『ギヴン』最終話!鈴木仁演じる立夏、走り出した真冬への思いの行方は?

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立夏(鈴木仁)はリハーサルで声が出ない真冬(さなり)を慰めるが…
立夏(鈴木仁)はリハーサルで声が出ない真冬(さなり)を慰めるが…

鈴木仁が主演を務めるFODオリジナルドラマ『ギヴン』が、8月21日に最終話を迎える。

『ギヴン』は、ロックバンドの4人のメンバーたちを中心に、彼らの恋愛や成長していく姿を繊細に描くキヅナツキ原作のBL漫画が原作。2019年にはフジテレビの「ノイタミナ」枠で同枠初のBL作品としてTVアニメ化されたので、アニメ版を知っているという人も結構いるのではないだろうか。

マンガやアニメの評判がいい分、実写化というのは多少なりとも不安があるもの。しかし、このドラマを手掛けるのは三木康一郎監督だと聞いてそれは杞憂だとすぐに思い直せた。三木監督は実写BLの傑作というべき『ポルノグラファー』や2020年版『東京ラブストーリー』も担当している。これはもう、ストーリー展開や映像美に期待しかなかった。

物語は、プロ顔負けのギターの腕前を持つ高校生の上ノ山立夏(鈴木)、大学生の梶秋彦(井之脇海)、大学院生の中山春樹(栁俊太郎)の3人によるインストバンドに、立夏の同級生・佐藤真冬(さなり)が加わることで展開していく。

第5話より
第5話より

勇んで第1話を見始めてみると……やはり原作を知っている分、3次元になったときの違和感はあった。そこにはきっと、原作を超えるわけがない、という変な原作リスペクトの色眼鏡があったと思う。しかし、その違和感はすぐに捨てていいものだった。映像作品としてのクオリティがとても高く、これがマンガやアニメでもあったということを、見ているうちにまったく意識しなくなるのだ。

特に第2話、音楽室で真冬の透き通るような歌声を聴いて立夏が衝撃を受けるシーンがあるのだが、そこで立夏と同様に、私たち自身が衝撃を受けることとなる。これはキャスティングの妙というべきか、真冬を演じるさなりの歌声が本当にすばらしい! もちろんプロのアーティストなので当たり前なのだけど、いつものヒップホップの曲調とも違う歌声。高校生の傷つきやすさや純粋さを内包した叫びがそのままメロディになって喉元からこみ上げてきたような、真冬の歌声を聴くだけでもこのドラマを見る価値がある。

同じく第2話のラストシーンは、立夏と真冬が互いに音楽や表現に対する思いをぶつけあうシーン(そのままいきなり肩に顔をもたれかけるのは反則……!)なのだが、ここで真冬のせつない美声が再度聴ける。夜の駅前というシチュエーションもエモくて最高なのだけど、音楽室のときより本人の思いが深く乗っているのか、声が響きまくっている。これは想像以上。立夏が魅了されるのはわかる。

第5話より
第5話より

そして第3話から一気に恋愛模様も動き出す。といっても、激しく何かが変わってくるというよりも、ゆっくりと静かに変化していく様が描かれてゆく。一気にギアが入るわけではなく、「俺は、もしかして、あいつのこと、気にな……ってる……の……か?」といった思考のスピード感が、物語の速度としてちょうどいいのだ。立夏の、自分の感情がなんなのか本人もまだわからないというところから、ちょっとずつ、友情と恋愛感情とのあわいを風にそよぐ花のように揺れ動く感じ。そしてもどかしくも繊細に心が震えながら、性別というためらいを表現することなく、恋心へと速度を上げていく感じが、とてもリアリティがある。そして立夏の心はどんどん穏やかではなくなり、嵐になっていく。これはまぎれもなく、恋でしかない。

メンバー同士で恋愛相関図のやじるしが複雑に飛び交う、という設定も画期的だ。グループのことを思うと「バンド内恋愛禁止」(仲間の結束が大事なので、相手とギクシャクしない様に恋愛禁止にしているバンドが多い)が正解なのだろうけど、やはり視聴者としては恋愛も応援したくなる。立夏と真冬のカルピスウォーターみたいなキラキラした青春恋愛も見ものだが、春樹と秋彦のジンジャーエールばりのちょい辛恋愛模様も見逃せない。

といっても、もちろんバンドという軸があるので、夢や青春の詰まった青春群像劇として十分楽しめる。これはあくまで「バンド活動」や「音楽」がストーリーの根っこ。BL初心者でも気負いせずに見てほしい。最終話ではどんなバンド描写が見られるのかも楽しみに待ちたい。

第5話より
第5話より

そしてなにより、先述した三木監督の映像美へのこだわりは一見の価値ありだ。本作もとにかく光が美しくて心が震える。たとえば音楽室の生成りのカーテンは光を少し通しながら優しく揺れ、その隙間からは外の緑がまぶしく光っている。立夏と真冬が出会う階段の柔らかな逆光も、2人の輪郭だけが明るく照らされ、これは夢の世界なのかな、と思わせる美しさだ。また、夜のシーンはどことなく艶っぽく、一気に湿度を感じる。それに第4話の夜の東京タワーが背景に輝くシーンは、2020年版『東京ラブストーリー』でよく出てきたシーンと同じロケ地かな?(監督お気に入りのスポットだと思う)という発見も楽しいのでぜひチェックを。

(文:綿貫大介)

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