日本卓球の躍進にこの人あり!中国をパニックに陥れた強化メソッドとは?

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勝村政信皆藤愛子がMCを務めるテレビ東京のサッカー番組『FOOT×BRAIN』(毎週日曜11:00~)。5月28日の放送では、前卓球男子日本代表監督で現在は強化本部長、そして、世界卓球2017ドイツでは総監督を務める宮﨑義仁をゲストに迎え、番組アナリストの秋田豊と共に「スポーツ強化メソッド」について語った。

宮﨑は、初めて卓球が正式種目になった1988年のソウルオリンピックで日本代表としてシングルス・ダブルスに出場。その後、銀行員となったが、2001年の世界卓球選手権で日本が16組中13位と低迷したことを受けて、改革するために銀行を辞め、再び卓球界へと戻ってきた。

それから日本卓球界はメキメキと実力を付け、リオオリンピックで男子団体が銀メダル、女子団体が銅メダルを獲得。さらに先日行われたアジア選手権では、平野美宇が中国人選手を次々に破り日本勢としては21年ぶりに優勝を果たすなど、躍進を続けている。平野の活躍は卓球大国・中国にとっても衝撃的な出来事だったようで、宮﨑によると、現在、中国はパニックになっており「中国の卓球場のモニターには平野のプレー映像が映し出され、それを見ながら練習している」と明かした。

日本の卓球がそこに行き着くまでには、宮﨑が仕掛けた様々な動きがあった。まず宮﨑は、スター選手の存在は不可欠だと言い「子どもの頃から国民に愛された福原愛の存在は大きかった」と振り返る。誰からも愛され、彼女に憧れて卓球を始めた選手や「愛ちゃんのように育てたい」という親の思いが、平野をはじめ、伊藤美誠、早田ひなといった有望選手の出現に繋がったと語った。

しかし、いかに原石があったとしても磨かなくては輝きを放てない。そこで宮﨑が最初に手を付けたのが育成年代。小学5~6年生を対象にした「ホープスナショナルチーム」を発足し、それまで合宿・遠征費用は選手の自費だったが、協会が費用を負担するなどして選手をサポート。そして、中学生になってステップアップするために「ドイツシステム」を導入。日本の優秀な選手たちを、ヨーロッパで一番の強豪ドイツに留学させ、プロチームの試合に参加させることで、中学生の段階から技術だけでなくプロ意識を養わせた。この狙いは見事に的中し、1期生の岸川聖也がロンドンオリンピックでシングルス5位、そして2期生の水谷が、日本の悲願だったシングルスのメダル獲得をリオで達成する。岸川は7~8年、水谷は5~6年続けたことで掴んだ結果だったという。

そして宮﨑は、海外よりも強くなるための次なる一手を打つ。それが「JOCエリートアカデミー」だ。2008年4月に、オリンピックで活躍できる選手を育成するために日本スポーツ振興センターがナショナルトレーニングセンターを設立。そこで、全競技団体に対してアカデミーを作る気があるか打診のあった中、手を挙げたのは卓球の男子だけだったという。そこで宮﨑は、ドイツシステムを終わらせ、国内トレセンに選手を招集。ホープスナショナルチームとJOCエリートアカデミーを使った一貫指導体制を確立させた。

さらに宮﨑は、2012年にエリートアカデミーの総監督になると、ナショナルチーム男女全体の強化費を自分で稼ぐために積極的に営業を展開。日本スポーツ振興センターから何か募集があれば自らプレゼンテーションを行うなどして、2012年度は6億2000万円だった日本卓球協会の総予算を、2017年度には14億円まで倍増させたという。

そのほか「卓球のフェアプレー精神」の話題に。10-0で勝っていると、勝っている選手がわざとミスをして1点を相手に与えてから勝負を決めるというシーンが度々見受けられる。これは“相手に不名誉な記録を残させない”という思いやりで、決してルールではないが、卓球界の流れとなっていると明かす。

また、卓球は高速で行われる競技なので、審判員がミスジャッジをすることが少なくないという。しかし、プレーしている選手自身はミスジャッジに気付くと、もし自分に不利な判定になるとしても自己申告し、審判もミスを受け入れ、その得点を修正するのが一般的な常識になっており、お互いを認め合うフェアプレー精神が深く根付いていると話した。

また「サァー!」や「よっしゃー」といった、得点を決めた後のかけ声が日本から世界へと広がっているそうで、「外国人選手が“よっしゃー”と言う姿を、28日に開幕する世界卓球でも見られると思う」と語った。

そして最後に、日本サッカーがワールドカップで優勝するための提言を求められると「若いうちから外に出すべき」と提案。日本国内に世界一の競争力があるなら良いが、FIFAランキング50位程度の国のリーグの中で争っていても、世界には勝てない。優秀な選手は12歳から20歳くらいまで協会として外に出して優秀な選手を育成し、そういう選手が100人くらいいる状況を作り、そこから代表に選ぶべきだと語った。一方で、FIFAが定める移籍条項・第19条で18歳未満の選手の国際移籍が禁止されているため、簡単に海外でプレーすることはできない。しかし宮﨑は「そのようなルールがあるからこそ、違う知恵を出すことができる」と語り、2年間チームで行かせるなど、これまでにない発想をできれば色々なことができると提言した。

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