又吉直樹、次回作の質問は「呪いに聞こえる」芥川賞を獲る前に明かした本音

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お笑い芸人・ピースの又吉直樹(35)による小説「火花」が、16日に「第153回芥川龍之介賞」を受賞し、大きな話題となった。又吉は、5月23日に放送されたトーク番組『サワコの朝』(MBS/TBS系ネット、毎週土曜7:30〜)に出演した際に、司会の阿川佐和子から「お笑いと作家、どちらかを選ばなければいけないとしたら?」と聞かれ、「お笑い芸人でしょうね」と答えていた。

この時、すでに「火花」の単行本は40万部に迫るベストセラー。芥川賞受賞前は64万部。そして受賞後には40万部の増刷が発表され、新人の純文学作家としては異例の発行部数104万に達したと先日、報道された。敬愛する芥川龍之介の名を冠し、一番好きな作家だという太宰治が受賞できなかった芥川賞を、お笑い芸人として初めて獲得した又吉。その人物像に改めて注目が集まる中、『サワコの朝』出演時のトークを振り返ると、まだ「芥川賞作家」ではなかったころの、又吉の素顔が見えてくる。

冒頭、阿川に「文豪」「先生」と言われ、「やめてください」と苦笑する又吉。2003年、23歳の時に相方・綾部祐二とピースを結成。2010年、30歳の時にピースとして「キングオブコント」準優勝。その後、芸人として活躍するかたわら、2015年1月に文芸雑誌「文學界」で師弟関係を結んだ2人の若手芸人の輝きと挫折を描いた「火花」を発表して大評判に。同雑誌は1933 年の創刊以来、初めて増刷(通常1万部が、4万部)となった。

又吉は「芸人か、作家か」の二者択一を阿川に迫られると、「お笑い芸人でしょうね。僕にとっては“人を楽しませる”という意味では一緒のことなんですけど。理由は、ライブができない方が辛いから」と語った。そんな中、次回作については、プレッシャーと意欲の両方が入り混じる胸中を明かした。「とりあえず書いていこうと。二作目のことを聞かれると、僕の耳には呪いのように聞こえます。“一作目は芸人の話。芸人だから書けただけ”と潜在的に思っている人が、性格の悪い質問をする。でも、そういう人も好きなんですけどね(笑)。だから、とりあえず五作書こうと思っています。五作の中の二作目と思えば、自由に書ける」と語った。

他にも、処女作「火花」に関して、「皆が読む物として書いておらず、賛否両論になればいいし、怒られてもいいと思って書いていた。共感できた、できないが価値基準の最初に出るのがあまり好きじゃない。“共感に媚びる”のなら、あまり書く意味はないと思いました」といった、執筆時の思いを明かした。

又吉にとって、芸人としてネタを書くこと、作家として小説を書くことは同義。そんな彼の原点とも言えるエピソードも、続々と飛び出した。6歳の時に父親の誕生日で披露するために初めてコントを作ったこと。小説の世界への入り口は、中学生の時、国語の教科書に載っていた芥川の「トロッコ」との出会い。その後、友人に「お前みたいな奴が出てる」と言われて勧められ、それ以来100回は読んだという太宰の「人間失格」。“色々考えた結果、ふざける。辛い時も楽しいふりをする”タイプの主人公に自身を重ね「楽になった」という。

番組では、これから“芸人・作家”と、無二の肩書きで呼ばれるであろう又吉直樹の人物像を端的に表す、彼にとって思い入れがある2曲も紹介。それは、小学生の頃にラジオで聞いた、遠藤賢司「カレーライス」と、現在お気に入りの、ハンバート ハンバート「ぼくのお日さま」。前者は、伝説的なフォークシンガーの名曲で、「僕は寝転んでテレビを見てる 誰かがお腹を切っちゃったって、う~んとっても 痛いだろうにねえ」という歌詞が印象的。これは、割腹自殺した三島由紀夫のことだといい、小学生にしてこれを「かっこいい」と感じた又吉はやはり、幼い頃から感性を持っていた、ということなのだろう。

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