石原さとみ、大切なことは「“人にどう思われるか”よりも“自分がどう動いたか”」『アンサング・シンデレラ』インタビュー

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石原さとみさん主演の木曜劇場『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系、毎週木曜22:00~※初回15分拡大)が、この春スタート。病院を舞台に、患者の薬の調剤、製剤を行う“病院薬剤師”たちの知られざる舞台裏を描きます。

本作で、1人でも多くの患者を救うべく奮闘する薬剤師・葵みどり役を演じる石原さんにインタビュー。本ドラマに込める熱い思い、そして、キャリアを重ねた現在の仕事観について聞きました。

――企画を聞いた時の印象は?

原作の漫画を読ませていただいたら本当におもしろくて、絶対にやりたいと心から思いました。薬剤師の仕事は、できて当たり前で、心のこもった「ありがとう」を言われることが少ないのではと感じたんです。ドラマを通じて薬剤師の仕事を知ってもらうことで、今までの「ありがとう」とは質が変わるんじゃないかなって。そういうドラマができたらいいなと、すごく希望が湧きましたね。

――役についてはいかがですか?

みどりの、薬の味や匂いに対するオタクぶりや、新しい薬についても勉強するような姿勢は、すごく好きです。私も深く知りたいという知識欲があるので、自分に似ていると思うところもあります。

――ドラマではキャリア8年目の薬剤師を演じます。役作りにおいて、どのように原作を踏襲しようと考えていますか?

薬剤師としての熱量や、患者さんに対する思いは原作通りに。その上で、すぐに一喜一憂するのではなく、周りを見る“冷静さ”や、勢いだけではない“人に寄り添う気持ち”を大切にしたいと思っています。原作では新人のみどりがキャリアを積んだら……ということも意識しつつ、オリジナルで描かれる幼少期のバックボーンがベースになるので、漫画とはまた違う展開になっていくのかなと思います。

――実際に、薬剤師のご友人がいるそうですね。

彼女は、「お医者さんと間違われないよう徹底している」と言っていて。「薬剤師だけのユニフォームがあったらいいな」という話を聞いていました。今回は薬剤師のスクラブを作るということで、同じスクラブでも術着や介護士さんと差別化できるように、生地選びから色、ポケットの位置、シルエットもみんなで決めさせていただいて、楽しかったです。薬剤部のみなさんが着てくれる日が来たら嬉しいですね。

――現役の薬剤師さんからも、ドラマに対する期待の声が上がっていますね。

ものすごい期待を感じています(笑)。だからこそ夢物語ではなく、現実をちゃんと伝えていきたいと思っています。問題提起もしたいし、答えが出ないとしても考える機会を作りたいです。そして、ネガティブな部分だけではなく、“ガッツポーズする時”や“安心する瞬間”も映せたらいいなと。薬剤師の方には、もしかしたら「ドラマだから」と思われる部分があるかもしれないけど、全体を見た時にみなさんが「明日も、この仕事に誇りを持ってがんばろう」と思ってくださる作品にしたいです。

あとは私の夢として、カルテが統一されて、カードを読み取るだけで、その人が飲んでいる薬や病歴がわかるシステムができたらいいなと思っていて。それが遠い未来だとしても、希望があふれるようなことをドラマの中でポロッと言ってみたいし、今はそうじゃないっていう事実も伝えたい。たとえドラマチックであったとしても、嘘ではないものを作りたいんです。

――みどりには、患者さんのためなら医師にもハッキリと意見を述べる強さがあります。彼女を突き動かすものは何だと思いますか?

「諦めない」ということですね。その薬がちゃんと効いているかは、患者さんをちゃんと見ていかないとわからない。そこが、みどりの得意な部分かもしれないし、薬剤師として大切にしているところだと思います。

――共演者の方々の印象はいかがですか?

身長、男女比、年齢、メガネ率を含めてバランスが取れていると思います(笑)。西野七瀬ちゃんとお仕事された方は、みんな口を揃えて「いい子」と言っていて。物事はハッキリと言う可愛い子で、撮影が楽しみになりました。桜井ユキさんはカッコいいお姉さん、井之脇海さんはのび太くんみたい(笑)。絶対に悪い人じゃないよねっていう、可愛らしいキャラクターですね。

――“アンサング”には“褒められない”という意味がありますが、人はどうしても見返りを求めがちな気がします。

薬剤師もそうですが、私自身の仕事も直接「ありがとう」と言われる機会は、あまりないんです。反響は、見ていただいた方の間接的な思いだったりするので、見返りよりも“自分がどうがんばったのか”“自分が何を感じたのか”“自分の心にどう向き合うか”ということの方が、大切だと思っています。

――そのモチベーションはどこから?

目的を定めています。“人を励ますことができる人になりたい”ということを、大げさではなく人生の目的としています。そこからの逆算で作品選びもさせていただいていますし、そこはブレないですね。長崎での被爆者の方との出会い(2008年)をきっかけに、人生の目的が定まったんです。だから今回の東京2020聖火リレーで、長崎県の聖火ランナーに選んでいただき、走ることが出来るのはとても感慨深いです。

――本作にも西野さん演じる後輩・くるみが登場しますが、石原さんご自身も、後輩を育てるポジションになってきているのではないでしょうか。

以前、ある女優の先輩が「ドラマが始まってしまえば、スタートラインは一緒。先輩・後輩は関係なくて、その作品を作り上げるという意味では対等」とおっしゃっていて、今の私自身、確かにそうだなと感じています。友達でも先輩・後輩でもなくて、同じ作品に向かう仲間という感覚は、この職業ならではの良さかもしれないですね。

――なるほど。とはいえ、年齢を重ねることで、周囲からの期待値は大きくなっていきますよね。プレッシャーも大きくなるのでは?

逆に、なくなっていっているかな。プレッシャーって、人からの見られ方を考えちゃうから生まれるものだと思うんです。きっと、「私はこれがやりたいからやる!」という気持ちが強ければ強いほど、“人にどう思われるか”よりも“自分がどう動いたか”という考えにつながると思います。そういう意味では、年齢を重ねるにつれて、どんどん楽になっている感じがしますね。

――そのように、強い気持ちが持てるようになったきっかけは?

『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系、2012年)をやる時に、マネージャーさんから「この作品をやりますか?」と初めて聞かれたんです。「“夏・小栗旬・ラブストーリー”で、やらないわけないじゃん!」と思いながらも(笑)、「やりたいです」と発言ができたことで責任になったし、自立にもなった。その作品をきっかけに、ファッションやメイクもドラマごとに自分で考えるようになって、それまで以上に「引き受けたからには、やりたい」という思いが強くなりました。

――お忙しい中でも、衣装やメイクに関わる。そこも責任のひとつとして?

それもありますが、25歳の頃から続けていることなので、物づくりに参加することが自分の中で当たり前になっているかもしれません。自分の意見や知識が、目に見えて形になっていくのは、やっぱり嬉しいですよね。

――最後に“アンサングヒーロー=縁の下の力持ち”にちなんで、石原さんを支えている縁の下の力持ちのような存在を教えてください。

私以外の人間、全員です(笑)。でも、特に親友達には本当に支えられていますね、帰る場所です。自分が呼吸できるというか、ニュートラルになれたり、自分のことを客観視してくれたり、寄り添ってくれたり、救ってくれたり。逆に、私が励ましたいと思うような環境や関係性は、本当にありがたいなと思います。“事後報告は事故”というのが、私たちの決まりなんです。だからリアルタイムで、実況中継のように連絡を取るようにしています(笑)。

(取材・文・撮影:勝浦阿津希)

メイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリング:外山由香里

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