5月25日放送の『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ・日本テレビ系)では後半、「ヒミツのOSAKA」と題して大阪弁を扱った。その中で司会の大阪フミン・久本雅美が「大阪弁には毒素がある」と言い放ったのだがその真意とは?
筆者は大阪発の番組を通して子どもの頃から大阪弁には馴染んできたつもりだ。ある程度は喋れると自分では思っているのだが、大阪の友人の前で大阪弁のつもりの会話をすると、ムッとされてしまう。そう、意外に大阪弁は微妙な部分まで使いこなすのは難しい。詰めが甘いと大阪フミンはイラっとするらしいのだ。こちらは大阪人の楽しさに少しでも近づこうとしているだけなのだが、その壁の高さには立ちすくむしかない。
この日の『ケンミンSHOW』でも街ゆく大阪人に他ケンミンの大阪弁について聞くと「ホラホラどや関西弁、という感じでキイッてなる」「とくに東京の人が使ってるのはなんか鼻につく」「絶対バカにしてる」と口々に攻撃的だ。
「ちょっとの違いがイラっとくる」「喋んなて思う」「エセエセやから」と、とにかくもう散々な言い様。
とくに言葉の抑揚は大きいらしい。バナナは「バ↓ナナ」ではなく「バ↑ナ↓ナ」と真ん中の「ナ」が上がる。おにぎりは「おに↓ぎり」でなく「おに↑ぎ↓り」。番組に登場した大阪マダムは、後者じゃないと「おにぎり」と認めないと言わんばかりだ。
最後の方には千葉出身、大阪在住5年の青年が同僚とともに登場。ご本人としては大阪弁を「話せてるつもり」と言うのだが、大阪フミンの同僚は「OK出してない」「認めない」と口々に言い、千葉ケンミンの彼は打ちのめされていた。
VTR終了後、大阪フミンの内藤剛志が他ケンミンの大阪弁について力説。「面白いと思って使ってくるけど、使ってる大阪の人が面白いんであってお前がおもろいわけちゃう」と手厳しい。「大阪弁話せれば芸人なれると思ったら間違いやぞ」と締めくくる。そうだ、大阪人は笑いに一家言ありすごく厳しいのだ。
そんな大阪人に対する光浦靖子の「大阪に嫁に行ったら何年で喋れるようになればいいんですか?」という質問に、司会の久本雅美が「そのうち大阪弁になっていきます。大阪の言葉の力ってすごい。全部を変えていく毒素みたいのがあるみたい」と答えてスタジオは爆笑に包まれた。
「毒素」はギャグとしての発言だが、確かに大阪弁にはいつのまにか他ケンミンを侵してしまう不思議なパワーがあるようだ。なぜか喋りたくなり、喋れている気になってしまう。そして、大阪人のように陽気で前向きな人間に、キャラクターまで変わった気がしてくる。どうしても真似したくなるというものだ。
だが、今回の番組でよくわかったのは、中途半端にマスターして使うのは要注意。生半可な使い方では、大阪人に嫌われてしまう。何しろ言葉に厳しい人びとなのだ。もし突っ込まれたら素直に受け止め、大阪人とより一層親しい関係を築いていきたいものだ。
【文:境 治】