3月25日(月)放送のフジテレビ開局60周年特別企画『大奥 最終章』(フジテレビ系、20:00~)。本作で、徳川中興の祖と言われる8代将軍・徳川吉宗を陰ながら支える女性・久免(くめ)を演じるのが、フジテレビドラマ初主演を果たした女優の木村文乃さん。
これまで『大奥』シリーズと言えば、菅野美穂、仲間由紀恵、深田恭子、沢尻エリカなど、錚々たるメンバーたちが主演を務めてきた。しかも「最終章」というタイトルのとおり『大奥』の集大成とも言える作品になることは容易に想像できる。
怒りや憎悪、妬みが渦巻く「伏魔殿」と言われる大奥で、どんな物語が展開するのか――木村さんに話を聞いた。
――歴史ある『大奥』シリーズ、しかも「最終章」とタイトルがつく作品に主役で挑まれる率直なお気持ちは?
たまたまご縁をいただいて名前が真ん中にあるだけの話かなと。役柄も私自身も、大奥のなかに入れてもらうという部分が共通点だと思ったので、あまり主役という意識はないですね。それよりも、撮影に入ってから2週間後ぐらいたったとき(徳川吉宗役の)大沢たかおさんが合流されたんです。そのときはみんなが「殿が来た~」と色めき立っていました。大奥ってこんな感じなのかと感じられた瞬間でしたね。
――女性が多い現場はいかがですか?
確かに女性は多いのですが、2003年からやっているチームの方々なので、女性がワイワイというよりは、いい緊張感のなか、林徹監督を絶対的なリーダーとして、良い関係ができていると思います。
――林監督は絶対的なリーダー?
林監督は女性を美しく撮りたいという確固たる信念のある人。そのためには、カット割りもアングルも予定していたものを平気で変えられる方なんです。着物独特の見せ方も、林監督自らカメラの前にたって演技指導してくださいます。安心して思う存分演技に集中できる方です。
――久免という女性をどのように捉えて撮影に臨まれていますか? とても柔軟に立ち振る舞われる女性の印象があります。
久免さんは性格的にとても稀な人だと思います。嫌なことを排除しないで受け入れるんです。そこからなにが生まれるか、人生を楽しんでみましょうという人なんですよね。それは上様(吉宗)のお人柄もあったからだと思います。殿さま殿さましていなく、家族を大切にされる方だからこそ、久免もそういう考え方ができるようになったのかなと思います。
――木村さんと久免さんの似ていると感じる部分はありますか?
あまり似ている感じはしませんね(笑)。時代劇の経験も少なく、ましてや武家の女性ということもあり、所作や言動などあまりに違うところが多いですからね。
――大奥と言えば、衣装の豪華絢爛さも見どころの一つですよね。
総額1億円超なんですよね。私だけでも23ポーズあると聞いています。毎日頭と衣装を変えて、ファッションショーみたいです。吉宗は質素倹約を掲げている人なのですが、その妻が、こんなにも豪華な衣装でいいのかという笑い話もありますが、やはり大奥と言えば衣装の豪華さも大切なので「東映の底力見せてやろう!」と皆さんノリノリで楽しんでいます。
――木村さんは姫をやりたかったとお聞きしましたが。
実際やってみると大変ですね(笑)。衣装を汚してはいけないですし、扱いが……。それでも京都のスタッフさんは慣れているので、なるべくこちらに負担をかけないようにしてくださるんです。とても助けていただきながら撮影をしています。
――これまで『大奥』シリーズは、何作も続いていますが、どんな印象をお持ちでしたか?
やっぱり『大奥』と言えば、女同士のドロドロした争いが一番の見どころだと思います。なかでも火事のシーンはすごく印象に残っていて、今回は、本当に燃やしての撮影だったんです。やはり本物の火の迫力がすごく、60周年特別企画にふさわしい力強い絵になっていると思います。
――今回の『大奥』はホームドラマ感が強い印象があります。
誰がのし上がっていくとか、息子を将軍にするためにとかいうことではなく、女の世界ですが「家族がなによりも大切」ということを伝えようとしているドラマになっていると思います。
――とは言え、やはり女性同士のドロドロのバトルも見どころの一つなんですよね?
もちろん、そういう意識はあります。台本を読んでいて、久免は受けの印象が強いのですが、そればっかりだと大奥らしさがなくなってしまうので、シーンによっては相談させていただき、バチバチやり合う場面もあります(笑)。ちょっとやり過ぎかと思うところもあったようですが、林監督も「まあ、ええやろ」と言ってくださったので思い切りやりました(笑)。
――女同士のバトルというのはいかがですか?
私は逃げますね(笑)。久免も、自分から仕掛けていくタイプではなく、どちらかというと巻き込まれてしまう感じ。そこは私と似ているかもしれません。
私は、小池さんが(『大奥~華の乱~』で)演じていたお伝の方が好きだったので、嬉しかったです。保奈美さんは憧れの方でもあり(鈴木演じる)天英院さまとのシーンが、物語の肝になる部分でもあったので、すごく楽しみでした。保奈美さんの包容力に助けていただきました。
――人気シリーズの最終章、どんな部分を見て欲しいですか?
これまでの大奥は、開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまう面白さや、女性がのぼりつめていく痛快さ、その裏に隠れた母性などが見どころだったと思います。今回は、久免という女性の特性でもある、包み込むような人柄を軸にした物語が展開します。特にラストは、なにを伝えたかったのかが象徴的に描かれているシーンなので、楽しみにしていただきたいです。
(取材・文:磯部正和)