AKB48横山由依、“次期総監督”と“おたべ”役を重ねた『マジすか学園4』演出・岩本仁志インタビュー[2]

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AKB48グループのメンバー総出演の連続ドラマ『マジすか学園4』(日本テレビ、毎週月曜24:59~25:29、Huluで先行配信)の演出を担当している岩本仁志さんにインタビューを行い、撮影の裏話などを語ってもらった。
([1]からの続き)

――現場のムードメーカーと言えば誰ですか?

基本、皆でワイワイという感じですね。まあ、意外と面白いのは横山(由依)だったりします。ずっと一人でくだらないギャグをやっていて(笑)。あと、非常に騒がしいのは小嶋(真子)と大和田(南那)の二人。どこにいても声が聞こえるくらい元気で、「お前ら、いい加減にしろ」と(笑)。いつも「お前ら、撮ってないときに遊ぶな」、「お前ら、宮脇を撮ってる時にブランコこぐのやめてくれ」、「余裕があったら台本読んでろ~」みたいな感じでしたね。

――そんな小嶋さんと大和田さんは、劇中のキャラクターとも被りますね。

ですね。でも、この二人は、芝居に関してはすごくセンスがいいんですよ。直前にケラケラって笑っていても、「行くよ、本番」って言ってカメラを向けると、スッといい表情をするんですね。最初の台本読みの時にも、圧倒的にいいなと思ったのはこの二人です。だからこそ、カミソリ(小嶋)とゾンビ(大和田)のキャラクターも広げていくことができました。

――他に、印象的なエピソードはありましたか?

横山は、もはや演技に風格さえ漂ってますよね。それには、ちゃんと背景があって。撮影に入る直前に、みなみがAKB48卒業宣言、というニュースが飛び込んできたんですね。次の日、みなみが「おはようございます」と普通に入ってきて、僕が「辞めるんだって?」と聞いたら、「はい」みたいな会話があったのを覚えています。そして、彼女の後継者として横山が次期総監督に、という話があったじゃないですか。まさにタイムリーでした。横山が演じているおたべも、色々なものを背負っている役どころ。横山も、意識せずとも自分と重ねたでしょうし、僕らも現実とリンクさせようと意識して演出しました。そういうメタフィクション的な効果もあって、横山のお芝居はすごかったですね。おたべ戦は、本当に泣けるものに仕上がっています。

――それぞれのキャラクターが現実とリンクしているのも、「マジすか」の魅力ですよね。

はい。川栄(李奈)の役名は、キャラ通り「バカモノ」ですし(笑)。でも、川栄は芝居がしっかりしているし、アクションも安定しているし、皆を引っ張ることができる部分もあるんですが、それは役柄にも表れてますよね。木﨑(ゆりあ)も、最初はあんなにキックが上がるとは思ってなかったんです。彼女は過去作にも出ていましたが、ネットで調べていたら「蹴りがうまい」と載ってて。やらせてみたら本当にうまくて、そこから「マジックは蹴りでいきましょう」となりました。本人に「何でうまいの?」と聞いたら、「お父さんが、護身のためにと教えてくれました」と言ってたけど、本当かな~(笑)。

――役名も面白いですよね。指原莉乃さん(第1話OGゲスト)の役名が“スキャンダル”とか……。

劇中にも、「伝説の“コレ”絡みで田舎に飛ばされて」みたいなセリフがありますね。まんまやないか、みたいな(笑)。さすがに「大丈夫なんですか?」と聞いたら、AKBサイドも秋元康さんも大丈夫っていうから大丈夫だろうって。あとは、みなみが、見守るポジションの役柄なのもそうですね。彼女が現場に現れると、いつも皆が「たかみなさん、おはようございます!」と寄っていくので、僕もつい「よろしくお願いします!」と平身低頭で言っちゃいたくなるくらい、貫禄がある(笑)。あと、彼女は過去作ではちょっとずつしか出てなかったので「今回はずっと出られて嬉しい」みたいなことを言っていましたね。卒業宣言と撮影の時期が偶然被った、というのもあるでしょうけど、若手ががんばっているのを見て、感慨深そうにしていたのが印象的でした。

――また一方で、宮脇咲良さんが演じるさくらは、普段のキャラクターとは全然違う役柄ですね。

宮脇に関しては、“てっぺんを目指す”というコンセプトと現実との親和はともかく、役としての性格は全然違いましたね。過去作でいえば、1が今回に一番近い作りだと思うんですけど、前田敦子さんの場合は、本人とも結構シンクロしているキャラクターなのでは、と思いました。でも、宮脇の場合はむしろ真逆で、素の彼女はもう少し柔らかい、きょとんとした感じの子なので(笑)。それがいきなり、渋く「マジだよ」と言ったり、全然笑わなかったり、立ち方は肩幅に開いて重心は真ん中……みたいな迫力のあるキャラにしなくちゃいけないので、難しかったと思いますよ。

――お芝居の面で、宮脇さんの成長を感じた部分は?

最初のうちは、芝居は全然だめでも、とりあえず殺陣ができれば、と思っていたんですね。正直なところ。でも、後半にさしかかるにつれて、だんだんセリフも板についてきて、撮っていても「さくら、カッコ良いな~」と。僕が色々と教えたことを、宮脇がきちんとモノにしてくれたからこそだと思います。例えば、新人あるあるなんですけど、最初はどうしても“まばたき”をしてしまうので、していないところだけを編集で繋ぐのがすごく大変だったんですね。なので、セリフを喋っているとき、気持ちが動いた瞬間、そういう時には絶対使われるから、使われないと思った時に使われないと思った時にまばたきをしなさいと言いました。そうしたら、すごく素直に、カメラを背にしている時に一生懸命パチパチと瞬きをしていましたね(笑)。他にも、渋い目線の投げ方とかニラみ方とか、僕の持てる限りのテクニックは伝授したつもりです。

――宮脇さんをはじめ、岩本さんの演出で役者への第一歩を踏み出した彼女たちに、ひと言お願いします。

昔はもっと、この年代のアイドルが芝居もがんばっていた気がします。中山美穂さんも、観月ありささんも、14歳とかからずっと主演してましたよね。今は、20歳以下で主役張れる女の子って、あまり出てきていない気がします。今回はもちろん、AKBグループの中からだけのキャスティングではあるんだけど、この年代でキャリアを積んでいけるのは幸運なこと。きっちり芝居を磨いていけば、彼女たちのガッツなら絶対、もっと上にいけると思います。頑張って欲しいですね。
(インタビュー[3]へ続く)

[演出・岩本仁志]他のドラマ作品は、「君といた夏」「白線流し」「ナースのお仕事」(いずれもフジテレビ)、「女王の教室」「野ブタ。をプロデュース」「斉藤さん」「斉藤さん2」(いずれも日本テレビ)など。映画監督作品は「明日があるさ THE MOVIE」(2002年)、「MW-ムウ-」(2009年)。

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