髙田明社長、就任半年でV・ファーレン長崎サポーターに愛される理由とは?

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見事J1昇格を決めたV・ファーレン長崎の髙田明社長が、テレビ東京で2017年11月12日に放送されたサッカー番組『FOOT×BRAIN』(テレビ東京、毎週日曜11:00~)にゲスト出演。トランスコスモススタジアム長崎の取材とスタジオトークを通して、髙田社長が就任半年にしてファン・サポーターに受け入れられた理由の片鱗が見ることができた。

その甲高い声と独特な語り口で見る者を魅了し、彼が手にした商品の魅力を様々な角度から伝え、テレビショッピングのジャパネットたかたを一躍全国に知らしめた髙田社長。2015年に同社社長を退任し、今年4月、経営危機に苦しむV・ファーレン長崎の社長に就任した。

V・ファーレン長崎は2005年に誕生し、九州リーグからJFL、J2と順調にステージを上がり、そして今シーズン、ついに念願のJ1昇格まであと一歩のところまでやってきた。しかし、躍進を続ける一方で、観客数の水増しや、累積赤字3億円超の経営危機が明るみになり、今年2月、経営陣が退任するなど大きな問題を抱えていた。

そんな時、クラブのスポンサーで、地元長崎発の全国企業として知られるジャパネットたかたが名乗りを上げた。髙田社長は、クラブの経営危機を知り「ずっと子どもたちの夢を応援してきましたので、長崎からのこのクラブがなくなるのは大変なことだ」と、ジャパネットの現社長と相談し、V・ファーレン長崎をジャパネットホールディングスにグループ化。その巡り合わせで社長就任が決まったという。

これまでのビジネスとは全く違う領域のスポーツクラブ経営について聞かれると「ここ(FOOT×BRAINのスタジオ)に座っていること自体に違和感がある」と笑いながらも、「あまり抵抗はなかった」と語る髙田社長。「ビジネスもスポーツも業界は違えど目指すミッションに変わりはない。スポーツは皆さんに幸せを与えていく。それは商売も商品も同じなんですよ。それをブレずに持ち続ければ社長を承ってもどうにかしていけると感じた」と就任時の思いを明かした。

そして、収録時において、社長就任からわずか半年にしてJ1昇格争いをしていることについては「私が社長になったからというのは全くないと思う」と謙遜したが、あるとするならば、経営危機に陥った際に選手と監督にお願いしたことが一つあると告白。それは「給料のことや、将来どうなるかといった不安があると思うが、それは我々がしっかりと受け止めるので、とにかく練習・試合に集中してほしい」というもので、これによって選手たちの不安は取り除かれ、従来持っていた力を発揮できるようになったのではないかと語った。

また番組では、当時、J1昇格争いを繰り広げていたライバル・名古屋グランパスとの大一番を迎えるトランスコスモススタジアム長崎を取材。この日はあいにくの雨模様にもかかわらず、スタジアムには多くのファン・サポーターが駆けつけた。すると開場を待つ待機列に髙田社長がやってきて、ファン・サポーターと握手をかわしながら、「雨の中、こんなにお客さんが来てくれて嬉しいです」と語りかける。さらにスタッフの元へ行き、「並びをなんとかできないかな。人が足りないのかな……」と相談。雨の中で待つサポーターを見て、開場時間を30分早めることを決断する。とても素晴らしい対応に思えるが、自身は「これは変えなくてはいけない」と、本来ならば最初から用意されている対応であるべきだと語り、「これも経験なんですね。チケットのところはスムーズに入れるようにしなくてはいけない」と反省を述べた。

さらにこの日は、クラブを盛り上げるためにオリジナルTシャツ1万枚を無料配布。「ALL! NAGASAKI Catch Our DREAM #夢をつかめ!」とメッセージが書かれたシャツで、同じメッセージが描かれた折り込みチラシも配布。ハーフタイムには100発の打ち上げ花火、地元チアリーディングチームとアイドルのコラボレーションイベントなどを実施し会場を盛り上げた。なんと試合前日と当日には、高田社長が呼びかけるテレビコマーシャルも放送して、大一番のホームゲームをアピールしたという。

そのほかにもジャパネットならではの取り組みとして、スタジアムでアウトレットセールを実施。新品だが箱に傷がある商品などを集め、例えばジャパネットでは49,800円で販売しているクリーナーを、なんと2万円で販売。この企画を担当するジャパネットの社員も「前半は1-0ですが、後半は2-0.勝ち点3いただきます!」と予想するなど、グループ会社も一緒になって、V・ファーレン長崎を後押ししていた。髙田社長はこれらの取り組みについて「1回スタジアムに来たら2回、3回と来たくなるようなサプライズをやっていきたい」と、ファン・サポーターを楽しませたいという思いを伝えた。

また、試合前のスタジアム内で髙田社長は「足を運び」「見て」「感じる」と、自身の行動理念に言及。「昨日もスタジアムの1階、2階を2時間くらい歩いて、来年はどんな席を作るべきかチケット戦略を考えていた。ピッチ看板を見ても少し大きくした方が良いのかなって。幅が70cmか120cmかで違う。まだ経験が浅いですから、現場に足を運ばないと見えないものがいっぱいある」と語った。また、J2では少ないLED看板を導入しており、そこには“スポンサー名”や“ゴール”といった映像を表示。多くのスタジアムが、ホームクラブのゴールのみで行っている演出についても「そこはリスペクトとして相手チームのゴールでもリプレイ映像を流して、お互いを尊重しながら試合をしていく。そうやってフェアプレーの気持ちを表現したい。それによって選手も気持ちが変わるじゃないですか。そのちょっとした変化が勝利を呼ぶ」と持論を展開した。

その後、試合は先制されるも土壇場で同点に追いつき、勝ち点1を上積みし、ファン・サポーターも大満足の様子。結果的にこの引き分けのおかげで最終節を待たずして昇格を決めることになる貴重な勝ち点となった。サポーターへのインタビューも行われ、「長崎全体が盛り上がっている気がする。今までよりもV・ファーレン長崎の話をすることが増えている」、「いつかはACLに出られるようなチームを作ってほしい。僕らも後ろから応援したい」、「もっと地元ゆかりの選手をとってほしい」、「V・ファーレン長崎を助けていただいてありがとうございます。今後とも宜しくお願いします!」といった声を伝え、わずか半年にして、ファン・サポーターの心をつかんでいる様子を知ることができた。

このように様々な取り組みをする髙田社長。「僕の考えでは、勝つことは大事ですが最終的には手段だと思います。長崎はどんどん人口が減っていって過疎化しているというニュースばかり出てくるんです。でも、気力が世の中とか結果を変えるとか、長崎の人が夢を持てるようになれば前向きになっていける。小さい夢から大きな夢にいけるようにサッカーを通して役割を果たせたら」とV・ファーレン長崎での経営哲学を披露。そして、「広島と長崎は被爆した県でしょ。平和というメッセージを世界に出していきたい。これがV・ファーレン長崎の一つのミッションなのかなと思います」と、クラブが持つこれからの夢についても明かした。

また、番組MCの勝村政信が「通販の会社で長崎から全国区になって、そういう例が身近にあるのは自信にもなりますよね?」と語りかけると、髙田社長は「不可能と思うことを可能にするのはスキルもあるけど、私の経験の中ではパッションですね。情熱は不可能を時として可能にする。人生の中で“自己更新”というものが大事だと思っています。死ぬまで人間は自分を更新して生きていく、それは夢を繋いでいくということだから」と語り、最後にV・ファーレン長崎のファン・サポーターに向けて「本当に今年1年間はいろんなことがありましたけども、やっとこのステージまで来ました。あと一押し皆さんの応援が必要ですから、一所懸命応援してください。我々も頑張って長崎の夢を育てていきたいと思います。皆さん応援をお願いいたします!」と情熱のこもったメッセージを送った。

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