柾木玲弥グレる!? 特攻服で「オラオラ感出しちゃいました」『幸福のアリバイ〜Picture〜』

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陣内孝則が監督を務める映画『幸福(こうふく)のアリバイ〜Picture〜』が、11月18日(金)より全国にて公開される。陣内監督作の長編映画としては、『ロッカーズ ROCKERS』『スマイル~聖夜の奇跡~』に続いて9年ぶりの3作目。人生の一大行事ともいえる「葬式」「見合い」「成人」「誕生」「結婚」の5つのエピソードで綴られる物語だ。キャストには、中井貴一、柳葉敏郎、大地康雄、山崎樹範、浅利陽介、木南晴夏、柾木玲弥、清野菜名、入山法子、渡辺大、佐藤二朗、木村多江らが出演。そして脚本は、映画『桐島、部活やめるってよ』『幕が上がる』などを手掛けた喜安浩平が担当。誰もが経験する人生の節目を軸に、人間模様の表裏を巧みに描いたヒューマンドラマとして、極上のコメディへと昇華させた。

今回はエピソード「成人」で、成人式に特攻服で参加しようとするやんちゃな息子を演じた柾木玲弥さんにインタビュー。陣内監督の印象や演出、父親役の中井さん、母親役の木村さんとの共演などについても語っていただいた。

――オーディションを受けて出演が決まったそうですが、振り返ってみていかがですか?

実はオーディションの時に、陣内監督とお芝居をしたんです。これは事前に全く聞いていなかったのでとても緊張しました。そのオーディションで、陣内監督が「よし、俺が父親役をやる!」と、映画で中井さんが演じられている父親の役を、僕が息子の役でお芝居をしましたが「あまりうまくできなかったかも……」という感触だったので、役が決まったと聞いた時は嬉しかったです。それと同時に、父親役が中井さんであることを聞いていたので“怖かった”です。台本を呼んだら、ほぼ、ふたりの掛け合いの会話のお話だったので「これは難しそうなお芝居だな」と思っていました。

――オーディションでの芝居は、本編と変わりない感じだったのでしょうか?

はい。オーディション用の台本をいただいて、お話の内容や、役については教えていただいていて、大体同じでした。

――撮影に向けてどんな準備をされましたか?

台本を読むと、とにかく会話の応酬で……。“会話劇”というのは、ちょっとしたことで嘘に見えてしまうから、心情や気持ちの変化というのは絶対的に忘れちゃいけないと思い、台本を読みこむところから意識をしました。撮影までにリハーサルを2回やらせていただいて、そこでまた家に帰って一生懸命考えて、役を作っていくという準備を重ねていきました。

――この男の子の気持ちや考え方は、自分の中にスッと入ってきましたか?

他の役に比べると、入ってきた方だと思います。僕も去年成人式を迎えまして、同世代の役なので彼の心情や立場などは分かりやすかったです。

――演じる中で、一番苦労したことは?

ほぼ、ワンシチュエーションで、2人(父親:中井さんと息子:柾木さん)か3人(父親:中井さん、母親:木村さん、息子:柾木さん)の会話劇なんですが、これが本当に難しくて。アクションがあったり派手な大事件があったりするわけじゃなくて、日常の会話の中にクスッと笑える面白さがある作品なので、“会話の面白さ”を生み出す作業が一番大変でした。

――“俳優・中井貴一”さんと共演していかがでしたか?

具体的にお芝居について多くを話したということはありませんでしたが、演技などについては、お芝居が終わってからお芝居の事を言われるというのではなく、お芝居の中で教えていただいているような感覚でした。待ち時間などには、気さくに世間話をして下さいましたし、本当に父親のような方で、優しかったです。でも、僕はすごく緊張していました(笑) 

――撮影中で印象に残っている出来事はありましたか?

ちょっとハプニングだったので、本編では使われていませんが、中井さんが、僕の方へコーヒーを持ってくるシーンで、僕はクシャミをずっと我慢していて。コーヒーを持ってきた瞬間に中井さんの目の前でクシャミをしてしまったという事件がありました。その時に中井さんと陣内監督は、「いや、面白いよ、それ」、「息子っぽいよ」っておっしゃっていて、「これ、使うかもしれないわ」っていうやりとりをされていたのが印象的でした。でも、僕はクシャミを目の前でしてしまったのでかなり気まずかったです。

――特攻服は、実際着てみていかがでしたか?

「こんな衣装、この子はどこで買ったんだろう」と最初に思いました(笑)。でもこの子は、意外とコツコツ頑張るタイプだと思うので、小道具なども地道に買い集めて揃えたのかな、と。バイクにも細かい装飾がついていますが、そういうのもコツコツ改造している子なんだろうな、と想像をしました。実際にあの衣装を着た時に、ちょっといきがりたくなるような気分になり、「ほら、こんな服、他には無いでしょ」って、ちょっとオラオラ感を出しちゃいました(笑)。

――キャラクターを作るうえで、衣装も助けになったようですね。

そうですね。髪をリーゼント風にもりもり上げて、特攻服を着ると、役と同じ感覚で、「よっしゃー、成人式行くぞ!」って気合いが入りますね。僕は、自分の成人式に出られなかったので、この映画で、気持ちだけでも、成人式をさせていただきました。

――冒頭にボイスパーカッションが流れますが、あれは柾木さんのパフォーマンス?

はい。オーディションで「特技はボイスパーカッションです」と伝えた時に、陣内監督から「やってみて」と言われて披露はしましたが、まさか現場でボイパをするシーンは特にないだろうと、あまり何も考えていませんでした。そしたらある日、陣内監督から、「冒頭のシーンはボイパから始めようか。使うかわからないけど、とりあえずやってみて」と言われて、驚きました。自分のボイパがこんなにも活かされることは今までなかったので嬉しいですね。

――結構長めに流れていましたが、即興だったのですか?

即興です。あまり考えずに、思うままにやりました。ボイパのオンリーを録音(音のみを録音する事)した時は、1分半~2分ぐらいの間、続けてやっていた気がします。

――陣内監督の演出で印象に残っていることはありますか?

役者さんとしての陣内さんを、色んな作品で見ていますが、今回は、逆にあまり役者さんということを感じなかったかもしれないです。“陣内監督”でした。最初は自由にやらせていただき、その後に「そこらへんにあるものを蹴っていいよ」と、動きをつけて面白くしていく感じでした。今思い返すと、役者の気持ちわかっているから、ああいうことを言ってくれたんだな、とか、僕のことを、「動いている方が面白い」って言ってくれて、こんなに動かしてくれたんだな、と思っています。演出というよりも、監督に助けられたところが沢山ありました。

――木村多江さんと、息子役として共演されていかがでしたか?

はたから見ると、「こら、待ちなさい!」とか言いながら追いかけられたりして、すごくかわいらしい母と息子の光景ですが、やっている僕たちは結構本気ですよ(笑) 木村さんも、息子をあの恰好で成人式に行かせまいと、必死で僕の腕を掴んだりしていたんじゃないかな。力がはいっていました(笑)。

――この“家族”を体験していかがでしたか?

日本のどこかに存在していそうだな、という気分にさせられる家族だと思います。息子は、バイクを改造したり、ヤンチャをしたりするけど本当は両親のことが好きだし、仲が良いんだろうな、という想像ができる“絶妙な家族”です。

――本作には5つのエピソードがありますが、他の作品の脚本も読まれましたか?

ひととおりは読みました。始めは、一気に最初のページから順番通りに読んで、次に自分の出演する「成人」のところをじっくり読んでという感じでした。でも、全体のなかで、「成人」のパートがどういう意味を持っているのか、という点については、正直に言いますと、演じるのが精いっぱいで、これが全体の中のどういうポジションなのか、どういう意味を持たせているのかまで、深くは考えていなくて、僕としては「成人」という一つの映画を作っている気分でした。

――完成作品を通しで見た時の感想は?

本当に絶妙でしたね! 空気感とか、会話のセリフのチョイスとかもすごくグッとくるというか。本当にどのお話も、この世界のどこかにいそうな人達だな、という錯覚に陥るぐらいにリアルです。ホッとしている感じというか、見た後の余韻がすごいです。

――柾木さんが個人的に好きなエピソードは?

僕は「誕生」が好きです。出産を控えた妻の元へ向かう夫(浅利陽介)と義理の父親(柳葉敏郎)の会話が面白いですね。非常に気まずい空気の中のやりとり、あれがすごく絶妙で大好きです。

――今回、全編を通して“写真”もキーワードになっていますが、柾木さんご自身の写真にまつわるエピソードなど、思い出話があれば教えてください。

う~ん、写真にまつわるエピソード……そういえば、家族で写真を撮ったことがないかもしれません。考えてみれば、今初めて気が付きました。だから、今、「家族写真、撮ろう」って思いました(笑)。

――お仕事で写真を撮られることが多いと思いますが、すぐ慣れましたか?

動画なら大丈夫ですが、写真は本当に苦手です。やっと少し慣れてきましたが、カメラの前で全然動けないです(笑) ポーズをとっている自分を客観的に見て恥ずかしくなっちゃいますね。「あれ? なんでこんな格好つけているんだろう」って……(笑)。

――タイトルの「幸せ」にかけて、今幸せを感じる瞬間はどんな時?

すごく素直なことを言うと、美味しいものを食べて、美味しいお酒を飲んで……(笑) でも、自分が出演した作品が公開されることや、話題にしていただけること、見た人の感想を聞けることが幸せです。作品が出来るまでの時間って、とても長いことが多いじゃないですか。だから、その分すごく充実感があるというか。映画を公開させるというのは、ドキドキもするし、色んな人達が見て下さっているんだな、と思うと本当に計り知れないほどの充実感があります。

――では最後に映画を楽しみにしている方にメッセージを。

この映画は、隣に置いておきたいような作品です。ここに戻ってくれば心が温まるというか、どこかにこの世界があるような気がするような。人ひとりの人生を垣間見ているような気分になれる温かい作品です。老若男女、いろんな方に見ていただきたいです。

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