向井理「願いが叶って良かった」映画『S-最後の警官-』への思いを明かす

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小学館「ビッグコミック」で連載中の同名漫画(小森陽一・原作、藤堂裕・作画)を原作に、架空の警察庁特殊急襲捜査班・NPSの活躍を通し、向井理演じるNPS隊員・神御蔵一號(かみくら・いちご)の成長が描かれる警察ヒューマンエンターテインメント「S-最後の警官-」。2014年1月、TBS日曜劇場枠にて放送された連続ドラマは、平均視聴率14.2%、最高視聴率18.9%を記録した。そして8月29日(土)、劇場版『S-最後の警官- 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE』がいよいよ公開。向井や、一號とはライバル関係の天才スナイパー・蘇我伊織役の綾野剛をはじめ、新垣結衣、吹石一恵、オダギリジョー、大森南朋といったドラマ版からのキャストが勢揃いするほか、青木崇高などのニューカマーが参加し、原作でも人気の高い「プルトニウム編」を、映画ならではの巨大スケールで実写化している。

今回は、主人公・一號役の向井さんにインタビュー。ドラマ版との違いや、シリーズを通して得たこと、同い年である綾野さんとの関係性などについてたっぷり語っていただいた。

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――ドラマ放送終了から10ヶ月後の2015年1月にクランクイン。久々に共演者、スタッフの皆さんと集まった感触はいかがでしたか?

みんなと現場で集まった時は、「ああ、『S』の面々だな」と感じましたが、実は、NPSのメンバーとは他の場所でもよく顔を合わせているんです。僕がいるスタジオの隣に、偶然綾野君がいたことがあるし、高嶋政宏さん、大森南朋さん、平山浩行さんとも遭遇したことも。なので、顔を合わせると「そろそろ『S』の撮影が始まるね」などと話していたので、久々な感じはありませんでした。それに映画も、ドラマの最終回から1年後が舞台。それまでの1年は、みんな異なる現場に出向いてさまざまな事件を解決、経験を積み戻ってきたという設定なので、すんなり入って行くことができました。

――ドラマの放送前に映画化を発表するという異例の試みが行われていましたが、台本はどの段階で上がっていたのでしょうか。

僕たち出演者としては、「プルトニウム編」を描きたいという思いがあったのですが、世相に関わる内容でもあるので、どうなるかはしばらく未定でした。ドラマの放送が終わっても、原作がまだ連載中ということもあり、どのエピソードを映画化するかは確定していませんでした。その後、台本が上がって読んでみるとこの話になっていて、とてもありがたく思いましたね。

――読んだ感想はいかがでしたか?

至極シンプルな台本でしたね。アクションシーンも2、3行しか書いていなくて。もちろん、実際の動きは現場や練習の時に決めるのですが、ここまでシンプルなはずはないので、正直言って信用していませんでした(笑)。「タンカーを走る」と書いてあっても、それがどれくらいの規模なのかわからないし、「ヘリからロープで降りる」と1行だけ書いてあっても、本当にそんなことができるのか、どのような絵になるのか、台本を読んだ時点では全然想像がつきませんでした。

――映画では、舞台を1年後に移していますが、描きたかったのはどんなことですか?

原作では、一號は最初からNPS隊員ですが、ドラマでは、映画を含めた長いスパンで描けることを見据え、町の警察官を経てNPSに入る段階から描いています。特殊部隊としては非常に未熟な部分をあえて描いたので、いろいろな指摘や批判もありましたけど、映画ですべて消化できればという思いで取り組んでいました。その流れがあったので、映画では一號が成長した姿を描くことができました。劇中でずっと一緒に戦っていたSAT隊員・嵐悟役の平山祐介さんが、クランクアップの時に「一號の成長を一番近くで見ることができてよかった」とおっしゃってくれたのですが、僕が求めていた言葉だったのでとても嬉しかったです。「きちんと伝わったんだな」と思いましたし、そこで「素晴らしい作品になるだろう」とも思いました。そういう意味では、自分の願いが叶って良かったなと思えた作品です。

――ドラマの一號は、明るく人なつこく、強い信念を持つ反面、独断で動いてしまう危なっかしさもあるキャラクターでした。映画ではどのような成長が見られますか?

ドラマの一號は「誰も死なせずに確保する」という理想論がありましたが、実力がないので実現は難しい時もありました。ただ、その信念で人を動かしてきたという事実もあります。一號が経験を積むことで、その言葉の重みが強まっていき、1年後には筋の通った信念を持てるようになりました。そうしてNPSも、目標を実現するための具体案を全体で考え、任務に取り組むことができるようになりました。これは、一號がいないとできなかったことだし、今の彼がいないと今のNPSは成り立ちません。理想から来る信念ではあったけど、やっぱり間違ってはいなかったんだということを、映画では感じられると思います。

――信念を持って突き進める点が一號の魅力ですか?

敵に近付き、自分の身を危険に晒さなければいけないので、実はとても危険な信念です。本当は、蘇我のように遠くから狙っている方が被害が少ない。だけど、過去のトラウマや経験からそのようにせざるを得ないんです。もちろん一人ではなく、他の人の後方支援があるからできることですが。でも、ここまで信念を持ち、オダギリジョーさん演じるテロリスト・正木圭吾に対峙できるは一號だけだと思います。

――一號と共に、NPSも組織として成長したと思います。

映画の冒頭でもありますが、1年間いろいろな事件に接してきた一號の成長が、すなわちNPSの成長なので、そういう意味ではチームワークはうんと良くなりました。あとは、周囲からいろいろ言われなくなったり、バタバタしなくなったりというだけでも、大きな違いだと思います。一號やNPSの成長物語という視点だけではないので、ドラマを見ずに映画だけを観ても、そんなに違和感はないと思います。

――役作りにおいて、平野俊一監督とはどのようなやり取りをしましたか?

僕は「成長した一號をやりたい」と思っていたのですが、見せ方としては、大きな人物像は変えず、自然と出てくる細かい部分で成長を感じられるようにしました。いろいろな意見をぶつけ合う中、「以前のようにドタバタするよりは、引き算の演技で行こう」と決めました。例えば、台本で“!”が3つついているせりふがあったら2つにしてみたり、必要以外は叫ぶのを控えたり。事件現場でも、ドラマの時のようにあからさまに怒った顔をすると「また暴走している」と思われがちですが、自信を持って出て行けば、同じ動きでも違って見えると思い、冷静に回りを見て「今行ったら確保できる」というタイミングで動くようにしました。

――そのことにより、作品としてのスケール感が一層引き立っていたように思います。

個人的な趣味ですが、作品自体が派手なので、自分の演技も派手にしてしまうとバランスが良くないと思ったんです。最初から考えていたわけではなく現場で決めたことですが、自分がスッと引くことで一號の存在感がさらに増すと思ったので、ワーワーするのは祐介さんに任せ、僕は冷静でいることにしました。周りの熱気もすごかったし、だったら自分は言葉を出さない方が格好良いだろうなと思って。今回はあざとく、格好良い一號を意識しました(笑)。

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