鈴井貴之インタビュー『不便な便利屋』Blu-ray&DVD BOXにも仕掛けが盛りだくさん

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極寒・北海道の名も無き田舎町で“便利屋”を営む3人の男たちのハートフルコメディドラマ『不便な便利屋』のBlu-ray&DVD BOXが、7月15日(水)に発売される。テレビ東京の4月クールの「ドラマ24」枠で放送された本作は、主演の岡田将生が豊かすぎる想像力(妄想力)を持ち合わせる新進気鋭の脚本家・竹山純を演じ、おせっかいを絵に描いたような松井(鈴木浩介)、離婚歴3回の梅本(遠藤憲一)とともに奇想天外で“ズレた”ストーリー展開が人気を博した。

今回、本作で初めて連続ドラマ全編の脚本・監督を務めた鈴井貴之さんにインタビューを行い、ドラマの中でギネス世界記録TMに挑戦しようと思ったきっかけ、放送が終わった今だから話せる裏話、Blu-ray&DVD BOXにしか収録されていない特典映像についてなどをたっぷり語っていただいた。

――『不便な便利屋』のストーリーを思いついたきっかけは?

4年前、生まれ故郷である北海道の赤平市が財政破綻の危機に陥ったと聞いて、そこにアトリエを構え、1年の半分ぐらいを生活するようになったんです。その時に、給料を30%カットされるなど大変な思いをされていた市の職員の方や町の住民の方と一緒に飲む機会があったのですが、みんな「今この町はギリギリだけど、しょうがないよ。アハハ」って笑っているんですよ。人は、ピンチの時はどうしてもネガティブに考えてしまいがちだと思うのですが、赤平の人たちはみんなポジティブで、一見能天気に見えるけれども、だんだん一緒にいるうちに“その考えは素敵だ”と感じるようになりました。そんな時、「ドラマの世界の登場人物がこうだったら面白いだろうな。僕がそうであったように、外から来た人間がそれを体感するとどういうふうになるのかな」と思い、このストーリーの構造が生まれました。

――ストーリーを生み出す上で、苦労などはありましたか?

今となっては苦労したかは覚えていないのですが、案がポンポン浮かんできたわけではなく、紆余曲折が何度もあり、コメディ路線ではなかったときもあったんです。最初はもっとヒューマンドラマチックな作品にしようとしていたのですが、「もっとコメディに走ったほうがいいんじゃないか」とプロデューサーに言われて、そこで“ばかばかしい感じにしちゃおう”と決めて、今の『不便な便利屋』の姿になりました。

――クランクインした時にはすべて脚本が出来ていたとのことですが、役者さんの芝居を見て変えた点はありましたか?

もちろんです。毎回毎回変化していきましたね。それに、役者さんも「こういうのはどうですか」と提案してくれました。特に3人(岡田・鈴木・遠藤)は勤勉で、前の日に必ず3人で読み合わせをしていて、「このセリフはこう言った方が面白いんじゃない?」っていう案を現場に持ってきてくださるんです。毎回変化していくので、ゲストの方々はすごく大変だったんじゃないかな。ですが、皆さん柔軟に対応してくださる方ばかりでした。そうじゃない人だったら、かなり大変だったかもしれないです。僕も、「普通にお芝居しないでください」みたいな曖昧な指示も出しちゃうので……。

――鈴井さんからキャストに求めた芝居とは?

リアルな芝居ですね。例えば、今僕はインタビューを受けていますけど、時々時計を見たり、インタビュアーさんではなくスタッフの方を見て話したり、違うことを考えたりすることがあるんです。でも、それがリアルなんです。そういうお芝居を役者さんに要求しました。良い事言っている時に「あ、聞いてなかった」とか「寝てた」っていう感じ。そういう点を面白がってもらわないとやれなかったかなと思います。遠藤さんには「要求されていることが、ハードル高すぎるよ」と言われました(笑)。

――ゲストがかなり豪華で、ネットでは「キャストの無駄使い」と騒がれていましたが、ゲストの方々にはどんなオファーをされたのですか?

スタッフの皆さんが、“この役をこの人が演じたら面白いだろうな”ということをかなり楽しんで考えてくださって、実際に俳優さんにお話をしたところ、受けてくださるという方が続々と登場して……本当に、キャストの無駄遣いですよね(笑)。1話でタクシーの運転手役で出演してくれた時任三郎さんなんて、画面に5秒しか映ってないんですよ。でも、その時に「いやあ、楽しかった! もう1回来てもいいな」と言ってくださったので、「来てくださるなら書き足しますよ!」って言って、11話に再び登場することになったんです。

――監督ご自身も作品に出演されていましたね。

『不便な便利屋』は、いろんな人たちが遊んでくれたらいいなという思いで作った部分もありました。美術スタッフは、毎回どこかに何かを仕込んでいたり、僕以外のスタッフも勝手にエキストラとしてドラマに映り込んでいたり(笑)。僕でさえ、誰が何をやるかわらかないっていう驚きがあって、毎日本当に楽しかったです。

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