杉本哲太、吉田羊、濱田岳『HERO』3検事スペシャル対談

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ひとつの映画としてももちろん楽しめる本作。しかし、テレビシリーズを知っていると、城西支部メンバーの関係性や、さまざまなシーンで垣間見えるシリーズの流れなど、さらに深く物語を楽しめるのも大きな魅力だ。今、改めてテレビシリーズのシーズン2を振り返っていただき、それぞれにとって思い出深いエピソードや、『HERO』ならではの撮影現場の様子などを伺った。

――出演されたシーズン2の中で、思い出深いエピソードを教えてください。

濱田:久利生さんと麻木さんが泊まりで熱海に行く第7話で、宇野君が末次さんと大喧嘩したのがすごく思い出に残っています。宇野君が2人で熱海に行っていることについてウジウジと文句を言っていると、末次さんに「うるっせえボンボンだな!」と怒られて、宇野君も我慢できずに末次さんに襲いかかってしまう。

吉田:あれは言っちゃいけない一言だったよね(笑)

濱田:本当に思い出に残る喧嘩ですね。

吉田:私、あのセリフが好きなんです。「熱海はヤバいのかあ!」

濱田:あれは良かったですね。いろんな人に熱海の話を聞かされて、宇野君がとってもヒステリックになる回でした(笑)

――宇野検事の麻木事務官への恋模様はシーズン2当初から気になっていたのですが、映画ではいかがでしたか?

濱田:そこは相変わらずです……。

吉田:だから安心して見られるんだよね(笑)

――吉田さんはいかがでしたか?

吉田:八嶋智人さん演じる遠藤賢司事務官が捕まった第6話です。殺人事件の容疑者として特捜に捕まってしまい、城西支部で取り調べを受ける回です。一見、心配していないように見える私たちに向けて遠藤さんが暴言を放ち、それに礼子がキレるシーンがあるのですが、実は台本上では「キレる」とは書いてありませんでした。台本を読んでいたら、本当はみんなが心配して動いているのに、遠藤さんに「馬鹿野郎!」と言われるので「これはひどい!」と思ったんです。それでリハーサルでキレてみたら「礼子さん、そんな怒るの?」と、監督がとてもびっくりしていました(笑)。でも、あれが入ったことで「城西支部のメンバーは、本当にお互いのことをちゃんとリスペクトして、大事に思っているんだな」と伝わったかなと思います。

――そのシーンの撮影はお二人もびっくりされたのではないですか?

濱田:いきなりだったので、めちゃくちゃ面白かったです。

杉本:あれだけのテンションは、それまでの馬場検事は見せてなかったので驚きました(笑)

――キレると言えば、松重豊さん演じる川尻健三郎部長です。テレビシリーズでも今回の映画でも、城西支部のメンバーをかばってキレるシーンがありますが、あのような上司はいかがですか?

吉田:愛嬌があって良いですよね。みんな大好きだと思います。川尻部長は、なんだかんだ言いながら、みんなのことを心配しつつ、きっとやってくれると信頼している。それでいて私たちの期待通りにキレてくれる(笑)。だからこそ、部長が帰ってきたときに、みんなが笑顔で「お疲れ様でした」と迎え入れられるのだと思います。そういう関係性がすごく温かくて、私は城西支部のシーンは特に好きです。

――杉本さんがエピソードを一つ選ぶとしたらどちらになりますか?

杉本:田村が活躍している第3話ですね。僕はNGが多く、あまりいただきたくないNG大賞を『HERO』でいただいているんです。

――第3話と言えば、前田吟さんが演じる殺人事件の被害者の父親に、謝るのが大嫌いなはずの田村検事が頭を下げたシーンは感動しました。

杉本:実はそこがワンカット長回しのマルチ(複数のカメラ)で撮って、一発OKだったんですよ。「よくやったぞ、俺」みたいな感じで個人的に盛り上がりました。

吉田:あれはかっこよかったですよね。

――このシリーズを通して、長回しは多いのでしょうか?

吉田:すごく多かったですね。ワンカットの撮影は集中力が必要で緊張しますけど、だからこそライブ感があるし、日常的な会話の雰囲気が出ます。それに、田村さんがNGを出しても、みんなが必ず笑ってくれる。現場によってはピリピリするのですが、この現場は何回NGを出してもみんなが爆笑する。それって『HERO』ならではの雰囲気だと思うし、本当にいいチームだと再認識する瞬間でした。

濱田:映画の撮影のときも哲太さんがNGを出したときに、後輩の僕も一緒になってみんなで「懐かしいね」って笑えるというのは本当にこの現場の良さですよね。

杉本:今回の映画で言えば、序盤にワンシーンワンカットの長回しの撮影があったんです。そのときは、最後の方に僕のセリフがあったので、これはヤバイぞと内心思っていました。そこでNGを出しちゃうとイチからやり直しになってしまいますから。結構プレッシャーがかかって、テストでもちゃんとセリフが言えてない状況だったんですよ。そうしたら、木村さんが「円陣を組もう」と言ってくれて、それで勇気をもらい無事に撮影ができました。

――そんな中、濱田さんは年齢的に一番下で、宇野検事もコミカルな面白いキャラクターですが、そんな優しい先輩方に囲まれていかがですか?

濱田:これだけの先輩たちと一緒にお芝居をできるわけですから、出し惜しみをせず、胸を借りるしかないというか、思いっきりやるだけでした。

吉田:やっぱり濱田君はおいしいですよね(笑)。でも、宇野検事という役は濱田岳という俳優さんだからこそ成立しているのであって、これだけ魅力的になったのは、岳君が演じたからこそだと思います。

杉本:本当にそうだよね。

濱田:ありがとうございます。なんか恐縮です。

吉田:これは本人にも言ったのですが、映画『HERO』のオープニング映像に、カメラに向かって振り返るシーンがあるんです。撮影中、モニターの後ろで見ていたのですが、岳君は「よーい、はい」って本番になった瞬間に「フッ」っと、どこにも力が入っていないような状態でそこに立つんです。それを見て「たまらない!」と感じて、「この人、だから映画の主演をたくさんやれるんだ」と思いました。

杉本:年は若いけど、芸歴は違うからね。

吉田:先輩、大先輩です。芸歴ももうすぐ20年みたいですからね。

濱田:先輩だなんてとんでもないですよ!

吉田:20年って、子どもが生まれてから成人式ですよ。大先輩ですよ(笑)

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