じられる機会はなかなかないですし、楽しそうだなっていうのが第一印象でした。多感な学生が社会人になって落ち着くまでを演じられるなんて、すごく贅沢だなと。実際に演じてみて、すごくおもしろかったです。今回も共演者に恵まれたなと思っていて、みんな引っ張ってくれるし、(役に対して)個性を持って現場に来てくれたし、会話をしていて楽しかったですね。

――とくに、どの世代を演じるのが難しかったですか?

一番大変だったのは、やっぱり大学生。友人役の坊主頭の方は、リアルに20歳そこそこなんですよ。「これは並ばせちゃダメだろ」と思いつつ(笑)、彼を参考にしながら演じた部分もあります。喋るテンポやトーンを変えたり、人の話を聞いてない感じを出してみたり(笑)。

――なるほど。なかでも大変だったシーンは?

僕は、いわゆる“クラブ”で踊り明かしたことがないので、クラブのシーンは大変でした。テストでは音を流してくれるんですけど、本番は無音の中で「踊ってくれ」と言われて、これはキツいぞって(笑)。あとは渋谷のシーン……センター街ではしゃぐ40歳(笑)。今回は自分の素に近いところで演じようと思っていたので、余計にしんどかったです。ただ、僕も(地元の)熊本のアーケードでは大騒ぎしていたし、結構翔太みたいな学生時代でしたよ。翔太以外のみんなは将来を考えてるけど、翔太は考えていない。僕にぴったりの役だなと思っていました。(完成した映像を見て)「コイツ40だろ!」って思いながら見てました(笑)。コスプレにもほどがあるんじゃないかなって。でも、自分の学生時代を思い出しながら演じたので、視聴者がどう見てくれるのか楽しみですね。

――SNSには「竹財さんと離れたイメージ」という声もありました。

いや、そのまんまですよ。翔太のことはクズだと思うけど、僕も自分のことをクズだと思っているので(笑)。翔太の気持ちはもちろんわかるし、尊敬している部分もあるし、誰よりも理解している。分身みたいなものですし、竹財をああいう人間だと思ってもらって全然かまいません(笑)。

――そうなんですね(笑)。翔太のセリフで好きなものはありますか?

「東京で軽く生きるために必死で努力してたんだよ、俺」というセリフ。翔太は努力しているところを一切見せていないので、彼の本音が出たことが嬉しかったですね。

――制作発表時、翔太は「本心がなかなか見えない」とコメントされていました。

そうなんですよ。字面通りに捉えられない脚本というか、「ありがとう」と言ってるけど、本当は「クソ野郎」と思ってるのかな? と思うようなセリフばっかりで。だから「めんどくせえなぁ」と思いながらも(笑)、すごく楽しかったですね。脚本に余白がある分、自分なりに翔太に対する理解を深めました。解釈の仕方がいっぱいあるので、相手の役者さんのイメージが僕のイメージとは違うことも多々あって。相手がどういう芝居でくるのかが楽しみでしたし、実際、それに助けられたことがたくさんありました。

――なかでも印象的だった共演者とのお芝居は?

山中崇さんが演じている先輩は、唯一、翔太が懐いている人かなと思っていました。山中さんは、僕が何をしても受けてくれるし、返してくれる。「うわっ、それは台本に書いてないだろ!」という突飛なことをやったりもするんですけどね(笑)。山中さんとのシーンはテンポがすごくいいんですよ。親しい感じが出ていると思うし、演じていておもしろかったです。

――翔太の挫折が描かれる場面もありますが、竹財さん自身はこれまでに挫折をどうやって乗り越えてきましたか?

乗り越えたというより、飲み込んだっていう感じ。胃袋は強いです(笑)。挫折とは思っていないけど、仕事が全然なくなった時もありますし、やめようと思ったことも何回もあります。でも、お芝居をしていると楽しいし、ご褒美があるんですよ。だからやめられないんですかね。

――翔太を演じて、ご自身の上京時を思い出しましたか?

僕は憧れを持って上京したわけじゃないので、翔太とはスタートが違います。でも、東京に来るのは意識が高い人ばかりなので、そこに「埋もれないように」とは思っていました。デビュー作が『仮面ライダー剣』なんですけど、当時はスタッフさんも含めて周りを全部敵だと思っていたんです。その頃はだいぶ尖っていて、それをずっと持ち続けたのが翔太なのかなと。僕も負けたくないっていうのが一番強かったし、どうせ田舎者の集まりだろって思っていました(笑)。

――そんな風に尖っていた竹財さんが、挫折を飲み込むところまでトゲが削がれたわけですよね。

この世界のことがわかって“自分のお芝居がどうか”が客観的に見えてくると、尖っていたことが恥ずかしくなってくるんですよ。

――今はもうツルツルですか?

ツルツルどころか、全部削がれてヘコんでいるくらいです(笑)。

――(笑)。トゲが抜けるきっかけになったことはありますか?

映画『蟹工船』をやった時に、滝藤(賢一)さんに出会ったのはすごく大きかったですね。いろいろな年代の男だらけの撮影で、現場に入る前は「どうにかして前に出てやろう」と思っていたんです。でも、お芝居を間近で見ていて有無を言わさず負けた感があった。もちろん細かいきっかけはいっぱいあるけど、「恥ずかしいな、何やってんだ俺」と感じたのは、そこが一番大きいかな。

――そのように感じたことが、俳優を続ける原動力や転機にもなったということですか?

滝藤さんもそうですが、(主演の)松田龍平さんに「こんな芝居する人がいるんだ」と初めて見とれたんですよ。それが悔しかったし、こういうことができる人がいるんだと知った現場でした。見とれちゃった時点で、芝居を忘れちゃっている。それまで集中力を欠かされる経験がなかったので、衝撃でした。役者として一番の転機は『仮面ライダー剣』ではあるけど、役者を始めてからの転機といったら『蟹工船』。やれるならもう1回やりたい現場です。

――そんな竹財さんが思う、東京の魅力と怖いところは?

チャンスが転がってるし、意識が高い人にはご褒美をくれるけど、流されてるだけの人には何も与えてくれない。光と影の印影が強い街ですかね。真っ黒のところもあるし、キラッキラなところもある。誘惑もいっぱいあるし、自分を保ってないと生きていけないところだと思います。

――その中で竹財さんは、どうご自身を保ってきたのでしょうか?

僕はもう、雲を見ながらフラフラと。長いものには巻かれつつ……。

――本当ですか? もう本音なのか嘘なのかわからなくなってきました(笑)。

あははは(笑)。でも好きなことをやっている以上、ナメたことはしたくないし、ナメた仕事はしてないつもりです。ちょっとでも気を休めると、すぐに埋もれちゃう世界ですから。だからこそ、楽しいんですけどね。

――40歳を迎えて、俳優としての今後の野望をお願いします。

地方に住みつつ、仕事をまとめてもらえるような大御所になること(笑)。柳葉(敏郎)さんが羨ましいです。僕らはお仕事をいただく側で、完全に受け身の立場。遠くからでも来てほしいと思ってもらえる、魅力ある役者になりたいですね。本音は、今すぐにでも東京を離れたい……でも僕なんかが離れたら、明日には全然仕事が来ないですから(笑)。まだまだ、東京でやっていきます。

(取材・文・撮影:勝浦阿津希)

ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
スタイリスト:大石裕介

衣裳協力
・サルトーレ 03‐5341‐4133・パラブーツ 03‐5766‐6688

◆ドラマ情報
タイトル:
ドラマ『東京男子図鑑』

放送日時:
4月30日(木)24時25分からカンテレにて放送スタート
以降、毎週木曜日24時25分より放送開始予定(全10回) 関西ローカル
※放送翌日午前10時より、カンテレドーガ、TVerほかにて配信有り

ストーリー:
あなたの目に映る東京は、どんな街ですか
これは、ある東京男子の20年間の物語。千葉県浦安の実家から都内の有名私立大学に通っていた翔太(竹財)は、恋人が年上の金持ち男と遊んでいることを知り、「女は結局、カネなんだ」と東京でのし上がることを誓う。一流商社に就職し、カネにも女にも不自由しない生活を手にした翔太。しかし、女遊びもせずに働く同期の小島(落合モトキ)との出世争いや、年収3000万円以上の男との結婚を望むみなみ(田中シェン)との恋愛を通して、少しずつ価値観が変わっていく。ベンチャー企業のCEOになっていた同級生・一馬(森岡龍)との再会によって人生が大きく変わった翔太は、部下として出会った瑠璃子(市川由衣)との付き合いを経て、東京で生きることの意味を見つめ直すことになる。
金と仕事と女に奮闘しながら年齢を重ね、翔太が辿り着いた場所とは……。

出演者:
竹財輝之助
市川由衣 落合モトキ 水間ロン 牧田哲也
花影香音 愛加あゆ 鎌滝えり 早織 田中シェン
瀧川英次 森岡龍/山中崇

原作:東京カレンダー「東京男子図鑑」(東京カレンダーWEBにて連載中)
監督:松本佳奈( 『デザイナー 渋井直人の休日』 ) 
脚本:秋山竜平(『流れ星』)
オープニング/エンディング曲:ちゃんみな「Call」/「アーカイブに保存した曲」(ワーナーミュージック・ジャパン)
プロデューサー:松本整(電通)張瞳(電通)張微菡(bilibili)松村尚(カンテレ)中間恒(ワタナベエンターテイメント)
制作:カンテレ
制作協力:ワタナベエンターテインメント
製作著作:「東京男子図鑑」製作委員会

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