つい先日最終回を迎えたばかりのドラマ『監獄のお姫さま』(TBS系)で、通称“先生”こと、元「自立と再生の女子刑務所」刑務官・若井ふたばを演じている女優・満島ひかり。満島といえば、ダンスユニット「Folder5」での活動後、女優業に進出し、数々の映画やドラマで高い演技力を披露し、いまや実力派女優としての地位を確立している。

「女優・満島ひかり」の名前を世に知らしめたのは、2009年に公開された『プライド』、『愛のむきだし』の2本の映画ではないだろうか。『プライド』は、一条ゆかりの人気コミックを、映画『デスノート』シリーズの金子修介監督が実写映画化した作品。満島はオペラ歌手を目指す貧乏な学生・緑川萌を演じたが、その演技には度肝を抜かれた。

萌は、プライドをかなぐり捨て、目的達成のためにはどんなことでもする女性。見るに堪えないようなエグイシーンでも、満島の迫力が、すべてを凌駕する。ある意味トラウマになりそうなほど強烈な爪痕をスクリーンに残したが、この『プライド』公開直後に、さらなる衝撃を与えることになる。園子温監督がメガホンをとった『愛のむきだし』だ。

この作品で満島は「ヨーコ」という個性的な役柄をエネルギッシュに演じた。持てる全ての引き出しを、文字通り“むきだし”にして挑んでいるかのような、この時はまだ洗練されていない「女優・満島ひかり」の野性的な迫力に圧倒される。キレキレのアクションあり、エロあり、もはや何でもありだが、けれんみのない大胆な演技が実にすがすがしい。ほかにも、映画『北のカナリアたち』(2012年)で撮影を務めた木村大作キャメラマンも「平然とカメラに背を向けて演技をするのには驚いた」と満島の大胆さを評価していた。

そんな映画女優ともいえる満島が連続ドラマ初主演を務めたのが、日本テレビで2013年に放送された『Woman』。脚本を坂元裕二が担当したオリジナル作品で、満島は、夫を事故で亡くしたシングルマザー小春を熱演。子どもたちのために必死で働きながらも、生活は困窮し、これでもかというぐらい災難が降りかかる展開に、当時は視聴者からさまざまな意見が飛び交った。その中でも「閉塞感があり見ていて辛い作品」という意見が多かったにもかかわらず、最終回は、初回視聴率から2.5%上げるという健闘を見せた。

重くて息苦しいという評価がありつつ、こうした数字の推移をたどるということは、作品に引き込まれている視聴者が多かったということだろう。その一翼を担っているのが、満島の演技だ。彼女自身、もちろん子どもはおらず、母親ではないのだが、子ども二人といるシーンの説得力はさすがと唸らされる。さらに満島だけではなく、小春の実母・紗千を演じた田中裕子、紗千の再婚相手の小林薫、小春の亡き夫役の小栗旬、その他にも二階堂ふみや臼田あさ美など、演技派俳優たちが重厚な芝居を見せており、キャラクターに感情移入しやすくなっている。

テレビドラマで初主演を果たしたことにより、映画ファンばかりではなく、テレビの視聴者にも実力派女優として広く認識されるようになった満島。その後、宮藤官九郎が脚本を手がけた『ごめんね青春!』(TBS系、2014年)、黒柳徹子を演じた『トットてれび』(NHK、2016年)、再び坂元の脚本で主要人物を担った『カルテット』(TBS系、2017年)などでも、女優としての引き出しの多さを存分に披露した。

2017年の映画賞の先陣を切って行われたTAMA映画賞では、『海辺の生と死』、『愚行録』で最優秀女優賞を受賞するなど、さらに演技に磨きがかかっている満島。今後も彼女の作品からは目が離せない。

(文・磯部正和)

この記事のライター

磯部正和

雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

菅田将暉、有村架純、神木隆之介、仲野太賀、古川琴音が出演する土曜ドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系、毎週土曜22:00~)の最終話が、6月19日に放送。解散ライブを経て、それぞれの道を歩き出したお笑いトリオ・マクベスの3人と中浜姉妹の姿に、インターネット上では感動のコメントが殺到した(以下、ネタバレが含まれます)。

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