桜井日奈子、主演ドラマ『ヤヌスの鏡』不良少女役でイメージぶち壊す「心の中に“別の人”が居てもいい」

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桜井日奈子
桜井日奈子

桜井日奈子さんが主演を務めるFODオリジナル連続ドラマ『ヤヌスの鏡』が、8月15日(木)24時から配信される。同ドラマで桜井さんは、厳格な家庭で育つ真面目な高校生・裕美(ヒロミ)と、凶悪な不良少女・ユミという2つの人格を持つ少女を演じます。

原作は「週刊セブンティーン」に連載されていた人気漫画。1985年に杉浦幸さん主演でドラマ化され、“ヤヌスごっこ”という遊びが生まれるなど大ブームを巻き起こした名作が、34年の時を経て再び実写化されます。二重人格、さらには“不良”という役どころに初挑戦した桜井さんに、撮影秘話と自身の二面性について語っていただきました。

――オファーが来たときの心境は?

こんなにもやりがいのある役をいただけるなんて嬉しいなと、ワクワクしました。でも、ユミは初めて挑戦するような役柄だったので、“内から滲み出る余裕”みたいなものをどれだけ表現できるのか、不安もありました。そんな中、自分なりに“強い女性”と考えて、パッと浮かんだのが菜々緒さんと沢尻エリカさん。見ている方を惹きつけられるようなキャラクターでありたいと思いながら、お2人の作品を見て参考にさせていただきました。

――34年ぶりの映像化ということに、プレッシャーはありましたか?

当時、折檻シーンを真似する“ヤヌスごっこ”が流行ったという話を聞いて、それだけ話題になるおもしろさがあったんだと思いました。ただ、前作を意識せずに“別の作品”として作りたいと聞いていたので、あえて1話しか見なかったんです。プレッシャーはありましたが、監督、スタッフ、共演者の方々を信じて、一緒に作っていけたらと思っていました。

――ヒロミとユミを演じてみて、いかがでしたか?

最初はヒロミの方がしっくりくる感覚があったのですが、ユミを演じているうちにどんどん楽しくなってきて(笑)。何もかも思い通りに手のひらで転がすような奔放さや開放感は、これまでに味わったことがなかったので、おもしろかったです。

――やはり気になるのは、国生さゆりさん演じる祖母・貴子による折檻シーンです。

ヒロミの人格が乖離してしまった原因の1つにお婆様の存在があるのですが、「これは二重人格になっちゃっても仕方ないよね」と思えるくらいに、しばかれています(笑)。そのおかげで心の底から泣くことができたので、目が腫れちゃって大変でした。折檻シーンの後は、ずっと目を冷やしていました(笑)。痛みも伴ったけれど、そうやって追い詰められていくヒロミを肌で感じたことが、ユミを演じる強さに繋がった気がします。

――演じ分けということで、意識したことは?

一番は“目”ですね。か弱いヒロミの純粋な目と、強い意志を持ったユミのキリッとした目。あとはユミを演じる時、強がっているようには見せたくなくて。腕を組むと無理に強がっているように見えてしまうので、ポケットに手を入れてみたり、立ち方に気をつけたりもしました。

――国生さんとの共演はいかがでしたか?

撮影前に、国生さんが(目をつむって)“精神統一”されているところを見てしまって……。撮影の前半は私もしっかりしなきゃと気を張っていたので、後半に入ってから気さくに写真を撮ってくださったのが、すごく嬉しかったです(笑)。折檻シーンの後に、ケガはないかと一番気にかけてくれたのも国生さんでしたし、常に「ありがとう」といろいろな方に伝えている姿が印象的で。私もこういう女優さんになりたいなと思いました。

――(ヒロミの実父・甲本一成を演じる)萩原聖人さんとも初共演でしたね。

大先輩なので緊張しましたが、ユミのメイクの時に「お前、胡散臭い占い師みたいだな」と言われて、一気に和みました(笑)。一度、萩原さんがパワーを使う場面の撮影前に、動きながらセリフを繰り返しているところをお見かけしたんです。本番に向けて、自分のテンションを保つ具体的なテクニックも学べた気がしますし、すごく勉強になる現場でした。

――新たな挑戦をしたことで、成長を感じる部分もあったのでは?

1人の役を演じる時でさえ心が揺れ動くのに、それが2人分ということでハードでした。でも、その疲れが心地いいなと感じる瞬間があって、ここから楽しいという感覚に繋がっていくのかなと思えたんです。もっともっとやれるような気がしたし、もっといろいろな世界を見てみたいと思うことができたので、そこはひとつの成長だなと思います。

――二重人格という役どころですが、桜井さん自身の二面性についても聞かせてください。

「意外とサバサバしてるんだね」と、よく言われます。“ふわふわ”したパブリックイメージがあるようですが、どちらかと言うと体育会系なので「うぃっす」と部活のノリで挨拶してみたり(笑)。でも、今回演じたユミは、良い意味でイメージをぶち壊せる役柄だと思います。実は映画『ういらぶ。』でご一緒した佐藤(祐市)監督からは「悪い女をやってみたらいいんじゃない?」と言われたことがあったんです。その時はピンと来ていなかったけど、ユミを演じて「楽しい」と感じる私のことを監督は見抜いていたのかなって(笑)。ユミという役柄との出会いをきっかけに、これからどんどん自分のフィールドを広げていきたいです。

――それでは、表現者としての自分と、普段の自分に相違や共通点はありますか?

グラビア撮影の時は、自分ではないもう1人の自分がほほえんだり、すましたりしているような感覚があります。プライベートでは笑顔が下手で、写真を撮ると「全部ピースじゃん」っていうタイプなので(笑)。でも、どんな人でも“いろいろな顔”を持っていると思うし、このドラマを通じてそれが当たり前なんだと気づきました。「こうでなきゃいけない」という固定観念に囚われて苦しくなっちゃうより、心の中に「いいんだよ」と言ってくれる“別の人”がいてもいい。自分を自由にしてもいいんだと、気づいてもらえる作品になったらいいなと思っています。

(撮影・文:勝浦阿津希)

<あらすじ>
ヒロミ(桜井)は、厳格な家庭に育ち、幼い頃から祖母の貴子(国生)に厳しく教育されてきた。特に異性との交友については厳しく、交際などもってのほか。しかし、ヒロミも普通の女子高生と同様に恋をし、ひそかに生徒会長の進東(白洲迅)に憧れていた。

ある時、進東の存在が貴子に知られ、激怒した貴子は納戸にヒロミを閉じ込めてしまう。その納戸で見つけた古い鏡台の引き出しの中には、口紅や香水、さらに母・由起子の破れた写真が……。動揺したヒロミは誤って香水を床に落としてしまう。すると、幼いヒロミが鏡台に映った自分に話しかけている姿を見て、過去の記憶がフラッシュバックし、遂には気を失う。気がつくとヒロミは全く違う人格のユミに入れ替わっていて……。

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