木村文乃インタビュー 映画『イニシエーション・ラブ』の恋愛観を語る

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甘く切ないラブストーリーが最後の2行で驚愕のミステリーに変貌する独創性が話題を呼び累計発行部数150万部を突破した、乾くるみの大ヒット小説を鬼才・堤幸彦監督が実写映画化した『イニシエーション・ラブ』が、5月23日(土)に公開される。主演を務める松田翔太は、従来のクールなイメージから一転、二人の女性の間で揺れ動く青年「鈴木」を演じ、ヒロイン役の前田敦子も、女優としてのキャリアの中で最もキュートとの呼び声も高い「マユ」を熱演し、初の本格的なラブシーンに挑んでいる。

ストーリーは、合コンで出会った、就職活動中の奥手な大学生・鈴木と歯科助手・マユのぎこちない恋愛模様を描いた静岡編(Side-A)と、就職して上京した鈴木が静岡に残ったマユと遠距離恋愛を始め、その関係が徐々に崩壊してしまう東京編(Side-B)の2編で展開。この東京編でキーパーソンとなる、鈴木と惹かれ合う同僚の女性・美弥子を演じた木村文乃さんにインタビューを行い、初めて参加した堤幸彦監督の現場の様子や、本作で描かれている恋愛観、衝撃のラストシーンについてなど、たっぷり語っていただいた。

――出演が決まり、台本を読んだ時の感想を教えてください。

原作は10年前に読んでいて、すごく面白かったので印象に残っていました。もちろん、当時はその登場人物を自分が演じるなんて想像もしていなかったので、不思議な気持ちでしたね。いただいた台本では、美弥子が“イニシエーション・ラブ”という言葉の意味を説明する場面があるのですが、これは原作にはない設定なので、責任重大だなと。また、鈴木とマユの間に割って入る役どころなので、背負うものは大きかったですけど、それ以上に、とにかく撮影が楽しくて仕方なかったです。

――撮影現場はどんな様子でしたか?

松田さんや堤監督、あと共演シーンはないものの、自分の撮影がなくても現場にいらした前田さんと、撮影の合間に話をして盛り上がっていましたね。ご一緒したかった堤監督とお仕事ができるのが嬉しくて、テンションが上がっていました。堤監督の現場は面白いアイデアが出たらその場でどんどん汲み取って、少しでもいい映画にしよう、楽しいことをしよう、という気持ちが前面に出ている組だと感じました。

――堤監督の現場を体験されて、どんなことが刺激になりましたか?

“物事をよく見る”ということと、“遊び心”が大事だな、と思いました。「どうしてそんなに色々な発想が出てくるんですか?」と撮影中に堤監督にお聞きしたら、「僕はとにかく四六時中、何でも、どこでも見ています」と仰っていました。その見たものの一つ一つを、ご自身の嗜好を通して全てを記憶し、ストックとして残していくんでしょうね。それらを、「ここであれを使ってみたら面白いかな」という風に、遊び心でどんどん採用していくのですが、とにかくその幅が大きいから、飽きることがないですね。出来上がった映像は、自分で台本を読んでいた時よりもずっと面白いんです。

――木村さんが演じられた美弥子ですが、役作りなどで堤監督とお話されたことは?

最初の衣装合わせの時に、「洗練された都会の女性でお願いします」と仰ったあとは任せてくださいました。あとは、細かい間とかセリフの言い方ですね。三浦(貴大)さん演じる海藤さんが話しかけてきた時に、内心迷惑に思っているのに「ああ」と苦笑いをする芝居をしていたんですね。でも、堤監督が「東京の美人はそんなことしないんです」と仰って、「なるほど、そういうものですか」と。なので、かわいそうなくらい、海藤さんには冷たく接してしまいました(笑)。“都会の女性”の象徴である美弥子は、自分に対してプラスであればどんどん乗っかっていくけど、プラスにならないと思ったら切り捨てるようなところがあります。堤監督の演出のおかげで、私もそのことをちゃんと理解して演じることができました。

――前田敦子さん演じるマユは、美弥子とは対照的に、地方に住むおっとりとした女性。木村さん自身は、マユと美弥子、どちらに魅力を感じますか?

私は断然、マユちゃん派です(笑)。「ただいま」って帰ってきたら「おかえり」って飛びついてくるあの感じは、男性が憧れるアイドル像や彼女像として、理想的じゃないかと思います。その時のマユの背中に花を背負わせる堤監督の演出もすごくハマっていて、彼女の登場シーンは個人的に大好きなシーンです。

――ご自身が演じた美弥子に関してはいかがですか?

そうですね、大人の男性は、美弥子の方がいいと思う方も多いかも知れません。美弥子の良さは、仕事の話が出来るところ。また、「仕事と私、どっちが大事なの?」と言わないタイプなのだと思いますね。私自身も、どちらかといえば美弥子に近いですけど、憧れというか、好きなのはマユちゃんの方だという……難しいですね(笑)。

――美弥子は鈴木に対して、マユとの恋は“イニシエーション・ラブ”(大人になるための通過儀礼としての恋)だったのではないかと説きます。

美弥子は、もし鈴木くんとマユちゃんの恋が“イニシエーション・ラブ”だったなら、その後の“大人同士の恋愛”は私と始めたらどうか、と絶妙に誘導していますよね。でも、男性にとって何が幸せかは人それぞれだと思うんです。マユちゃんとの初々しい恋を選ぶ人もいれば、仕事をバリバリやりたいから良きパートナーが欲しくて美弥子を選ぶ人もいます。美弥子が現れなければ鈴木くんとマユの関係性には別の展開もあったのかなと思います。

――木村さんから見て、“鈴木”は男性としてどう思いますか?

私は、自分が「これをやる」と決めて真っすぐ目標に向かっていく鈴木くんは素敵だし、かわいいと思います。ただ、ある意味、美弥子に流されてしまった形になった鈴木くんは、結局、マユに対してひどいことをしてしまったり、文句や愚痴が多くなってしまう。美弥子はその姿を見ていないけど、その一面を知ってしまったら「男らしくない」と幻滅するかもしれません。知らないから、鈴木くんを好きでいられるのでしょうけど。

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