2011年に連続ドラマとしての幕を下ろしたTBSの橋田壽賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』が、番組誕生から25年を迎えるこの春、2週連続、計4時間にわたる2時間スペシャルとしてカムバック。26日、同局にて記者会見が行われ、脚本を手がけた橋田壽賀子と石井ふく子プロデューサーが出席した。

同作は、1990年のスタートから21年にわたり全10シリーズを放送、2011年9月に連続ドラマとして終止符を打った国民的ホームドラマ。連続ドラマの終了後は、2012年9月と2013年5月に、それぞれ2週連続で2時間スペシャルを放送し、全505回の平均視聴率20.5％（※視聴率はビデオリサーチ調べ・関東地区）という記録を残した。

今作は、岡倉大吉が突然の病で急逝したことで起こる5人姉妹の動揺を中心に描かれる。主人不在の小料理屋「おかくら」はどうするのか、誰が父の遺産を相続するのかなど、姉妹にふりかかるさまざまな問題を通し、社会が抱える悩みや事件を取り上げ、人々を取り巻く日常をリアルに掘り起こす。

山岡久乃、藤岡琢也に続き、宇津井健が亡くなり、「渡鬼はやめる」と決めていたという橋田は「病院に行ってもクルーズに行っても、皆さん“渡鬼はいつやるんですか”とおっしゃって下さる。だからやらないと申し訳ないような気がしたのと、トレードマークが渡鬼しかないなら書いてやるぞと思いまして、渡鬼以外も書いているんだけど（笑）。それと、上の世代が亡くなったらおしまいかと思いきや、実はそうではない。泉ピン子さんや長山藍子さんなど、若かった世代の人が年を取り、お姑さんの世代になったので、また新たなドラマが出来るのではと思った」と、放送の経緯を告白。遺産相続というテーマで再び筆を執った理由について、橋田は「親の遺産を相続しようなんて大間違い。みんな当てにしちゃうのかな、という思いもあった。いつの時代もさまざまな社会問題があるが、新たなドラマよりも、皆さんが知っているドラマで訴える方がわかりやすいと思う。それに、説明がいらないので書くのが楽。もう書くなと言われるかもしれませんが（笑）」と持論をまじえて語った。

また、藤岡琢也、宇津井健が演じてきた大吉役は、今後3人目は立てない予定。昨年亡くなった宇津井とは、石井は「女たちの忠臣蔵」などで、橋田も「たんぽぽ」（日本テレビ系）などで仕事を共にしていた。石井は「藤岡さんが亡くなった時、橋田先生と次の大吉役について話したのですが、ふたり同時に宇津井さんの名前を出しました。藤岡さんとは違う大吉を演じていただけると思ったので」と起用のきっかけをコメント。また、「大吉役を藤岡さんで何年も続けていたので、宇津井さんも撮影現場に入りにくかった部分があったと思います。ですが、初めてのリハーサルで、みんなが“お父さんお帰りなさい”と言って。宇津井さんは、そのおかげで“これはやらねば”と思ったそうです」と振り返った。現在、現場には宇津井の写真は飾らず、大吉の厨子と仕事着を置いているという。石井は「写真を見たら、皆さんせりふを言えなくなると思うから。お父さんの話をすると言葉が出なくなる時もあり、皆さん辛いけど我慢しているように見えた。ひとりがしっとりするとみんながそういう気分になるので、明るくいていただこうと思っています」と現場の様子を明かした。

さらに、次回作について聞かれた橋田は「老人問題や子育て、どう年を取るかなど、書きたいテーマはたくさんある。世の中問題だらけなので、ピックアップすれば渡鬼でいくらでも書けます。今後も書きたいことがあったら渡鬼が一番！」と。石井は「ホームドラマは基本。家族の中にはいろいろな出来事がありますが、それをどう見つめていくかを書ける作家が今少なくなっている。橋田さんは、何でもないドラマの中に“ドラマ”を描いている点がすごい。家族の問題を、意地悪く温かく見つめて書いている。私もいろいろ作ってきたけど、やはり普通のドラマをやってきたい」とコメント。橋田は「90歳で書いている人って他にいませんよね？　自分ではわからないので、皆さんおかしかったら“あいつは書くことがどうも変だ”と記事にして下さいね（笑）。おっしゃっていただけると気がつくので」と茶化すも、「私はホームドラマしか書けないから、これでずっと勝負してきた。それに、ホームドラマの方が温かいものが書けると思うし、亡くなった主人の遺言で不倫と殺しは書くなと言われていますし。最近は特殊な家族でないとドラマにならないかなとも思っていますが、今度も何でもない話を書かせていただけたら」と語っていた。

■橋田壽賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』スペシャル　前編
2015年2月16日（月）21:00～22:54（TBS系列）

■橋田壽賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』スペシャル　後編
2015年2月23日（月）21:00～22:54（TBS系列）