仏教は「自己鍛錬システム」という視点でブッダの知恵を読み解く

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古今東西の「名著」を25分×4回、つまり100分で読み解く番組『100分de名著』(NHK Eテレ 毎週水曜22時~22時24分)で4月に取り上げるのは、仏教の創始者・ブッダの死後まもなく、弟子たちによって編纂された経典「大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)」。古代仏教史や戒律の研究者、花園大学の佐々木閑教授がわかりやすく解説する。

およそ2500年前に誕生した仏教。創始者ブッダの死後まもなく、弟子たちによって編纂され、数ある経典の中で、ブッダ本人の死のありさまが最も忠実に記述されていると考えられている、古代インドのパーリ語で記された「マハーパリニッバーナ・スッタンタ」。この中に第16経として収録されている上座部仏教の一経典が「大般涅槃経」だ。

パーリ語を直訳すれば「偉大なるブッダの死」という意味になるこの経典は、東南アジアでは基本経典の一つとして重要視され、国の異なる僧侶同士が会話する時には、今でもパーリ語が使われているほど。

佐々木氏によれば、ブッダの教えは単なる宗教ではない。悩みを抱えている人が自分自身を見つめ、さまざまな苦しみを克服していくための「自己鍛錬システム」だという。とりわけ「大般涅槃経」には、自分が死んでリーダーが不在になった後も、このシステムが長期にわたって維持・管理できるような工夫や知恵が数多く記されている。これは他の宗教にはあまりみられない特徴だ。合理的な知恵によって心の本質を見極め、苦しみからの脱却を目指そうとしていたブッダ。彼が死の直前に私たちに残そうとしたメッセージとは何だったのだろうか?

4月1日は第1回「涅槃(ねはん)への旅立ち」を放送。80歳を迎えたブッダは霊鷲山に滞在していた。身体の衰えがひどく自身の死期が近いことを悟ったブッダは故郷を目指して最後の旅に旅立つことを決意する。その大きな目的の一つは、自分の死後、これまで解き明かしてきた真理や修行方法などをできるだけ多くの人たちに教え伝えることだった。旅立ち前にまず行ったのは意外にも、隣国への侵略計画をすすめる阿闍世王への忠言。そこには真に繁栄する国の条件が示されていた。佐々木閑さんは、その裏に、自分の死後、仏教や教団が永く維持・存続するための教えが込められているという。第1回は「大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)」の全体像を概観しつつ、ブッダが「自己鍛錬システム」として説いてきた仏教の本質と、それをいかにして長く存続させるかというブッダの知恵を読み解く。

出演:佐々木閑:1956年、福井県で浄土真宗の寺に生まれる 京都大学工学部工業化学科、文学部哲学科仏教学専攻卒業 現在、花園大学教授

朗読:大杉蓮(ブッダ役)、音尾琢真(アーナンダ役) 

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