森田望智、初主演ドラマ『あの子が生まれる…』で達成感も「もうやりたくないって思うくらい辛かった(笑)」

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森田望智
森田望智

『全裸監督』(2019年、Netflix)でヒロインの黒木香を体当たりで演じ、一躍、注目の若手女優の一人となった森田望智さん。フジテレビが運営する動画配信サービス「FOD」にて、7月17日24時から配信されているドラマ『あの子が生まれる…』(毎週金曜24:00~最新話配信)で初のドラマ主演に挑んでいます。

本作は、『リング』『らせん』シリーズで知られるジャパニーズホラーの巨匠・鈴木光司さんが書き下ろした新作ホラードラマ。郊外のとある病院“新生病院”を舞台に、地位や名誉、欲望と嫉妬、そして復讐心を持った病院を取り巻くキャラクターたちが、罪に罪を重ねていく姿、そして、その中で誕生する美しきモンスターが描かれます。

今回、主人公の看護師・今泉菜央を演じた森田さんに、本作の魅力、女優になったきっかけや演じることへの思いなどを伺いました。

――本作がドラマ初主演になりますが、最初にお話を聞いた時はどんな心境でしたか?

マネージャーさんから教えてもらった時は、すごくビックリして。主演ということで、責任感や身の引き締まる思いを感じ、頑張らないといけないなと。実は私、ホラーはすごく苦手で。ですが、これまでもホラー作品に出演することが多かったので、これも何かのご縁なのかなと思いました。

――『リング』や『らせん』といった鈴木さんの作品はご覧になっていましたか?

小学生の時に、初めて見たホラー作品が『リング』だったんです。ちょうど『リング』や『着信アリ』などのホラー作品がブームになっていた時で、強く印象に残っています。

――鈴木さんは脚本にも参加されています。脚本を初めて読んだときはどんな感想を持ちましたか?

すごく引き込まれました。あと、リアルなサスペンス部分とファンタジー部分、様々な要素が詰まっていたので、どういう映像になるんだろうという不思議な気持ちでした。

――今回、演じる菜央は普通の看護師ですが、過去にトラウマを抱えています。ホラー作品ということも踏まえて、演じるにあたり意識したことはありますか?

菜央は、封じ込めてきた過去の出来事から後ろめたさをずっと感じて生きている子。劇中では笑うことができず、すごく苦しい役で。しかも撮影中、実生活でも役を引きずってしまい、ずっと「苦しい」って言いながら過ごしていました(苦笑)。監督が、ホラー作品は見てる方がリアルに感じられないと怖くならず、どっかで嘘だと感じた瞬間に冷めてしまうとおっしゃっていて。怖いから叫ぶなど、表現をオーバーにやればいいわけでもないので、自分の気持ちに嘘をつかないこと、自分の心で感じたことをリアルに伝える表現の幅は特に気をつけました。

――第1話を拝見して、森田さんの感情を押し殺した表情が印象的でしたが、笑顔など感情を表に出せない演技は難しかったですか?

そうですね。セリフがそんなに多くない中でも、内面の感情はずっと動いている役だったので、それをどう表現するかは考えました。でも、役者として、こういう経験ができるのはありがたいこと。楽しさなど、思った通りに感情を出すのは簡単なので、今回、難しいことに挑戦できたことは財産です。あと、菜央は普通の人に見えて、どこか暗い部分を抱えていますが、それはみんなにあることだと思うので、視聴者の方は菜央に共感しやすいんじゃないかと思います。

――菜央を振り回す病院関係者を市川九團次さんや山下容莉枝さん、芦名星さん、羽場裕一さんらベテランが演じています。共演してみていかがでしたか?

皆さんの演技が力強くて、安心感がありました。今回、私は役柄的に受け身の演技が多くて。皆さんに演技面でいろいろ仕掛けて頂いて、それに純粋に反応していくスタイルだったので、皆さんについていくという感覚でした。

――共演者の方から何かアドバイスはありましたか?

芦名さんが、現場で監督から台本に書かれていないことを要求された時に、気持ちをパッと切り替えて対応されているのを拝見したんです。その時に「どうやってされているんですか?」と聞いたら、すごく丁寧に教えてくださったことがありました。芦名さんはすごく温かい方で、学ばせていただくことしかなかったです。

――物語のカギとなる謎の妊婦を演じるのは、同世代の小倉優香さん。小倉さんの不気味な表情にすごく恐怖心を煽られました。

小倉さんは、感情を込めないお芝居を意図的にされていました。ニヤッと笑うシーンも監督と口角の絶妙な角度をずっと相談されていて。人間っぽくないお芝居にすごく冷たさを感じて、小倉さんと対峙する時は、毎回人と話しているというよりは何か別のものと話してるような感覚になっていました。

――本当に怖かったです。そんな小倉さんとは撮影以外ではどのように過ごされたのですか?

普段の小倉さんは本当に可愛らしい女性。和やかで優しく、撮影の合間は楽しませていただきました。小倉さんだけでなく、現場はすごく温かく穏やかで。全く殺伐としてなく、怖くなかったです(笑)。

――『全裸監督』で注目されてからこの1年間、世間からの見られ方が変わってきたと思いますが、ご自身ではどう感じられていますか?

今の状況になったことで、『全裸監督』がものすごく大きな作品だったんだなって感じていて。演じている時はすごく必死だったので、当時は「終わった」っという感覚でしたが、すごく素晴らしい作品に長く関わらせていただいたんだと改めて実感しています。

――そもそも女優を目指したきっかけは?

小さい頃に撮影現場を見る機会が多くて、もともと照明さんやメイクさんになりたいって言っていたんです。「物作りの現場に入りたい」という憧れがあって。そんな時に今の事務所に声をかけてもらい、お芝居をしていく中で演じることが好きになりました。

――2011年にキャリアをスタートさせて9年が経ちますが、女優という仕事は自分にとってどんなものですか?

本当に難しいです。でも、人間の根本的な部分をずっと考え、表現する職業ってなかなかないじゃないですか。さまざまな人生や景色を知れ、普通に生きてたら絶対できないような経験がいろいろできる。自分の内面にいろいろな感情が蓄積されていく感じがこの職業ならではと感じていて、すごく素敵な職業だと思っています。

――憧れの女優さんはいらっしゃいますか?

蒼井優さん、安藤サクラさん、満島ひかりさん、松岡茉優さん、門脇麦さんが好きです。人間は陽の部分や陰の部分など、さまざまな面がありますが、皆さん、そういった人間の本質が垣間見えるようなお芝居をされていて、本当に素晴らしいなと思います。

――今後、どういった役に挑戦したいですか?

やったことのない役や難しい役はずっと挑戦し続けたいです。例えば、今回の共演者の皆さんの物語の中で何かを仕掛けていく役は、スキルがないとできない。今回の現場でも、小倉さんや芦名さんが演じられているのを見て、私もやりたいと思いながら見ていて(笑)。作品をかき乱していく自分から動いていくような役に挑戦したいですね。

――今回、主演という立場を経験したことで、女優として得たものはありましたか?

私の中で、主演は周りを先導していく“座長”というものに憧れがあるんですが、今回は共演者の皆さんに出来事を起こして頂いて、それを純粋に見ているという感覚に近かったので、流れに身を任せた気持ちで終わりました。でも、これまで明るい役が多く、菜央のような後ろめたさを持っているようなキャラクターは初めてで。もうやりたくないって思うくらい辛かったですけど(笑)、演じられた経験は大きいです。

――鈴木さんは本作について「読者の方も巻き込むホラー」と表現されています。改めて見どころをお願いします。

本作は、前半とその5年後が描かれる後半で雰囲気がガラッと変わることもあり、ずっと謎が続いていくので、ずっと気になって最後まで見ていただけると思います。一番の見どころは、共演者の皆さんのすごく個性的で迫力のあるお芝居。悲しみや嫉妬、憎悪など、人間の負の部分の感情がたくさん出てくるので、そういう面ですごく引き込まれ、人の怖さという、ホラーの怖さとはまた違ったものを感じられる新しいホラー作品になっていると思います。私の演じる菜央の視点を通して、共演者の皆さんの衝撃的なお芝居を純粋に怖がってください。

(取材・撮影:高山美穂)

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