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映画『プール』 タイ・チェンマイ撮影レポート楽園からの手紙

物語のほとんどすべてがゲストハウスの中で展開します。オーナーの菊子(もたいまさこ)、従業員の市尾(加瀬亮)らとのんびりと暮らしている京子(小林聡美)のもとに、ある日、日本から娘のさよ(伽奈)がやって来ます。さよは、自分を日本に置いていった京子がタイの少年・ビーと共に住んでいるのを見てショックを受け……。『めがね』に続いての共演となる小林さん、もたいさん、加瀬さんの3人は息もぴったり。そこに、これが映画初出演となるモデルの伽奈さんが加わったわけですが、3人の先輩からツッコミを入れられながらも温かく見守られている感じが伝わってきました。

小林:「私の演じている京子は、思ったことはすぐやる行動的な女性ですね。加瀬くん演じる市尾が言うところの“過激な”女性。一見そういうふうには見えない。そういう人いますよね? “え、あの人が?”っていう。そういう感じの人です(笑)。」

伽奈:「その娘のさよです。明るい……。」

小林:「え? 明るい?」

伽奈:「明るくて、爽やかな……。」

小林:「撮り直す?」

加瀬:「新しい明るさですね(笑)。」

伽奈:「さよは、さばけてる人だと思います。お母さんと離れて暮らしていて、おばあちゃんと暮らしていたんですけど……。」

小林:「お母さんのやることが理解できなくて、ね?」

伽奈:「ハイ。」

もたい:「私の役は相変わらず謎の人なんですけど(笑)。このゲストハウスで悠々自適に暮らしている。最初に台本を読んだ時はオーナーだって知らなくて、単に長期滞在している人だと思ってたんですけどね。」

小林:「最初に本読みした時と違う人になってるもんねぇ。普通のおばちゃんだったのが、すっかり気取った人になっちゃって。」

もたい:「オーナーですから(笑)。」

小林:「オーナーって気取ってるんだ(笑)。」

加瀬:「市尾って何歳なんですかね?」

小林:加瀬くんぐらいでしょ?」

加瀬:「そうなんですかね。台本によると、30過ぎまで両親と暮らしてて、何かあってタイに来た。気を使うタイプなんだけど、不器用にしかできないという男だと思います。最初はよくわからなくて、ここで実際に働いている日本人の方にインタビューしました。役とはもちろん違うんですけど、“感じ”をもらえた気がします。」

現場にお邪魔している間、ずっと和やかでのんびりとした雰囲気が漂っているように感じたのは、気のせいではありません。映画の撮影は、朝から夜までどころか、朝から朝まで行なわれることも珍しくないのに、『プール』の撮影は余裕たっぷり。日中の気温が40度近くまで上がるため、午前11時に撮影が終わることもありました。『デトロイト・メタル・シティ』や『ヘブンズ・ドア』の脚本家として知られ、今作の監督を務めている大森美香さんも、ゆったりとした撮影スケジュールに感動したそうです。

大森:「こんなにディスカッションの多い現場は初めてです。それはつまり、ディスカッションする時間があるということなんですよね。スタッフやキャストのみなさんと話し合ったり、景色を見たりしながらゆっくりと演出できるのは、すごく新鮮だし、ありがたいですね。自分で台本を書いているので、事前にこういう撮り方をしようと考えていたこともあるんですが、実際にこちらに来てみて、ある程度それを捨てた方がいいと思いました。この空気の中で、みなさんがどう動くのかを見ているような、自由な演出の方が合っているのかなと考え直したんです。空気感をつかめるような撮り方に変わってきましたね。」

多くのファンを獲得した『かもめ食堂』と『めがね』に続く大ヒットが期待される『プール』。タイが舞台になったことで、見た目には大きな変化が見られるかもしれませんが、根底に流れるスローライフな精神は、きっとこれまでと変わらないのではないでしょうか。

大森:「私が監督をやることによって、『かもめ食堂』や『めがね』とは違ってきてしまうかなという部分と、出てる役者さんが同じだったり、チームが同じだったりしますから、空気感としては似てくるだろうなという部分と両方ありますね。どっちも出てきていいんじゃないかなとは思っています。私自身、『かもめ食堂』も『めがね』もとっても好きな作品だったので、また違う風がちょっと吹くような感じになればいいなと思いますね。」

(文:岡 大)

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