菅田将暉、撮影現場で変更した演技プランとは?「“伝えよう”とする意識を持たないと」

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菅田将暉さんが主演を務める月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系、毎週月曜21:00~)が、1月10日から初回90分拡大SPでスタートします。

本作は、田村由美さんによる累計発行部数1300万部突破の大人気同名コミックを映像化。菅田さん演じる天然パーマがトレードマークの主人公・久能整が、淡々と自身の見解を述べるだけで事件の謎も人の心も解きほぐしていく令和版・新感覚ミステリーです。

これまで様々な役を演じてきた菅田さんですが、整を演じるのが「難役だった」と言います。どんな苦労があったのでしょうか? また、初めて脚本の打ち合わせにも参加したとのことで、本作が出来上がるまでの裏側を聞きました。

――喋り方が個性的な整ですが、言葉の出し方について意識されたことは?

最初は漫画の通り、淡々とただ思うことを言って、言葉の意味だけで人に浸透させていく方法をやろうと思ったんですけど、これが難しくて。第1話の現場が少し特殊ではあったんですけど、取調室の後ろに窓があって、そこから逆光がパーッと差していたので、だんだん(整に)教祖感が出てきて。やっぱりドラマにするためには、ただ淡々と喋るだけではなく“伝えよう”とする意識を持たないといけないと思いました。

――そのあたりの変更は現場で?

そうですね、演じてみて変わりました。整くんは見た目もふわふわしているし、「大仏さん」っていうとあれだけど(笑)、“人ならざる感”が出過ぎると、ただの不思議な人になってしまうんですよね。そうなると、「不思議な人の言葉によって、みんなが改心していく話」になってしまう。それは少し違うなと。整くんも間違えるし、すべてが正しいわけではない。見ている方にも、何が正しいのか一緒に考えてもらえたらと思っています。

――役柄に共感するところや、シンパシーを感じるところはありますか?

僕も整くんと同じ教師志望でしたし、『3A』(3年A組-今から皆さんは、人質です-)などもそうなんですけど、僕がやる作品には、どこか“教育”というものがテーマにあるものが多いんです。「これ、今やらなきゃ」と感じたという意味でも、共感していたのだと思います。

――菅田さんの過去のインタビュー記事を拝見しても、作品選びにおいて“使命感”がひとつのキーワードになっているのではないかと。いつ頃から、そのように感じるようになったのでしょうか?

たしかに、過去に出演した作品には、だいたい「今、これをやったほうがいい」という感覚がありましたね。最初はオファーなんて来ないので、オーディションを受けて、とにかく経験を積んで。作品を選べるようになってきたのはここ数年ですけど、僕はなぜか、今これをやるタイミングなんだという作品が多いんですよ。その時のマインドに似ていたり、同じようなことが家族で起こっていたり。俳優は他人の人生を演じるわけですが、その期間も自分の人生なので。他人の人生で積み重ねていく、自分の人生。だから、そういうものなんでしょうね、ご縁というか。

菅田将暉
菅田将暉

――ご自身にとって「難役」とのことでしたが、今作で初挑戦になったようなこともあったのでしょうか?

演じた役柄もそうですけど、初めて少し脚本の打ち合わせにも参加しました。あとはシンプルに台詞が多い(笑)。しかも知識を話すシーンが多いんですよ。知識っていうのは、やはり知っていないと喋れないことなので、ただ覚えればいいっていうものではないんですよね。人は自分の知っていることは、無意識にいくらでも話せるんですよ。相手に説明できるくらいの知識量があるとなると、結構調べないといけないので、その作業に時間がかかりましたね。今回は感情とか体の動きで間を埋められないので、持っている知識と語彙力だけで相手を凌駕していくのが難しかったです。

――脚本の打ち合わせにも参加されたとのことですが、以前からやってみたかったことですか?

そうですね。やはり現場レベルでは、変えられるものは限られているんですよ。でも、僕らがプレイヤーなりに思うことがあった時、先に言っておけば反映できるので。今回も結局、現場でシーンごと入れ替えるようなこともありましたけど、監督を含め、みなさん快く一緒に議論してくれたからこそできたことだと思います。

――制作側に立つことで、新たに見えたことはありますか?

連ドラの制作におけるタイム感は、大変すぎますね。制作側に立つことで、これだけの作業をこの時間でやっているということも分かり、その厳しさをより実感できました。そこは予算感も含め、「どうにかならないかなぁ」とはずっと思っているんですけど。俳優がこんなに眠そうな顔をしてテレビに映っていることは他の国を見てもないと思うので、俳優が立ち上がる時期が来ているのかなと思いました。

――「シンプルに台詞が多い」ということでしたが、アドリブもあったのでしょうか?

アドリブは入れられませんでした。今回は入れるべきではないし、アドリブで追加できるキャラクターではなかったですね。監督が「何かを足したい」となった場合にも、毎度みんなで原作を開いて、確認しながらやっていました。

――原作に忠実に、丁寧にドラマを作っていったんですね。今回、伊藤沙莉さんとは『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)以来11年ぶりの共演です。

当時から印象的でしたけど、本当に隔たりがない女優さんですよね。ジャンルレスになんでもできる人って、本当の意味では少ないと思うので。ちゃんと二枚目、三枚目、関係なく、人間を演じられる唯一の人。地頭がよくてパフォーマンス能力が高い、天才女優ですね。それでいて、少し変わった人なので(笑)、彼女がいると現場が明るくなるんですよ。声も通るし。だから楽しかったですね。今回の役は、今までに見た伊藤沙莉さんの中で一番かわいいし、綺麗。あとは現場でちょうど『M-1』(M-1グランプリ2020)がやっていて、ずっとオズワルド(兄・伊藤俊介のお笑いコンビ)を見ている姿が素敵でした(笑)。

――尾上松也さんとの共演はいかがですか?

松也さんはバズると思う。もう徐々に変な人だっていうのは、バレてきてると思うんですけど(笑)。もちろん歌舞伎俳優としての存在感はみんな知っていると思うけど、テレビであんなにふざけてる尾上松也さんは初めてなんじゃないかな。おもしろかったですね。僕、ムロ(ツヨシ)さんとか(佐藤)二朗さんくらい、久々に笑っちゃって。朝、歌舞伎の舞台に立って、昼にこっちの現場来て、また歌舞伎の舞台行くというスケジュールだったんですけど、朝いちで歌舞いてきた人がドラマの現場でやるお芝居のエネルギーがハンパないんですよ。

――なるほど(笑)。現場の雰囲気も良さそうですが、主演として意識したことは?

差し入れを頑張ったことですかね。

――とてもわかりやすく。

いや~、大事ですね。とくに今回は甘いものが好きなキャストが多かったですし、それぞれ好きなものがハッキリしていたので、みんなでいっぱい出し合った感じでした。

――では、ドラマのタイトルにかけて、菅田さんがミステリーだと感じていることを聞かせてください。

僕は、ふだん2Lペットボトルの水を冷蔵庫に冷やしているんです。それを冷蔵庫から出して、水をコップに汲むじゃないですか。で、蓋をしめると温度の関係で、ボコンッていう。未だにあれがミステリーで怖いです。だから、いつもちょっとだけ緩めておくんですけどね。

――冷蔵庫とかテレビとか、突然、音が鳴ったりするのも苦手ですか?

うん、やめてほしい。不快です。結構大きな音がするんですよね。カップ焼きそばのお湯を流した時の音もやめてほしいです。中でも、やっぱりペットボトルが怖くて。もう令和ですよ? どうにかなりませんかね……素材感で。「いつまでボコンッてなるんですか」って思いますよね?

――(笑)。最後に、原作を読んでいる方、読んでいない方、それぞれにメッセージをお願いします。

この漫画は、台詞にならないようなボソボソッと喋ることがすごくおもしろかったり、そこがテンポを作っていたりするので、そこも脚本に反映させてもらいました。だから、その辺の小技は原作が好きな方は楽しめるポイントだと思いますね。要所要所に完コピ要素も出てきますし、キャスティングも本当にすごいと思います。

原作を読んでいない方は、「変わった月9ドラマが始まる」と思っていただけたら。でも、家族で見てほしいですね。とくに第1話は、お父さんと一緒に見てもらいたい。一回、家庭が静まるかもしれないですけど(笑)、たぶんあたたかい雰囲気で次の日曜日が過ごせるような気がしています。

(取材・撮影・文:nakamura omame)

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