佐藤信介監督「“ニュー池松壮亮”の奥行きが…」8年振りで印象に変化『デスノートLNW』

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10月29日公開の映画『デスノート Light up the NEW world』。2006年に公開された映画『デスノート』から10年後に舞台を移し、正統な続編として紡がれる本作では、「そのノートに名前を書かれた人間は死ぬ」という死神のノート、“デスノート”が地上にもたらされ、世界中が大混乱に陥っていた。そんな中、キラ事件に精通した“デスノートを追う男”三島創(東出昌大)を筆頭に、5人の対策特別チームの捜査官たちを中心とした<デスノート対策本部>が構えられていた。そこに、世界的名探偵にして、Lの正統な後継者“デスノートを封じる男”竜崎(池松壮亮)も加わり事件解明に当たる。そして、とある事件から一冊のデスノートを入手するが、その現場には、キラ信奉者“デスノートを制する男”紫苑(菅田将暉)の姿が……。“人間界で同時に存在していいノートは6冊まで”という「6冊ルール」のもと、今、デスノートを巡る三つ巴の戦いの火蓋が切って落とされる。

そんな注目作の監督を務めたのが、『GANTZ』『GANTZ:PERFECT ANSWER』(いずれも2011)、『図書館戦争』シリーズ(13・15)、『アイアムアヒーロー』(16)などを手がけた佐藤信介さん。このインタビューでは、製作エピソードやキャスト陣の印象、作品へのこだわりなどを語っていただいた。

――本作の監督を務めることになった経緯は?

前作を担当し、本作でもプロデューサーを務める佐藤貴博さんからお誘いいただきました。もともと、『GANTZ』でご一緒した経緯があったりして、そのあとに何か考えようという時期がありました。その時に浮かび上がった内の一つが、『デスノート』の10年後のストーリー。原作がもう終わっているので、オリジナルで何かできないかっていう話があったのがきっかけです。前作が終わって、そのあとに全くのオリジナルストーリーが続くということなので、そのときは何もアイデアはなかったですけど、オリジナルの物語がどうなるんだろう、みたいなワクワク感はありましたね。

――完全オリジナル作品ということですが、製作はどのように進められましたか?

ストーリーを作るところはすごく時間をかけたし、(原作者の)大場つぐみ先生にもアイデアをいただいたり、脚本を読んでもらったりとかしました。過去のいろんな物語があったり、デスノートのルールもあったりしますので、ストーリー作りはとにかく一番力を入れてやっていたところですね。楽しみだったという意味で言うと、前作は確固とした世界観を作り上げている作品ですので、それを変化させるのではなくて、完全にゼロから「『デスノート』ってこんなのもあるよね」と作品を作り上げるということに集中できるというのが楽しかったですね。

――そんな本作のキーパーソンを演じる東出さんの印象はいかがでしたか?

東出さんは、もっと涼しげな感じがしていたんですけど、接してみて非常に熱い方だなと思いました。僕も初めてお会いしたのですが、結構熱い人なんだなと。結構豪快なんですよね。その辺が僕的にはいいなと。三島という役も、非常に落ち着いていて冷静なようで、情熱的過ぎるところがあるという役柄だったので、ぴったりだなという感じがしました。今回も、主人公として走り過ぎちゃうところがキーになる部分があったりするので、主人公として一人のキャラクター作りを、非常に熱を持って出来たなというのがありました。

――竜崎役の池松さんとは『砂時計』以来の8年振り。印象の変化などはありましたか?

当時はまだ高校生だったんですけど、すごく寡黙で落ち着いていました。僕が見た池松青年は、ゲラゲラ大笑いするような人ではなくて、「ほんとに高校生なのか、この人は?」というような、ちょっと老成したような感じがありました。それで、今回会ってみたらものすごくユニークな人なんだなと感じましたね。今回の竜崎もそうなんですけど、病んだ感じというか、人生の裏が見えない黒い感じのような印象は、当時はまるでなかったんです。ただ、今回会ってみて、非常に奥深い、入り込みたくないような奥行きを感じて、そこが一番の発見であり面白いところでした。単に竜崎役をクールに淡々とやることもできると思ったのですが、本読みで一度やった時に『デスノート』のだいたいのイメージが見えました。でも、緻密にいろんなことを推理しながら進んでいく話だったので、「そういうこととはまた別軸の暴れた感じというのが竜崎にあってもいいかもね」という話をしていて、だんだん池松さんの中にふつふつと盛り上がってきたものがあったと思います。僕らが新たに接した“ニュー池松”さんの奥行とか、あるいはドロッとした感じとか、人をもてあそぶ感じというか。そう感じる部分が竜崎にも色濃く投影されたような気がしていて、池松さん自身のそういう部分が活かされていると思いました。

――サイバーテロリスト・紫苑役の菅田さんの印象は?

見ている印象としては結構とんがった、研ぎ澄まされたものを感じる時があります。ですが、本人は非常に肩の力が抜けていながらも、我々が演出していてもすごく微妙なニュアンスのところを、「こんな感じかな」と言いながら確実に返そうとして下さる人だなと。役者としてもそうなんですけど、人としてすごく誠実な感じがしました。確実に役や演出ににじりよっていく役者だなと思いました。テクニシャンという言葉が正しいかは別として、すごく自然体に演じられているのですけど、「演技者だな」みたいな感じがしました。

――冒頭では、デスノート所有者・青井さくらによって渋谷の街が恐怖に包まれますが、さくらを演じる川栄李奈さんはいかがでしたか?

青井さくらは、最初の脚本の時点ではちょっと狂っちゃった感じの役柄みたいなところがありました。でも、渋谷でデスノートを持って殺すとなったら、もうちょっとダークな感じだけじゃなくて、着ているものとかの色使いもそうですが、ポップな感じなんだけど全然違うことをやっているみたいなキャラクターが出せないかなと思いました。それで、川栄さんにやっていただきたいなと。よく考えると非常に複雑なキャラクターだと思うんですけど、僕達がいろいろああでもないこうでもないって言ってることを、川栄さんが「はい」と飲んでくださって、淡々とやっていただいて非常に面白かったです。でも、撮影が結構大変だったんですよ。寒かったのに、すごく忍耐強い方というか、表情を変えずにやられていましたね。

――キャストのみなさんとの印象深いエピソードなどはありますか?

みんなで焼肉屋に行った時に、お店から壁にサインを書いてほしいという話になって、突然、東出さんがものすごく大きく書き始めて、本当に豪快だなと思って。そこからみんなどんどん壊れた感じで書いていって、人の名前とか書いてました(笑)。みんなキャラクターがバラバラで面白かったですけどね。竜崎とはちょっとけん制し合う役だから、最初はあまり仲良くしないように、話さないようにしようかなって思っていたらしいんですけど、普通に仲良くなっていてワイワイガヤガヤ、楽しんでいました。

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