浦上晟周「女子メンバーの立ち振る舞いを常に意識」性同一性障害を抱える役への思いを明かす『さくらの親子丼2』

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真矢ミキが主演のドラマ『さくらの親子丼2』(東海テレビ・フジテレビ、毎週土曜23:40~)の第7話が、1月19日に放送される。

同ドラマは2017年に放送された『さくらの親子丼』の続編。「家族」「親子」という枠からはじき出されてしまった子どもたちが生活を余儀なくされる「子どもシェルター」を舞台に、シェルターの食事スタッフを務める九十九さくら(真矢)が、深刻な問題を抱える子どもたちの心を救うために再び立ち上がる。

第7話では、性同一性障害を抱え、家庭や学校に居場所がなくなり、子どもシェルター「ハチドリの家」に暮らす中里拓士(浦上晟周)が、次の生活の場所、生き方を探し、「ハチドリの家」から巣立っていく姿が描かれる。桃子(名取裕子)は入居者一人ひとりの進路を決めるべく面談し、さくらも同席する。一人ひとり様々な先への思いがある中、茜(柴田杏花)は結婚を望み、川端(柄本時生)を驚かせる。男性的に生きる事に違和感がある拓士は、新宿2丁目でダンサーを目指して働きたいという夢を桃子に語る。一方、香(塩野瑛久)は不審な行動を見せ、夜な夜な無断外出をするようになる――。

拓士を演じる浦上は、子役として『ハガネの女season2』(テレビ朝日系)などに出演。櫻井翔主演の『家族ゲーム』(フジテレビ系)では、優等生の慎一(神木隆之介)を兄に持ち、自身は学校でいじめを受け苦悩する茂之を熱演した。その後、2016年大河ドラマ『真田丸』で、主人公・真田信繁(堺雅人)の息子・大助役を演じ話題に。今年1月4日に放送された第30回フジテレビヤングシナリオ大賞・大賞受賞作『ココア』(フジテレビ系)にも出演するなど、現在、注目の若手俳優だ。

今回『さくらの親子丼2』では、性同一性障害を抱えるという難しい役に挑戦。浦上は、役に対してどんな思いを持っているのだろうか? 以下に、インタビューを紹介する。

――拓士は性別で悩む、デリケートな役ですね。

最初にLGBT監修の先生に話を伺い、拓士の心情がどんなものなのか教えてもらい、撮影に入りました。僕としては拓士を女の子のつもりで演じています。ありがたいことに「ハチドリの家」は、男子より女子のほうが多いので、「取り入れられるものは何でも取り入れたい!」と思い、女子メンバーの立ち振る舞いを常に意識しています。

――難役を演じるのはプレッシャーとやりがい、どちらが大きいですか?

役者としては、まずうれしいです。これまでも僕はなぜか、苦悩する役が多くて(笑)。家族のことだったり、学校のことだったり、悩みを抱えているような。拓士もその延長線にいる役といえば役ですけど、さらに上乗せされている部分が大きかったので、頑張りたいと思いました。

――先ほど、気持ちとして女の子を演じている、とのことでしたが、どんな役作りをしましたか?

男子は拓士と香だけなので、拓士役だと聞かされたときは衝撃でした。「えー! そうなんだ!!」と。じゃあ、女の子を演じるにはどうしたらいいんだろうと考えて、YouTubeでメイクやファッションのことを配信していて、女性から人気のあるユーチューバーさんたちの動画をとにかくチェックしたんです。それも男女問わず。女性は同性からどんな人が支持されているかわかるし、男性は異性の目で女の子のどんなところが可愛く見えるのか教えてくれるので。拓士は格好こそ男の子のままですが、心は“女子”。気持ちを込めて演じれば、ちゃんと女の子に見えるんじゃないかと思っています。

――では、女の子を演じる中、自分の中に何か変化はありましたか?

ありました! 現場で待機していたときなんですけど、どうやら足を揃えて座っていたようです。スタッフさんに「もう役に入っているの?」と聞かれ、無意識だったので自分でもビックリしました(笑)。

――ここまでの撮影を振り返って、印象に残っていることはどんなことですか?

拓士の実家って、そんな良い家庭環境じゃないと思うんです。拓士も実の父親のことを「バカオヤジ」と呼んでいたので。拓士も女の子でいようとするけれど、ふと“育ち”が出るはずです。ただ女の子らしくいようとすると上品な感じになってしまうので、その加減が難しいですね。食事のシーンのリハーサルで、親子丼をかき込んで食べてみたことがあります。それを見て監督さんが「そこまでいくと、拓士っぽくないかも」と言ったので、拓士は繊細に演じなくてはいけないんだな、と改めて思ったんです。

――浦上さんの演技を見ていると、セリフのないシーンでも眼差しから“強い意志”を感じます。

本当ですか!? そう言ってもらえるのはすごくうれしいです。目が印象的だと言ってもらえることもあって、僕は無口な役も多いんですけど、セリフが「……」のときは、眼差しで何かを表現したいといつも意識しているんです。

――浦上さんは『さくらの親子丼2』のどんなところに魅力を感じていますか?

あったかさです。僕は見終わったとき、温かな食事を食べたときのように満たされた気持ちになるんです。ストーリー的には、毎回救いがあるわけではないし、決して“ハッピーエンド”という言葉で収まる話ではありません。厳しい現実を突きつけられたとき、人は果たして受け入れられるのか、乗り越えられるのか、ということを問われている気さえします。子どもたちはみんな葛藤しているけれど、その姿も、それにさくらさんたち大人が助けようと頑張る姿もいきいきと描かれていて、すごく素敵な物語だと思います。

――この現場では、浦上さんの誕生日のお祝いもありましたね。

そういうことはないと思っていたので、ビックリしました。リハーサルの途中で、突然ケーキが出てきて、真矢さんをはじめ、現場の皆さんの暖かさに感動しました。すごく幸せでうれしかったです。

――現在19歳とのこと。役者として今後の目標は?

等身大の役も演じたいですし、キャラクターも善人から悪役まで幅広く挑戦したいです。これまでも役と向き合い、内面をじっくり考えて、掘り下げてきたつもりです。今回、拓士を演じて同じようなことで悩んでいる人の救いになるかもしれないと思ったんです。役者ってそういう仕事なのだと拓士という役に教えてもらえて、そういう意味でもこの役に出会えてよかったです。

――では、拓士の見どころは?

その憎めなさです(笑)。拓士は結構な毒舌ですけど、シェルターでも嫌われていません。そのキュートさと、一方でときどき見せる深刻な表情から拓士なりの悩みを伝えていきたいです。

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