ハリルホジッチ監督の言葉の真意は?『FOOT×BRAIN』で公開大討論

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テレビ東京のサッカー番組『FOOT×BRAIN』が、11月19日に開催された「明治安田生命フットサルフェスタ」に参加したプレイヤーたちと共に、「日本サッカーが世界に勝つために何が必要か?」をテーマにした大討論会を開催。その模様が、12月10日(日)11時から放送の番組で紹介された。

11月23日発表のFIFAランキングで55位の日本代表は、11月の欧州遠征でブラジル(同2位)、ベルギー(同5位)と対戦し、それぞれ1-3と0-1で敗戦。世界との差を痛感することになった。試合を終えたハリルホジッチ監督は「チームの可能性を感じた」、「中盤でのボール奪取能力を伸ばさなくてはいけない」、「個人で違いを生み出す選手がいない」と発言。また、ロシアワールドカップの組み合わせ抽選会が行われ、日本は、ポーランド(同7位)、コロンビア(同13位)、セネガル(同23位)と同じグループHに決定。格上を相手に、同監督は「キーとなるのは初戦のコロンビア戦。本大会まで7ヶ月、目標に向かってしっかりと決意を持って準備をしていきたい」と語っている。

討論会では、番組MCの勝村政信皆藤愛子のほか、番組アナリストの都並敏史福田正博、北澤豪、秋田豊三浦淳寛といった元日本代表メンバーが、ハリル監督がどのような考えを持って、代表を強化しているのかを予想しながら、それぞれ持論を展開した。

まず、三浦は「個人で違いを生み出せる選手がいない」というハリル監督の意見に賛同し、「1人かわせれば劇的に状況を変えられるが、日本の選手は“取られたら”を考えて消極的になってしまう」と指摘。「あれは(勝負に)行けないのか? それとも行かないのか?」とフォワードとして活躍した福田に意見を求めると、福田は「1対1で対峙したときに“これはイケる”と思えれば仕掛けるし、“ちょっと無理だな”と思ったら仕掛けなくなる。勇気を持ってチャレンジできないのかもしれない」と心理状態を分析した。

さらに福田が「“可能性を感じた”以外の2つは個人のことですよね?」と話を振ると、中盤のダイナモとして活躍した北澤は「中盤でのボール奪取能力を伸ばさなくてはいけない」という発言に着目。ハリル監督は個人でボールを奪える選手を既に選んでいることから、個人と組織の両方について言っていると予想。福田の「もっとコンパクトにしないと奪えないということ?」という疑問には「そういう理解の方が良いだろうね」と語った。一方で秋田は「組織の方を考えていると思う」と述べ、対戦相手や状況によって、原口元気や浅野拓磨といったサイドの選手がどう対応するかによって、ディフェンスにはまだ伸びる余地があると分析。「中へとプレスをかけていくのはヨーロッパの戦術では当たり前だから、ハリル監督はまだ物足りないと思っているのではないか」と語った。

「得点機会を増やすために攻撃陣はどうするべきか?」というテーマになると、三浦が「チャンスになりそうな空気があるのが、ペナルティボックスの角でボールを持ったとき」と分析。そこでボールを保持できたとき、サイドバックの上がりや、カットインしてのシュートやクロスなど、様々な選択肢が作り出せていると、日本代表が取り組むべき攻撃の狙いどころについて語った。

そして、秋田がセットプレーの重要性に言及。「最終予選の苦しい時にアイデアのあるプレーが見られなかったのは少し不安」と指摘すると、福田も「J2の戦力が整っていないチームの得点パターンにはセットプレーが多い。長崎や松本は、得点の60~70%がセットプレーなんですよ。そういう準備をすれば得点出来ると証明されていると思う。ワールドカップで勝ち点を取るためには必要な準備だと思う」と話した。

また、会場の参加者が、ワントップで活躍する大迫勇也の動きについて質問。福田は杉本健勇から聞いた話として「あまりサイドに流れずに起点になり、相手を背負っていたらシンプルに落として前向きの選手を使いたいというのがハリル監督のワントップ像で、それは徹底されているらしい」とコメント。続けて「相手が強豪国になった場合、ワントップがどうしても孤立するからサポートに時間が掛かかってしまう。コンパクトに良い守備が出来ていれば、大迫が上手く絡んでいけるシーンは増えていく」と語り、都並も「この間のゲームではセンターバックとボランチの間のスペースに勇気を持って井手口陽介が入っていけていない。あのスペースに侵入してサイドバックが上がる、原口が張る、みたいな状況を作れれば、大迫に対してのパスコースが生まれてくる」と語った。

ゴールキーパーの話題になると、以前、ハリル監督が放った「良いゴールキーパーの条件は190cm以上」という言葉に対して、福田は「理屈はわかるし理想ですが、日本人にはなかなかいない。あるものの中でやれるサッカーを考えてくれないかなと思ってしまう」と正直な思いを明かした。一方で勝村が「ハリル監督が言わんとしていることは、僕らが理解していることと違うと思う。190センチ以上と言うけれど、本当にそれを求めているとは思えない。(日本人は)まともに受けてしまうけれど、ヨーロッパや南米の人は、どんどん話をすり替えていくことがある」と語り、都並も「選手も全部を聞こうとしてギクシャクしてしまうことがあるけど、無視しなくてはいけない部分もある。そういう強さが選手には必要」と指摘した。

そして、欧州遠征の代表メンバーから外れた岡崎慎司、香川真司、本田圭佑の話題に。北澤は「彼らを超える選手が出てくるようにと尻を叩いたのではないか? そうでないのなら必要だと思う」と語り、秋田も「全員かはわからないが、選ばれると思う」と3選手への信頼を明かした。会場の参加者からも「苦しい時に岡崎選手のがむしゃらさは選手も救われると思う。見ている方も気持ちが入ると思うので入れて欲しい」といった言葉が上がった。

終盤には、北澤が「日本代表に中村俊輔が初めて選ばれてきたときは衝撃でしたよね。時代が違ってきた。上手さだったりボールの持ち方だったり、ヒデ(中田英寿)の時もそうだったけど、これからの半年でそういう選手が出てくるかわからないけど……」と、一段違ったレベルの選手の登場に期待を寄せた。そして、参加者の中から中村憲剛の名前が挙がると、秋田は「経験もあるし、最後のクオリティはJリーグで一番高い。後ろから来たボールでもピンポイントでスルーパスとか出しますからね。苦しいときに彼の力は必要かなと思います」と、川崎フロンターレで念願の初タイトルを手にした男に期待を寄せた。

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