民放連が違法アップロード撲滅キャンペーンでCM制作、記者会見詳細

公開: 更新:

日本民間放送連盟(以下、民放連)は記者会見を開き、インターネット上に権利者の許諾なくテレビ番組をアップロードし公開する、いわゆる“違法アップロード”の問題の認知を広めるため、「それ、違法です。~放送番組の違法配信撲滅キャンペーン~」を1月22日より開始することを発表。井上弘(民放連会長)、亀山千広(民放連知財委員長)、大多亮(民放連知財委員会コンテンツ特別部部長)がその狙いを語り、キャンペーンCMに出演する俳優の遠藤憲一がCM制作秘話を明かした。

まず、井上会長が「インターネット上に多くの番組動画が配信されています。大変便利で結構ですが、同時に無許諾のテレビ番組動画がアップロードされており頭の痛い状態です。テレビ番組は色々な権利が重なって出来ています。それが違法に使われてしまうと、権利者にリターンがないということになりますし、新たな作品をつくる元もなくなってしまうということになっていきます。そして、民放としてテレビがこれから先どのようにインターネットと付き合っていくのかを考えていますが、そういったことへの阻害にもなってきます」と、違法アップロードの問題点を話した。また、これまで違法アップロードについては、番組を制作したキー局や準キー局がそれぞれ違法動画を見つける度に「削除してほしい」と個別に対処してきたが、「民放連としてしっかりと対応し、視聴者、国民の皆様に、まずは放送番組を許諾なしにインターネットにアップロード-することは違法だということを理解していただきたい」と、本キャンペーンの狙いを話した。

続いて、亀山知財委員長が実施趣旨を説明。「簡単にテレビ番組を違法アップロードでき、それを閲覧されている現状において、気持ちを啓蒙しない限りこの行為はなくならないと思い、このキャンペーンを始めることにしました。本来は、各番組を制作したテレビ局に権利が帰属するので、当事者という意味ではそれぞれのテレビ局ですが、テレビ局のひとつひとつが異を唱えるよりは、共通の財産である民放連が代表としてキャンペーンを取り組んでいくべきだということで、今回のCM制作に至りました」と語り、1月22日15時以降から3月31日までの期間中、各局が100本以上を目安に放送することを発表。知財委員会としては比較的アップロードされやすい番組の近辺での放送が効果的だと考えているが、放送時間帯は限定されておらず各局の判断になる。また、3月31日以降も経過を見ながら継続的にキャンペーンを実施していく予定だという。

今回のスポットCMは遠藤憲一が刑事役で登場し、違法アップロードした犯人との取調室でのやり取りを描いたワンシチュエーションものとなっており、15秒のテレビ版を4パターン、1分前後のWEB版を6パターン制作。スポットCMが上映されると報道陣からも笑いが起こるユーモラスな内容となっている。制作を担当した大多は、「悪質な違法アップロードをしている人もいますが、軽い気持ちでライトユーザーがアップロードしているケースが非常に多いということで、そういった方への啓発を目的とした内容になっています」と紹介し、「わかりやすく、目立ち、そしてあまり重くならず、クスッとさせるというコンセプトのもと制作しました。親しみやすいものが出来たかなと思います。すべて台本がありますが、途中から遠藤さんのアドリブとなっています」と、CMの見どころを語った。

そして、遠藤憲一も登場し、今回のキャンペーンCMの撮影秘話や、違法アップロード撲滅の意義を俳優の視点からコメント。遠藤は「実はパソコンをやらないので、今回のオファーをいただいたときに“違法アップロードのことです”と言われても、アップロードって何? というところからはじまりました。そこで、現状の説明をされてなるほどと。過去に、インターネットで若いときの作品を見せてもらって喜んでいたことがあったのですが、そういうのが違法なんだと何となくわかって参加させてもらいました」とコメント。また、WEBバージョンはアドリブがたっぷり詰まったユーモア満載の内容となっており、撮影について「ちゃんと決まった終わりどころはあったのですが、カットが掛からなかったからいつもの癖で続けて喋り続けていたんです。そうしたら相手の方も喋り続けてくれて、監督が“これはWEBでいきましょう”と採用されました」と撮影の裏側を明かした。そして、「スポンサーあり、制作陣あり、出演者あり、再放送のスケジュールとかまで考えて、一生懸命作った物がひょいひょいと勝手に配信されては作り手も可哀想ですよね。俺も過去の出演作品を見せてくれた人は凄いなって思ったので、流す人の気持ちもわかります。でも、今は何でもかんでも良くなり過ぎているので、ここらでルールを作らないといけないなと、改めて思いました」と、違法アップロード撲滅の重要性を語った。

また、会見では井上、亀山、大多が参加する質疑応答が行われた。詳細は以下の通り。


――これまでの被害額は?

亀山:これが正しい数値かはわかりませんが、総務省が研究会の中で算出した参考値があり、これまでの積み重ねで被害総定額は480億円程度となっています。また、我々として何を被害とするかということですが、DVDなどパッケージになったときに販売が阻害されているのは間違いないです。また、ネタ見せ番組や歌番組でパーツを切り取ってアップロードされていることが多々あります。これはテレビ番組だけでなく、歌手、出演者のみなさまの損害も入ってきますので大きな問題だと思います。

――これまでも違法動画の削除要請は行われていると思いますが、効果があったのでしょうか?

亀山:削除はしてくれているのですが、毎日放送しているので、いくら削除してもどんどん新しい番組がアップロードされていてイタチゴッコになっています。まずは、その行為は違法なんだということを伝えるため、このキャンペーンを実施しました。

――衛星放送業界も著作権侵害対策のトライアルを発表していますが、民放連と衛星放送業界と合意があってこのタイミングで始まったのでしょうか?

亀山:合意はありません。当事局は各テレビ局ですが、個でやるよりも団体として訴えていくこと、違法であるということを訴えていくことがメディアとしての使命だと思いますので、そういう意味ではたまたま呼応したのだと思います。井上会長が去年末に申し上げたとおり、民放各局もインターネットに乗り出していこうとしています。各社無料の配信をはじめようとトライアルをしているわけですので、正規品に人を呼び込み、正規品と違法品とははっきりと区別していきたいという気持ちがあります。

――キャンペーンCMでも取り上げられていますが、再放送されないアニメやドラマなどへのニーズはどのように満たされるのでしょうか?

亀山:各社でトライアルをしていると思うので、まずはインフラが整うことが最優先で、今はオンエアしたものの見逃し配信ということになりますが、整い次第、過去のアーカイブも視野に入ってくると思います。

――無許諾のアップロードが違法だということへの認識は調査されたのでしょうか? また、本キャンペーンの効果測定はどのように行うのでしょうか?

大多:今回のキャンペーンのために大きな調査はしていませんが、違法だという意識なくアップロードしている人たちに訴求できるかが大事で、この2ヶ月半の放送で81.8%まで認知度が上がると計算しています。それでも足りないということであれば、第2弾、第3弾を実施し、効果を上げていきたいと考えています。

――このキャンペーンCMが違法アップロードされたらどうするのでしょうか?

亀山:これを面白がってアップロードされるようでは困るなと思っています。違法アップロードされそうな番組の近辺にこのCMを流して欲しいというのは、自分でアップロードしているのにこのCMが流れている違和感というのを、受け取る側にも持って貰いたいという思いもあります。

――昨年末のFC2動画の検挙の際、民放連も捜査に協力されたかと思いますが、今後の行政機関や権利団体との連携についてはどのように考えられているのでしょうか?

大多:我々だけでは出来ないことだと思いますので、知財の亀山委員長名で権利者団体、関係各所にお願いしたいと文面を届け、協力を仰いでおります。警察関係の方とも引き続きやっていくことになります。

――国外サイトで違法配信しているサイトをよく見かけますが、これに対しての働きかけはどのように行うのでしょうか?

大多:CODA(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構)も含めてかなりやっていますが、なかなか取り締まりきれないという現状があります。まずは国内でこういうことをやりまして、認知度が上がるなど結果が出てきたらやっていきたいと思いますが、今すぐに海外のこのサイトというのは考えていません。ですが、いずれその時は来ると思います。

亀山:補足しますと、現在、番組を海外に販売するときは配信権もクリアにした状態でやっています。このキャンペーンで無許諾のアップロードが違法であることの認知を深めていくと同時に、正規品が違法を凌駕していくという、この2段構えでやっていきたいと思っています。

PICK UP