西島秀俊、『劇場版MOZU』異国の地で覚悟必至のアクションに挑む

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2014年にTBS×WOWOWの共同制作で連続ドラマ化された『MOZU』のシリーズ完結作『劇場版MOZU』が、11月7日(土)に公開される。

本作は、累計240万部を突破した逢坂剛のハードボイルド小説「百舌」シリーズの映像化。2部作で放送された連続ドラマは、「海猿」シリーズなどを手掛けた羽住英一郎監督による革新的な映像表現と、主演の西島秀俊らによる重厚な演技と本格アクションが反響を呼び、2014年ギャラクシー賞7月度月間賞や東京ドラマアウォード2014年連続ドラマ部門優秀賞を受賞、そして第43回国際エミー賞の連続ドラマ部門にノミネートされるなど、国内外から高い評価を得た。

この劇場版には、連続ドラマからの出演者はもちろん、松坂桃李、伊勢谷友介、そしてビートたけしといった豪華俳優陣が新たに参加。妻を亡くした警視庁公安部のエース・倉木(西島)が、テロ事件を機に、日本の重大事件を陰で操ってきたとされる謎の存在“ダルマ”(たけし)と死闘を繰り広げるまでが描かれる。

今回は、主演の西島秀俊さんにインタビューを行い、フィリピンで敢行した大規模ロケの様子や、ビートたけしさんと共演した感触、そして『MOZU』への思いを語っていただいた。

――今回の劇場版でついに完結となる『MOZU』シリーズ。ドラマ版の放送中から、作品全体に漂う独特の空気感、斬新な映像表現などが大きな話題を呼んでいましたが、出演者の立場からすると、そういった数々の挑戦に対してどのように思われましたか。

原作のストーリーは大変素晴らしいのですが、小説ならではのトリックが多いので、最初はそれをどう映像化するのかが気がかりでした。そうしたらドラマ版では、ストーリーやキャラクターの説明もなかったし、主題歌や挿入歌もなくて。一話完結でもないのに謎で引っ張っていくこともしない……。僕は好きな作風だけど、正直に言うと、やり過ぎじゃないか?と思いました。このような、挑戦だらけのドラマを好きだと言ってくださる方々がいたから、今回の劇場版が実現できたと思っています。まずはその方々に楽しんでいただければと思いながら、撮影をしていました。応援してくださった方には、本当に感謝しています。

――倉木は悲しみや苦しみ、後悔といった負の感情が原動力のキャラクターですが、演じていて、実際の気持ちに影響などはありませんでしたか?

原作でもそうですが、倉木は人間らしさを失ってしまい、周りが見えなくなって破滅に突き進んでいく役どころです。個人的にこういうキャラクターは好きですが、人としては間違っていると思います。それに、決して視聴者が感情移入しやすい役ではありません。現場の雰囲気は楽しくても、役自体を楽しみながら演じられたわけではないので、そういう意味では辛かったです。本番中、人間らしさを出そうと、何度か笑ってみたことがあるのですが、全部編集でカットされていました(笑)。『MOZU』の人間的な部分を担っているのは大杉(香川照之)ですし、全体を通しての真の主役は百舌(池松壮亮)です。記憶をなくした殺し屋が、それを取り戻す中で、自身の生い立ちなどを知って行くというストーリーは、まさにそうだと思います。

――今回の劇場版は、フィリピンで大規模ロケを行ったそうですが、現地の印象はいかがでしたか?

ドラマ版は、普通の連ドラより、とても速いスピードで撮影していたので、劇場版になってやっとアクションのリハーサルがじっくりできたという感じでした。今回はフィリピンでアクション撮影を行ったのですが、舞台を海外に置くことでトライできることがたくさん増えますし、フィリピンの混とんとした雰囲気は、『MOZU』にとても合うと思いました。気温も非常に暑かったのですが、その過酷さも「楽なことをやる気はない」という羽住組に合っていたと思います。撮影場所に向かう時、スタッフに「荷物は全部ホテルに置いてきてください」と言われ、ボディガードも同行してくれたので、「どんなところで撮影するんだろう」と思っていると、着いた場所はスラム街で、本当に何が起きるかわからないという印象でした。

――アクションの稽古中、肋骨にヒビが入ったと伺ったのですが……。

はい、フィリピンに着いてから、かなり早い段階で肋骨をやってしまいました。『MOZU』では、基本的にアクションを体に当てるので、変なところに入ると怪我をしてしまいます。少しでも筋肉をつけていないと本当に危険なので、体を守るという意味で筋量を増やして臨みましたが、190cmくらいの人を相手に戦うシーンがあり、その稽古中にヒビが入ってしまいました。

――日本では撮影不可能なカーアクションを敢行したそうですが、手応えはいかがでしたか?

すごい迫力なのと、本当に危なかったです。クレーンで吊っているカメラに、飛んできた車が当たって、そのカメラが落ちたこともありました。現地スタッフは言語も性格も違うので、「俳優とカメラが乗っているから、ものをぶつけないで」と事前に話していても、本番で興奮してバンバンぶつけてきたりします。人や車が打ち合わせと全然違う動きをするので、ただ街中を走るというだけでも、どこから車が入ってくるかわからないという怖さはありました。海外ロケでそういうことが起こるのは想定済みでしたが、監督も「良い絵は撮れるけど、あと2回ぐらいあったら誰か大怪我するかもしれないからやめよう」と言っていて(笑)。そういう環境を比べると、日本は意思疎通が取れるし、周りに危ないものが落ちていないように気をつけているし、人や車が横から急に入ってくることもない。日本でのアクションは安全ですよね。やらせていただけるなら、今度は飛行機にぶら下がってみたいですね(笑)。

――言語が違うとのことですが、現地の方々との交流はどのようにしたのですか?

地元の方々が協力してくださったので、とてもうまく行きました。最初は、スラム街の子どもたちが撮影風景を楽しそうに見ていましたが、僕たちが目の色を変えて血みどろになりながら演じていると、本気度が伝わったらしく、いろいろ協力してくれて。実際に出演してくれたりしました。本当に危ない場所で撮影していたと思いますが、大人の方々も協力してくださり、とても幸運な現場だったと思います。

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