恒松祐里、黒沢清は「不思議な雰囲気」侵略者役へのアドバイスとは

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恒松祐里、黒沢清は「不思議な雰囲気」侵略者役へのアドバイスとは

黒沢清監督が手がける映画『散歩する侵略者』は、数日間の行方不明の後、不仲だった夫がまるで別人のようになって帰ってくるところから始まる。急に穏やかで優しくなった夫に戸惑う加瀬鳴海(長澤まさみ)。夫・真治(松田龍平)は会社を辞め、毎日散歩に出かけていく。一体何をしているのか……。その頃、町では一家惨殺事件が発生し、奇妙な現象が頻発。ジャーナリストの桜井(長谷川博己)は取材中に、天野(高杉真宙)という謎の若者に出会い、二人は事件の鍵を握る女子高校生・立花あきらの行方を探し始める。やがて町は静かに不穏な世界へと姿を変え、事態は思わぬ方向へと動く。「地球を侵略しに来た」と真治から衝撃の告白を受ける鳴海。当たり前の日常は、ある日突然終わりを告げる。

そんな本作で侵略者のひとり・立花あきらを演じているのは、NHK連続テレビ小説『まれ』や大河ドラマ『真田丸』をはじめ、映画『俺物語!!』『ハルチカ』『サクラダリセット 前篇・後篇』といった話題作に出演している、恒松祐里さん。このインタビューでは、オファーを受けた際の心境や役作りのポイント、共演者とのエピソードなどについて語っていただいた。

――出演が決まった際の心境はいかがでしたか?

最初は、黒沢監督の映画と聞いたので、作品をいくつか見させていただきました。すごく不思議な雰囲気の映画ばかりなのですが、不気味だけどおしゃれで、見たこともない感覚というか、私がこれまで経験した現場とは違う雰囲気の作品だったので、面白い映画に出させていただけるなと思いました。あと、侵略者の役と聞いて「え? どんな役だろう」という心境でした。どちらかというと、プレッシャーを感じたというよりはワクワクした気持ちでいっぱいでした。

――ご自身が演じているあきらはどんな役ですか?

最初は普通の女の子だったんですけど、侵略者に体を乗っ取られてしまいます。劇中ではアクションシーンもやらせていただいていますし、この作品の中で一番侵略者らしくて、人間からは一番遠い役だと思います。

――役作りにあたり苦労したことは?

いつも役作りをする時は身近な人などに当てはめて演じたりするのですが、今回は人間じゃなかったので想像するにも一から考えなきゃいけなかったところが難しかったです。あきら役にはかなり迷ったりするところがあったんですけど、考えに考えて最終的に決めたのが、ちょっとぼーっとしようって。あきらは他の人間とは違って複雑じゃなくて、人間らしい感情や考えがない女の子だったので、なるべく人間からは離れられるように無で、なるべく喜怒哀楽なく役を生きようと思いました。

――ご自身とあきらで似ていると思うポイントはありますか?

私は普段人を殴ったりしたことはないので……全くないですね(笑)

――黒沢監督のこれまでの印象は?

怖い作品を撮る方なのでちょっと不気味な方かと思っていたら全然そんなことはなくて優しい方でした。でも、やっぱりちょっと作品の雰囲気に合うというか、この作品の中にいそうな雰囲気を持った監督で、普通の人というよりもすごく独特で不思議な雰囲気をまとっている方だなと思いました。

――そんな監督から演技指導などのアドバイスは?

あきら役を作るのにヒントになったのが、監督からアクションシーンの際に指導してもらった「笑いながらアクションをして」という言葉です。これがあきらを作る上ですごく参考になっています。最初はアクションをする時は怖い顔をした方がいいのかなと思っていたんですけど、監督が「人間ってこれくらいの突きで倒れるんだ、人間ってこれくらいの蹴りで倒れるんだ、人間っておもしろーい」って思えるようなアクションにして欲しいと言われて、それがヒントになりました。笑いながらアクションのできる女の子なんだな、というのを根本的に置いて役作りをしました。

――あきらを演じる上で過激なシーンも多かったと思いますが特に印象深かったシーンは?

難しかったのは、3回目のアクションシーンで一気に二人を倒すところは、動きも複雑だったので大変でした。あとは、最初の児嶋一哉さんに飛び乗る場面は、児嶋さんの身長が高かったので苦労しました。リハでもたくさん練習し、アクションを二人で頑張ったので友情が深まったかもしれません。

――主演のお二人とはお話されましたか?

長澤さんと松田さんとはあまりお会いする機会がなくて、撮影も別々に撮っていたので2回くらいしかお話する機会がなかったです。でも、松田さんとはお昼を食べている時に二人で侵略者の話になって、松田さんが「あきらが一番仕事してる侵略者だよね」という話をしていて、「確かにそうだな」と思って……(笑) その一言が印象に残っています。

――同じく侵略者を演じられていた高杉真宙さんとはいかがでしたか?

高杉さんは人見知りだったので、私が心を開こうと思い色々なお話で質問攻めしました(笑) 「好きな食べ物は何ですか?」「最近あった面白かったことは何ですか?」などを聞いたのですが、結局仲良くなれたのかわかんないです(笑) 撮影中は高杉さんと長谷川さんと一緒にいる事が多かったです。長谷川さんは人生経験が豊富で、私と高杉さんは同年代なので、長谷川さんが海外旅行に行った話や一人旅の話、大学時代の話など、長谷川さんの人生にまつわる話を二人で聞いて「へぇ~」となっていました。

――そんな皆さんと作り上げた本作品の見どころは?

要素がたくさんあるので、見どころもたくさんあります。特に見ていただきたいのは、私のアクションシーンです。児嶋さんをボコボコにするシーンも面白いですし、頑張りました(笑) あと、こういった作品で概念を奪うという考え方は今までなかったと思うので、そこはすごく面白いなと思います。多分見ている方も「今こういう概念、俺の中にもあるよな」とか思うだろうし、侵略者がそれに気づかせてくれるのは面白いなと思いました。映画を観た方には、ぜひ自分の中にある概念について考えてみて欲しいですね。

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