『SmaSTATION!!』終了後のテレビ朝日新ドラマ枠『オトナ高校』の可能性

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一部を除き、今クールの連続ドラマの放送がスタートしたが、放送前からひそかに注目を集めていたのが、テレビ朝日系で放送中の土曜ナイトドラマ『オトナ高校』(毎週土曜23:05~)だ。

本作は、メイン司会を香取慎吾が務め、16年間続いていた情報・教養バラエティ番組『SmaSTATION!!』が先月で終了し、その枠を引き継いだドラマということで、「どんなドラマになるのだろう」と世間では大きな関心が集まっていたが、放送元のテレビ朝日は「若いデジタル世代に幅広い方向で楽しんでもらえる斬新な企画を届ける新たな連続ドラマ枠」と方向性を説明していた。

そのコンセプトの通り、物語の舞台となる「オトナ高校」には、異性と性体験のない30歳以上の男女を生徒として強制召喚されるという、かなり斬新な設定。ここに集うヤラミソ(やらずに三十路)たちが、無事に童貞と処女を卒業するまで奮闘するストーリーが描かれる。キャラクターの弾け具合や、地上波とは思えないような攻めの姿勢が早くも話題となっており、10月21日放送の第2話でも、「セックスはゴールじゃない、スタートラインに過ぎないんです!」、「プレゼントしてあげる、私のバージン!」といった過激なセリフが飛び出していた。

しかも、その「ヤラミソ」高校生を演じるのが、三浦春馬黒木メイサ、高橋克実、山田真歩ら豪華キャストが出演。三浦は東大卒でメガバンクに務める、高身長でイケメンの超エリートながら、そのプライドの高さで、30歳になっても童貞で「チェリート」と揶揄される存在。一方の黒木も、商社で働くキャリアウーマンだが、気が強く「可愛くない女」として常に2番手の女に甘んじ「スペア」という屈辱的なあだ名をつけられる女性を演じる。

三浦や黒木のパブリックイメージからは、かけ離れたような配役だが、制作発表会見では、どちらも俳優というキャリアのなかで「挑戦」と位置づけ、非常に意欲的に作品に向き合っていることを明かしていた。その言葉通り、劇中三浦は、すべてを兼ね備えているエリートでありながらも、こじらせまくっている「チェリート」くんを見事なまでに表現し、SNS上では三浦の顔芸(!?)に対して賛辞が飛び交っているほど。また、「童貞・処女」たちを鼓舞する先生役の流星涼や松井愛莉も、これまでのさわやかなイメージとはかけ離れたような暴言、毒舌を発するなど、新鮮なキャスティングとなっている。

前クールで非常に高い支持を受けつつも、かなり激しいお色気シーンが登場するなど「ゴールデンで家族と一緒に観ることに抵抗がある」という嘆きが一部で聞かれた『僕たちがやりました』(カンテレ・フジテレビ系)というドラマがあったが、本作の放送時間は土曜の深夜と、攻める内容にはもってこいの枠だ。

ストーリー展開も、偏見や差別に対して非常にセンシティブになっている現代社会のなかで、性体験未経験であることや、個人の劣等感という部分を徹底的にデフォルメして、コミカルに描くという挑戦的な流れになっている。脚本を担当している橋本裕志も「周回遅れの青春」というコンセプトのもと「この作品に賭ける思いは熱いです」と攻めの姿勢を貫く。

初回視聴率は5.4%というスタートを切った『オトナ高校』。「ヤレたら卒業??」というポップなコピーがポスターに書かれているが、コンプレックスに感じている部分をあえて深刻に描かずに、内在する問題を伝える手法は、まさに「若いデジタル世代」に刺さるのではないだろうか。今後の展開が非常に楽しみだ。

(文・磯部正和)

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